文学あるいは文学者と料理というのは縁の深いものらしく、名作には人目を惹く料理があまた登場しますし、文学者の書くエッセイにも食べ物の話題は頻繁に現れます。

中には池波正太郎のように食べ歩きの話だけでエッセイを1冊仕上げてしまうつわ者もいます。
なぜ文学と料理は縁が深いのか?
その理由はいろいろあるのでしょうけど、一つには料理の美味しさや魅力が本来文章で表現しきれないものだからなのかもしれません。

その料理が持つ温かさ、香り、味をあたかも実際にその料理を食しているかのように読者に伝える。
食べた時の感動を読者に共感させる。
それを言葉だけで行うことは文学者にとってとても魅力的な挑戦なんじゃないでしょうか。
だからか、多くの文学者には料理にまつわる逸話があります。
夏目漱石も然り。
東京は神田に松榮亭という洋食屋さんがあります。

この店の創業者は漱石の東大時代の恩師(外国人です)に仕えたお抱え料理人でした。
ある時、漱石がこの先生の自宅に招かれた折にこの料理人に「なにか変わったものが食べたい」という無茶振りをしたそう。
ありあわせの材料でこしらえた品は「洋風かき揚げ」という名前で今でも店の看板メニューになっているそうです。
無骨な見た目のごつい衣に包まれたかき揚げはハイカラなもの好きな明治人には魅力的に映ったことでしょう。

過日、冷蔵庫を覗くと豚肉が少々残っていました。
野菜もそれなりにある。
冷蔵庫の在庫整理をすべくこれらをまとめて使い切ってしまいたい。

と、その時思いついたのがかき揚げにすることだったのです。
ただむき出しでは豚肉がどんな風に仕上がるかちょっと心もとなかった。
そこで「洋風かき揚げ」風に衣に包んで食材をまとめることを思いついたのです。
【材料】(1人分)
-調理時間:15分-
- 豚肉:30?50g
- 野菜類:玉ねぎ、人参、ピーマン、きのこ類などありあわせで
- 揚げ油:適宜
[衣パート]
- 卵:1個
- だし汁:30g(大匙2)
- 濃口醤油:6g(小匙1)
- 薄力粉:50g+α
【作り方】
- 豚肉は一口大に切ります。野菜類は千切りにします。揚げ油を160度に温めます。
- [衣パート]をボウルに合わせます(この段階では薄力粉は50g加えます)。衣の硬さを見ながら薄力粉を加えていきます。ちょっと粉っぽさが残るくらいになったら頃合いです。
- 2.に豚肉、野菜類を加えてよく混ぜます。これをひっくり返したバットの底などに載せて楕円形に整えます(厚みが均一になるようにしましょう)。
- 3.を木杓子などで押してそっと揚げ油に滑り入れます。そのまま5分放置して7分通り表面が固まったらひっくり返して更に5分揚げればできあがり。ウスターソースをかけて戴きましょう。
【一口メモ】
- 外はさくさく、なかはしっとり。なかなか魅力的な料理に仕上がりました。よく考えるとこの材料ってほぼお好み焼きですね。お好み焼きを「揚げる」という新発想の料理と言えないこともありません。
- 段取り良く作るコツは材料の支度をしている間に揚げ油を温めておくこと。こうすれば待ち時間なしで調理を進められます。
- かなり厚みのある揚げ物なので揚げ時間は長めに取ってください。表面に騙されて早々に引き上げると中が生焼けなんてことになります。
- 普通のかき揚げと違って分厚い衣にくるまれているので火の通りが柔らかで肉が柔らかく仕上がります。ちょっとうれしい。
- 材料ははっきり言ってなんでもありです。冷蔵庫のありあわせでどうぞ。

