味付けの呪いを祓う

味付けの呪いを祓う① 脱・目分量のススメ

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献立の呪い、食材買い出しの呪いについて苦手意識打開のヒントになるようなことをいろいろと書いてきましたが一区切り付いたので次のテーマに進みたいと思います。また、新しいアイデアや補足事項が出てきたら随時書き足していきますね。

で、いよいよ料理の話を書きます。

普段はあまり意識することもないと思いますが料理という作業は以下の3つの工程の組み合わせで構成されています。

  1. (食材を)切る
  2. (食材に)火を入れる(焼いたり、揚げたり、煮たり、蒸したりして火を通す)
  3. (料理に)味付けをする

この3つの工程のコツやテクニックをいっぺんに解説するとわけがわからなくなってしまうので別々に分けて書いていこうと思います。

どの工程もちょっとした発想の転換や原理・原則がわかってしまえば「なんだ簡単じゃん」と今まで克服できなかったのがウソみたいに思えるのでご安心を。

さて、最初のテーマは味付けです。味付けはなんと言っても料理の要。これで仕上がりの良し悪しが8割方決まります。なのでまずは味付けの呪いを克服するのが良いのじゃないかなと考えました。

「ええっ、8割も決まっちゃうの? 味付けが一番苦手なのに」

なんて思わないでくださいね。この呪いを払えば料理の呪いは8割方克服できたようなものですから。

とはいえ、切るが調理の比較的前半に行われる工程で、火を入れるが後半で行われる工程なのに対して味付けは調理の開始直後から終了直前まで頻繁に登場する工程です。

味付けの工程は調理の局面によって下味を付ける→本筋の味をつける→味を仕上げると細分化されてそれぞれ注意することが違います。このあたりが苦手と感じる人が多い理由の1つかもしれませんね。

とまれ、味付けのどんなところが苦手と感じているのかちょっとネットの情報を覗いてみましょう。

味付けはここが大きらい!!(呪いの正体を知る)

例によって、ネットで見かけた「(わたしは)味付けのここがキライ(苦手)だ!!」という呟きを見てみましょうか。

  1. レシピに適宜とか適量って書かれてもどれくらいかわからない。
  2. 味が薄い時、濃い時の対処がわからない。
  3. 必要以上に調味料を使いたくないと思い、ついつい味が薄味になってしまう。
  4. 目分量では思う味にならない。
  5. 自分の思う味が作れない。

うーん。なるほど。ほとんど泣き言にしか聞こえませんが(笑)、いくつか苦手意識に系統があるようですね。1.と2.はわからないと言っているのですから、わかれば呪い(苦手意識)を祓う(克服する)ことができそうです。

3.はそこまでわかっているのなら気持ち調味料を加減すればすぐに改善できちゃいます。4.と5.は自分が目指したい味は描けているので、あとはあなたなりの調味料の黄金律(あなたが美味しいと思う味付けになる分量)を把握すればOK。

ただ、目分量でそこにたどり着くというのは至難の業です。ということで、今回のテーマは調味料を計ることの重要性について解説しようと思います。

その前に、レシピに書かれている適宜とか適量について呪いを払っておきましょうか。

適宜/適量の呪いを祓う

確かにレシピに適宜とか適量とか書かれていると料理に慣れていない人は「ええ、ちゃんと分量を書いてよ。どれだけ入れたら良いかわかんないじゃん」ってなっちゃいますよね。けど、ちょっと考えてみてください。

焼き肉を食べる時、あなたはタレを計量スプーンで計ってかけますか?

「お好きにって言われてもどれくらいかけたら良いかわからないよ。ちゃんとmlかけたら良いか教えてよ」って言ったりしますか?

しないですよね^^ 適当にどぼどぼってかけるのじゃないでしょうか。人によってたっぷりかけるのが好きな人もいれば、肉の味を殺したくないといってちょびっとだけかける人もいます。これが適宜の正体です。要はお好みでどうぞということです。

目玉焼きに塩を振るとき(あ、ソースでも醤油でも良いのですけど)、「ちょっとかけ過ぎだよ」と叱られたことはありませんか? これが適量の正体です。敢えて分量を計らなくてもおおよその丁度よい分量を多くの人が知っている場合、敢えてレシピでは適量と書かれていることがあるのです。

レシピに適宜とか適量と書く理由は2種類あります。

  • 人によって味の好みの差が大きいケース(焼肉のタレパターン)
  • 食材の個体差が大きくてそれに合わせて調味料を加減する必要があるので一概に分量が書けないケース(例えば茄子1本、鶏もも肉1枚なんかをイメージしてみてください)

いずれのケースもそのレシピを読む人に味の経験があることが前提になっています。生まれて初めて握り寿司を食べる外国人に「お醤油はお好みで小皿にとって浸けてください」と言っても困惑されますよね。

なので、できればレシピを書く際には「適宜」、「適量」は避けるべきです。食材に個体差がある場合は茄子(中)1本とか鶏もも肉1枚(約300g)など食材の目安になる分量を書き添えて調味料の分量を明記すべきです。

でないと、料理の初心者(経験の少ない人)が読んだ際に不用意に味付けに対する苦手意識を植え付けてしまって「味付けなんてだいきらい」と言う人がまた増えちゃいます^^;

計量のススメ

昭和のお母さんは目分量の達人だったのか?

