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和麺

冷やし肉うどん

20世紀に起きた料理の革命を一言で表すとすれば「温度革命」と言える──そんな風に僕は思っています。

それまで料理は必ずしも出来立ての熱々が食べられるわけではありませんでした。

前の日の残り物などはそのためだけに火をおこすのも手間ですし、往々にして常温──と言えば聞こえは良いですが冷めちゃった料理を食べる方が多かったのではないかと想像します。

それが──、

電子レンジで温め直す。

レトルト食品を湯せんにかける。

カップ麺にお湯を注ぐ。

など、さまざまな技術アプローチで、"出来立て熱々の料理"がわずか2、3分で作れちゃうという夢のような食生活がもたらされたのです。

一方、冷蔵庫が家庭に普及したことで、それまで王侯貴族ですら滅多に食べられなかった"冷たい"料理を簡単に口にできるようになりました。

ここでいう"冷たい"料理とはもちろん”冷めた"料理のことではなく、意図的に常温よりずっと低い温度まで下げた料理を指します。

アイスクリームやシャーベットのような氷菓だけでなく、それまでは熱いのが当たり前だった主菜、副菜を"冷やして"食べるという選択肢が生まれました。

サラダは鮮度やしゃきしゃきした食感だけでなく冷やすとそれだけで美味しいことが発見されたのも冷蔵庫のおかげでしょう。

それ以外にもよく冷やした冬瓜のそぼろ煮や小あじの南蛮漬けなどは、それだけで夏のごちそうだと思います。

けれど、何と言っても"冷やし"によって革命的な進化を遂げた料理ジャンルは麺料理ではないでしょうか。

毎年、夏になると、うどん屋、蕎麦屋はこぞって"冷やし"ののぼりを立てますし、ラーメンも近年は"冷やし"ラーメンの文化が浸透してきました。

冷やし中華のように冷たいことを前提とした麺料理も登場しましたね。

20世紀の料理革命は"できたて熱々"と”キンキンに冷えている"という両極端な「温度革命」だったと僕が考えるゆえんです。

けど、両者が立っていた革命のスタートラインはずいぶん違いました。

"できたて熱々"の料理が目指すゴールは基本的に既知の料理です。

何百年と重ねてきた研究の中で培われた技術も豊富にあります。

だから、わりとイメージ通りの料理を実現し易かったんじゃないかなと想像します。

それに対して”しっかり冷えている"料理の目指すゴールは誰も見たことがない未知の領域です。

冷やしたからといって本当に美味しくなるかどうかも、やってみないとわかりません。

それ以上に料理人を苦しめたのは低温ゆえの料理の変化でした。

山形発祥の冷やしラーメンも動物性のスープは"冷やすと脂が固まる"という壁にぶち当たりました。

そこで、植物性の出汁のみで強い旨味を出すために苦労されたと聞きました。

とあるお昼時のこと。

「なんか肉うどんみたいなガッツリ系の料理が食べたいな」

と、ふと思ったのです。

けれど、外は令和特有の酷暑。

熱々のうどんという気分じゃない。

なら、"冷やし"にすれば良いじゃないかとも考えたのですが……、肉は冷めたら硬くなるに違いないことに思い至りました。

その時、ふと思い出したのです。

「お肉を使った駅弁って、食べる時には冷めているけど、なんで硬くならないんだろう」と不思議に思って以前、作り方を調べたことがあったのを。

その時、調べた”お肉が冷めても硬くなりにくいテク"をこのレシピでは使っております。

【材料】(1人分) 

調理時間:20分(冷蔵庫で冷やしたり、粗熱を取る時間は含めていません)-

  • うどん:乾麺1束または生麺1玉
  • 牛こま切れ肉:100g
  • 温泉卵:1個
  • 炒り胡麻:適宜
  • 刻み葱:適宜

[牛肉の下ごしらえパート]

  • 砂糖:4.5g(大さじ1/2)
  • 塩:1g(小さじ1/6)

[調味料パート]

  • 濃口醤油:9g(大さじ1/2)
  • 味醂:9g(大さじ1/2)
  • 酒:7.5g(大さじ1/2)
  • おろし生姜:ひとかけ分

[タレパート]

  • 鰹出汁:30ml(大さじ2)
  • 蕎麦の返しまたは麺つゆ:30ml(大さじ2)
  • ごま油:4g(小さじ1)

【作り方】

  1. 牛肉は食べやすい大きさに切って、砂糖と塩を合わせてよくまぶします。これを冷蔵庫に入れて30分漬け込みます。[タレパート]の材料を器に合わせて冷蔵庫で冷やしておきます。 ※牛肉に砂糖と塩をまぶして漬け込むと、浸透圧と保水効果で肉がやわらかくなるのです。
  2. フライパンに[調味料パート]を合わせて中火にかけます。煮立ち始めたら牛肉を加えて色が変わるまで煮ます。火を止めて粗熱を取ります。 ※時間に余裕があれば粗熱の取れた牛肉を冷蔵庫に入れて冷やしておきましょう。
  3. うどんをパッケージに記載された時間通りに茹でます。これを流水でしめ、さらに氷水を張ったボウルに入れてきっちり冷やします。 ※冷やすと麺は硬くなるので心持ち長めに茹でるのがおすすめです。
  4. 3.のうどんをざるに上げて水気を切り深皿に盛ります。これに[タレパート]をかけてよく和えます。牛肉、温泉卵をトッピングし炒りごま、刻み葱を散らせばできあがり。

【一口メモ】

  • 夏の暑い日のランチにはもってこい。麺も具材もしっかり冷やしていただくと、もうそれだけでご馳走ですよ。
  • お肉には先に砂糖をまぶして柔らかくするというテクを使っています。お肉を使った駅弁って冷めても硬くならないのか不思議で前に調理法を調べたことがあったのです。
  • お好みで七味唐辛子や粉山椒を振っても美味しいですよ。

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