僕はわりと好きなのですが大根おろしの辛味が苦手という人は多いんじゃないかなと思います。
大根の辛味を抑える方法を知るには辛味成分の正体とその性質を知るのが早道。
ということで今日は大根の辛味成分について解説しつつ辛味を抑えるコツをご紹介します。
大根おろしの辛味を抑える方法(部位による差異)
辛味成分の話をする前に大根の部位による辛味の違いについて解説しておきますね。
図のように大根は葉に近い部分の方が辛味が弱く、先の方ほど辛味が強くなります。
なので、まるごとの大根がある場合は葉の近くの部位をすりおろせば辛味の少ない大根おろしを作ることができます。
大根おろしの辛味を抑える方法(辛味成分の特性を活かす)
大根おろしの辛味成分はアリルイソチオシアネートと呼ばれる物質です。
粉辛子や粉ワサビを水に溶いた時に生成されるのもこの物質で実は大根おろしの辛味は粉辛子や粉ワサビの辛味と同じものだったりするのです。
と、ここまで書けば辛味の抑え方もちょっと予想が付くのではないでしょうか?
辛味の抑え方 その1(放置する)
辛子やワサビを空気にさらして放置しておくと段々辛味が抜けてしまいますよね。
これはアリルイソチオシアネートが揮発性で放置しておくと空気中に飛んでいってしまう性質があるからです。
大根おろしも同じこと。すりおろしてしばらく置いておけば辛味は和らぎます。
ただ、風味が損なわれますし、栄養もロストするのであまりお薦めの方法ではありません。
辛味の抑え方 その2(レンチン)
揮発性があるということは熱を加えれば短時間で飛ばすことも可能です。
大根おろしを電子レンジの500~600ワットで1分チンすれば辛味はかなり和らぎます。
辛味の抑え方 その3(酢やレモン果汁を加える)
アリルイソチオシアネートは大根に最初から含まれている物質ではありません。
大根に含まれるグルコシノレートとミロシナーゼと呼ばれる酵素が、すりおろす際に細胞が壊れることにより混ざりあい化学反応をを起こしてアリルイソチオシアネートが生成されます。
酢やレモンはミロシナーゼを失活させる作用がありますのでアリルイソチオシアネートの生成を阻害して辛味を抑えることができます。
但し、すりおろした大根おろしに酢やレモンを加えてもアリルイソチオシアネートが生成された後ですのであまり効果は期待できません。
この特性を応用するのであればすりおろす器に先に酢やレモン果汁を入れておき、すりおろしつつ混ぜ込むのが効果的です。
大根おろしの辛味を抑える方法(おろし方を工夫する)
先に書いたようにアリルイソチオシアネートは大根に最初から含まれている物質ではなくすりおろして細胞が壊れる際に化学反応が起こって生成される物質です。
なので、おろし方を工夫して細胞が壊れにくいようにすれば辛味を抑えることができます。
おろし方の工夫
辛味を抑えるには優しくすりおろすのがコツ。おろし金に対して円を描くように力まずにすりおろせば細胞がつぶれにくく辛味が抑えられます。
逆におろし金に圧着するように力を入れて素早くおろすと辛味は強くなります。
道具による工夫
大根おろしを作るのにこれを使えば辛味は抑えられます。
鬼おろしという道具です。
見た目の通り目が粗いので大根の食感が残る粗い大根おろしが作れます。
その分、細胞も壊れにくいので辛味を抑えることもできます。
って、一般家庭ではあまり常備していない道具なのでこれを用意してまで甘い大根おろしに拘るかという気はしますけどね^^;
そもそも辛味を抑えて良いのか? について
ここまで書いておいて今更なテーマなのですが、辛味を抑えることのデメリットについても書いておきます。
俗に「大根おろしに医者いらず」と言いまして大根おろしは体にとても良い食べ物です。
その「体に良い」に一役買っているのがアリルイソチオシアネート。アリルイソチオシアネートには殺菌作用があるのです。
たとえば酢牡蠣は牡蠣に大根おろしを合わせますがこれは生牡蠣を殺菌する効果を狙うという意図があるのだそうです。
また、アリルイソチオシアネートには抗がん作用があるとも言われていて一概に辛いからと言って抑えない方が良い一面もあります。
余談
余談ですが僕は大学の工学部出身で専攻は有機化学でした。
といってもアリルイソチオシアネートなんて物質は聞いたこともなくて、このブログを書くのに先立って勉強しました^^;
学生時代に戻ったみたいでちょっと楽しかったです。