日本の家庭に計量スプーンや計量カップが普及したのは昭和40年~50年頃(1965年~75年頃)と言われています。

じゃあ、それまでお母さんたちはどうやって料理を作っていたのでしょう。以前、戦前の料理本を読む機会があったのですが分量表には「盃1杯」とか「お椀1杯」なんて調味料の目安が書かれていました。

なるほど目安を設けて調味料を計るという文化はあるにはあったようです。

ただ、概ねは母から子に口伝で目分量が伝えられていたみたい。僕も母から簡単な煮物を教わった際は実演してもらって「だいたい醤油をこれくらい入れる」といった感じで教わった記憶があります。

それでも概ねどこの家庭でもそれなりに食べられる夕飯が出されていました(たぶん)。なので、ご年配の方の中には若い嫁をつかまえてこんなことをおっしゃる人がいます。

「なんで、あなたはいちいち分量を計らないと料理ができないのかしらねぇ」

昔の主婦はみな目分量で作ってもそれなりの味に仕上げていたぞ」

こんなことを言われたら凹みますよね。ただでさえ味付けが苦手なのに克服するどころじゃなくなっちゃいます。

僕なんかは天の邪鬼ですから「目分量で料理することがそんなにエライのかよ」って言い返したくなります。

では、そんな目分量万能主義(?)呪いを祓っちゃいましょう

結論を言います。昭和のお母さんたちが今の時代と同じ条件で料理をしたら目分量で美味しく料理が作れない可能性が高いです。

あなたがきちんと調味料を計って料理する人なら、味付けであなたが昭和のお母さんに勝つ可能性が高いです。

昭和の頃の家族構成を考えてみてください。サザエさん一家7人家族)やちびまる子ちゃん一家6人家族)をイメージするとわかりやすいのですがあれが典型的な家族構成でした。

それに比べて令和の今の家族構成はどうでしょう。多くて4、5人。平均すれば2、3人だと思います。つまり、そもそも夕飯を作る量が1/2~1/3なのです。

もしあなたがひとり暮らしだとしたら夕飯を作る量はサザエさん一家の実に1/7なのです。なら、どういうことになるか? 簡単な煮物のレシピを例にあげて見てみましょう。(あ、違いがわかりやすいのでタラちゃんも1人前でカウントしますね)

  • サザエさん一家(7人前)のレシピ:芋:14個、水:1リットル、醤油:42g(大匙2+小匙1)、味醂:42g(大匙2+小匙1)、酒:35g(大匙2+小匙1)、砂糖:21g(大匙2+小匙1)
  • あなた(1人前)のレシピ:芋:2個、水:150ml、醤油:6g(小匙1)、味醂6g(小匙1)、酒5g(小匙1)、砂糖3g(小匙1)

ね、そもそも使う分量がこれだけ違うのです。

だから、サザエさん一家の料理は目分量で調理して多少調味料の分量にブレがあったって味が大きくぶれないのです。

それにくらべてひとり暮らしのあなたの料理は醤油が1グラムぶれても味は大きく変わります

これに昭和と今の暮らしの違いが拍車をかけます。

  • 昭和の夕飯は家族全員で食べるのが当たり前だった今はバラバラで食べる(孤食する)ことが多く家族全員分の料理を作らないことも多い。で、ますます一度に作る料理の量が少なくなる
  • 昭和の頃は人の出入りが結構激しく飛び入りで晩御飯を食べる人がいたりした(ノリスケ君みたいな人)。

ちなみに、僕は昭和39年生まれで7人家族(祖父母、両親、妹2人)の中で育ちました。また、父方の叔父が父と同じ職場だったのでちょくちょくいっしょに飲んで帰ってきて晩酌の続きをうちでやるなんてこともありました。

サザエさんの中で描かれている暮らしは誇張でもなんでもなくて、あの頃当たり前にあった現実なのです。

だから、あなたは調味料を計ることに胸を張ってください

そして「昔の主婦は目分量でも(以下略)」なんてことを言う人がいたら「時代が違います」と反論してこのブログをみせましょう。

あ、ついでにその人にブログの宣伝もしてくれるととっても嬉しいです^^

計量スプーン、計量カップの歴史

今の時代、一般家庭で7、8人分の料理を作ることなんてまずありません。せいぜい、多くて3、4人分です。

なので、料理をする際にはきちんと調味料を計ることが大切だということはわかっていただけたのじゃないかと思います。

それでも、サザエさん一家の昭和の頃に比べると、実は令和で暮らす僕らはとてもめぐまれています。見も知らない人が書いたレシピを読んでその料理を再現できちゃうのですから。

この「人が書いたレシピを読んで料理を再現する」文化の根幹には共通のものさしが必要です。つまり書く人と読む人で調味料の分量の単位が共通である必要があります。

共通の物差しとして重さ(グラム)を使うという方法はすぐに思い浮かびますが、料理に使う分量はわりと小さいので、デジタルスケールがなかった時代では現実的ではなかったと思います。

