目次
イントロ
僕が初めて本を読んだのは4歳の頃だったと思います。もちろん、ひらがなばかりの幼児向けの本でしたが文章から想像をふくらませることに強く惹かれて以来、読書は僕の一番古い趣味として50を過ぎた今も続いています。
初めて物語らしきものを自分で書いたのは小学生の頃。中学生になって本格的に小説を書き始めました。とはいえ、いろいろなことに好奇心の触手を伸ばす性癖が災いして夢中で書いている時期があるかと思えば長く原稿用紙から離れていたり。
けど、しばらくすると戻ってくるのでいつのまにやら結構な物語が僕の部屋に溜まっています。僕の場合、原稿用紙に鉛筆と消しゴムで書くのでそれはもう物理的に溜まっていっています。
少しずつですが、書くことを真面目に勉強し続けて少しは書きたいように書けるようになったかなと自分では思っています。
数年前からラジオドラマの公募で賞を頂いたり、友人の口利きで関西学院大学が出版する書籍の小説パートを担当させて頂いたり、もちろん食べていけるわけではないのですが仕事として書くことに取り組む機会も出てきました。
で、せっかくだからこれらの小説もできるだけ多くの人に読んでもらいたいなと思いまして、少しずつamazon kindleで電子書籍化していこうと思っています。
このコーナーはそんな拙作をご紹介して1人でも多くの読者を掴もうというたくらみから立ち上げました。
今宵、酔鏡にて(日常ミステリー 居酒屋酔鏡シリーズ)
最終夜 今宵、酔鏡にて
時は平成まっさかりの2007年、年の瀬12月。
今宵も酔客たちでにぎわう居酒屋「酔鏡」に顔を出したしのぶは、やつれ果てて立っているのもおぼつかない様子だった。
口々に気遣う常連をよそに彼女はかたくなに一杯の燗酒を所望する。
と、突然そこに闖入してきた黒服の男たちがしのぶを「お嬢様」と呼び強引に連れ去ってしまう。
動揺する常連たちをよそに浮上するしのぶの見合い話の噂。酔鏡の主人としのぶの祖母の因縁。しのぶと祖母の確執。
謎が交錯する中、ついにしのぶの「名探偵変身体質」の謎がそのベールを脱ぐ。
居酒屋「酔鏡」を舞台にしたミステリーはいよいよクライマックスへ。
第6夜 十一月にふる雨
時は平成まっさかりの2007年、冬の到来を告げる11月。
居酒屋「酔鏡」の常連、『ナニワのトラブルシューター』ことユウやんの友人がビルから転落死した。
警察の捜査は自殺説に傾くがユウやんは納得がいかない。
だが、そんなユウやんの疑念を阻むのは現場となったビルの屋上が密室状態となっていたことだった。
ユウやんに事件の推理を持ちかけられた酔鏡の常連たちが最後に見出した結論とは……
第5夜 籠城ゲーム
時は平成まっさかりの2007年、まだ夏の匂いが残る9月。
居酒屋「酔鏡」にがたいの良いヤクザ風の男が訪れる。訳ありらしい男は常連たちの注目の的だったが男にかかってきた電話が事態を一変させる。
『隠し金』、『使い込み』――漏れ聞こえる不穂な単語に常連たちは妄想をたくましくする。
やがて――、店を出て高飛びを決め込もうとした男が襲撃されるに至って、いつの間にか得体のしれない男たちに店が包囲されていることを客たちは察知した。 期せずして不本意な籠城戦に巻き込まれた常連たちの運命やいかに……
第4夜 ユズラレハの伝言
時は平成まっさかりの2007年、夏真っ盛りの8月盆の入り。
意想外のタ立ちで足止めを食った居酒屋「酔鏡」の客たちは座興に百物語を始める。
その中の1人、東京から来た山下が「生涯で1番恐ろしいできごとだった」と語り始めたのは病気で早逝した娘の最期の言葉(ダイイング・メッセージ)にまつわる話だった。
停電による闇に包まれ、ろうそくの小さな灯りのみとなった店の中、山下が語る済いのない想い出話に常連たちは一条の光を当てることができるのか。