なので、計量スプーン、計量カップがなかった時代は母から子に目分量を実地で教えるのが普通。お店の味を家で再現するなんて夢のまた夢でした。

僕らが今使っている計量スプーンや計量カップは戦後、日本で独自に考案されたものです。

考案したのは香川綾さんという明治生まれの医学博士。日本における栄養学の地位向上に大きく貢献した人です。

そして、彼女こそが日本で初めて「料理を数値化する」ということを着想し、成し遂げた人なのです。

「料理はきちんと調味料を計って作るべき」

彼女がそう考えたのは「その方が美味しくできるから」という理由ではありませんでした。

「目分量で調味料を加えていたのでは日本人の食生活は塩分過多になってしまう」

という、いかにも栄養学の先生らしい理由からでした。

戦前にすでにそういうことを考えていたのですからかなり先進的な人だったのでしょうね。

僕らが味付けを上手くなりたいと考える動機はついつい美味しいものを食べたい、食べさせたいとなりがちです。

けど、食事の本来の目的は生きるために栄養を適切な量、摂取すること。いくら美味しくても身体に毒になる料理では本末転倒。自戒したいところです。

話を戻しますが香川先生の料理に対する理念はこうでした。

「料理を初めて習う人でも、調味量の分量が数字であらわされていれば、すぐれた調理人が作る料理の80パーセントくらいは再現できる」

この理念に基づいて彼女はこんな仮説を立てました。

1人前の料理に加える調味料には共通する分量があるのではないか? だとすれば、その分量を計る物差しがあれば誰が作っても同じ味の料理が作れる。

彼女はこの仮説を実証するために、家に一流の和洋中の料理人を呼びました。

で、一般的な調味料をたっぷり用意して、一品作ってもらう度に調味料の減った量を計って記録したのです。

最終的に彼女が導き出した結論は、15ml5mlが計れるスプーンがあると大抵の料理は作れる。あと、大きな分量を計るために50ml毎に目盛りの付いた200mlのカップがあると良いというものでした。

この実証実験にかかった費用は全て彼女の自腹。僕らが普段使っている計量スプーンやカップは1人の栄養学者が自費で考案したものなのです。もっとありがたがって使いましょう^_^

こうして、香川綾さんは「人が書いたレシピを読んで料理を再現する」という僕らにとっては当たり前の文化の基礎をたった1人で築かれました。大した偉人です。

もっと知名度が上がっても良いのにな。

彼女は他にも栄養素を4群に分けて点数をつけることで見える化する手法を編み出したりもしたのですが話がそれるのでまた別の機会に。

戦後まもなく彼女は実証実験の結果を元に大匙(15ml)、小匙(5ml)、計量カップ(200ml50ml毎の目盛り付き)を考案しました。

尺貫法が当たり前の時代にメートル法を採用したあたりも科学者らしいですね。

けれど、一般家庭に計量スプーンや計量カップが浸透するまでには20年から30年近くかかったみたい。やっぱり戦後すぐにメートル法はとっつきにくかったのかな。

ともあれ、今ではどの料理本でもレシピサイトでも調味料の共通の単位として大匙や小匙で分量が書かれています。

多くの家庭には計量スプーンや計量カップが置いてあってレシピさえあれば容易に料理を再現できるようになりました。

 

改めて言います。

サザエさん一家の昭和の頃に比べると、実は令和で暮らす僕らはとてもめぐまれています

勘と経験を頼りに目分量で料理をしていた時代と違って、きちんと分量を計りさえすれば一流料理人の味付けだって正確に再現できる時代に生きているのですから。

まとめ

少し回り道な気もしましたが調味料を正確に計ることの大切さを知ってもらうために今回は歴史の話など書きました。

最後にブログのポイントをまとめておきますね。

  • 味付けの基本はきちんと調味料を計ること
  • レシピに「適宜」と書かれていたらあなたのお好みで調味料を加減してくださいという意味。よくわからなければ少なめに入れて味を見ながら加減しましょう。
  • レシピに「適量」と書かれていたら食材の大きさ(量)に合わせて適切な量の調味料を加えるというほどの意味。よくわからなければ少なめに入れて味を見ながら加減しましょう。
  • 昭和の昔と違って、令和のあなたが一度に作る料理の量は少ない。もし、あなたが目分量で調味料を加えていたら味は毎回ブレます。そして、なかなか味付けの呪い(苦手意識)を祓う(克服する)ことはできないと思います。
  • 香川綾さんという栄養学の先生が味付けのスタンダードな単位として計量スプーン、計量カップを考案してくれました。料理に不慣れな人でもこれを使うことで一流の料理人のレシピを簡単に再現ができるようになりました。

次回予告

「味付けをするのに調味料を正確に計ることが大事というのはわかったよ。けど、そうは言ってもいちいち計るのが面倒だよ」

あなたはそんな風に尻込みしちゃっているかもしれません。けど、だいじょうぶ。

次回は調味料の計量を楽にしちゃうコツやテクニックをいろいろご紹介したいと思います。

味付けの呪いを祓う② 調味料は重さで計ろう

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