第3夜 吉田のおばちゃんのラブソング
時は平成まっさかりの2007年。梅雨の長雨が続く6月の夜。
居酒屋『酔鏡」の常連、「最強の大阪のおばちゃん」こと吉田のおばちゃんは困惑していた。昨日ポストに奇妙な手紙が入っていたというのだ。
手紙には1行「僕のことを覚えていますか?」と書かれているのみ。封筒の裏側には「H」と1文字。
おばちゃんはこの差出人は小学校時代の宿敵「エッチ」じゃないかと言って50年前の強烈な思い出を語り始めるのだが……
普段は地味な中学生にしか見えないルックスなのに、メガネを外しボニーテールをほどくと二十歳の娘に変貌を遂げるしのぶの推理が再び冴える。
手紙の送り主は誰なのか? その真意は何なのか? 今宵も酔鏡にて旨い酒と肴に舌鼓を打ちながら、おばちゃんのとっちらかった雑談から真実のかけらを拾い上げる謎解きの妙をとくとご堪能あれ。
第2夜 人魚姫の殺意
時は平成まっさかりの2007年。季節は巡って春、4月。
ところは神戸の片隅にある昭和の香りが色濃く残る居酒屋「酔鏡」にて。
体力自慢の常連、バリキの弟に傷害事件の容疑がかかる。被害者は内気で影の薄いクラスメート。誰からも気にかけられていなさそうだった彼はなぜ早朝、自宅で刺されたのか。
常連たちの迷推理が飛び交う中。ふたたび、しのぶの怜悧な推理はさえるのか?
Who Done It?(誰が彼を刺したのか)の極致。容疑者は1億人以上いるこの国の誰か。
派手なトリックは何もないけれど、酒と肴はたっぷりご用意してあります。
さあ、あなたも酔鏡の暖簾をくぐって、極上の推理劇をお楽しみ下さい。
第1夜 夢見るころを過ぎても
時は平成まっさかりの2007年。
ところは神戸の片隅にある昭和の香りが色濃く残る居酒屋「酔鏡」にて。
今宵も集う個性派揃いの常連たち。
そこに紛れ込んだのは、なんとも場違いな中学生然とした二十歳の娘だった。
彼女を交えて居酒屋談義に花が咲く中、常連のひとり、大学教授の「センセ」が奇妙な謎を持ち出してきた。
今から27年前、1980年、池袋の書店に毎週土曜日にやってきては50円玉20枚を1000円札に両替していく男がいたという。時を超えて客たちは名推理を披露し合うのだが……。
果たして50円玉20枚の謎の決着やいかに。
雪のあしあと
本作はRBC(琉球放送) 「第1回SFファンタジー大賞」で優秀賞を頂いた作品です。
最優秀賞特典のラジオドラマ化は逃したものの、応募された202作中、次点の2等賞。電話で連絡をもらった時はいきなり、スカイツリーのような高い高い塔のてっぺんに立たされているような感覚に襲われてぞわっと鳥肌が立ちました。
小説で賞をいただくということにずっと憧れていたけれど、落ちた200人の人達(←いつもはこっちにいます)に代わって胸を張らなきゃいけないんだと自覚させられたのです。
賞金が口座に振り込まれた時は嬉しかったな。「お前の小説は金を払ってでも読む価値がある」と言ってもらえたみたいで。
さて、自慢話はこれくらいにして^^; 本の紹介です。
Amazonの紹介文から引用しますね。
俺は料理や調理器具に触れるとレシピを読み取れるという妙な異能を持っている。ある夜、俺は繁華街で出会った綺麗な娘から昔、洋食店で食べたある料理の再現を依頼される。
だがその依頼は、店はとうに潰れ、店主は既に亡くなっているという無茶なものだった。一度は断ったんだが、娘の尋常じゃない熱意にほだされて結局俺はその依頼を請けちまった。
そして、俺と娘のあてのないレシピ探しが始まった。
原稿用紙40枚の短編小説ですが、自分で言うのもなんですがすっげぇ、おもしれぇじゃんと思っています。
1冊たったの99円(Kindleの設定可能な価格の下限なのです)。ぜひ、お手にとって楽しんでください。