目次
イントロ
ご無沙汰しています。ちょっと間が空いてしまいましたが、料理の呪いを祓う「料理が好きになるブログ」の「味付けの呪いを払う」編。第4弾をお送りします。
前回はネットなどで手に入れた「レシピ通りに作ったのに美味しくない」現象についてその原因を考察しました。
おさらいするとその原因は大きく3つに分けられます。
- レシピに不備がある
- 料理をする人がレシピを読み間違えている
- レシピの作者と料理をする人の味の好みが違う
でしたね。特に3.は厄介で、「レシピ通りに作る」ことと「レシピを鵜呑みにする」ことは違うよと解説しました。
とどのつまり、レシピはあくまでも参考資料程度にして基本的に疑ってかかるべきと締めくくりました。
「レシピに書いてあることが信じられないのなら、何を信じれば良いのさ?」とあなたは言うかもしれません。
その答えは「舌」。美味しい料理を作るためにあなたが信じて良いものはあなたの「舌」だけなのです。
だって、その料理を食べるのは他ならないあなたなのですから。
ということで、今回は自分の「舌」を使って料理をする味見の極意について解説していきたいと思います。
レシピを疑いあなたの舌を信じる
近頃はレシピサイトにアクセスすれば料理のレシピは星の数ほど溢れています。
見るからに美味しそうな写真が添えられていて、「あ、これ食べたいかも」と惹かれるレシピもたくさんあります。
けど、どれだけレシピが丁寧に書かれていても、あなたがそれを正確に読み取っても、そもそもレシピの作者さんの味の好みがあなたの好みと合っていなければ「あなたにとって」美味しい料理を作ることは難しいです。
なので、初めてのレシピを試す際には以下のステップを踏むことをお勧めします。
STEP1 レシピの調味料の量をチェック
まず、料理を始める前にレシピの材料表、特に調味料の量が多すぎたり少なすぎたりしないかをチェックしましょう。
一番間違いのないのは過去に使ったことがある似たような料理であなた好みの味付けのレシピと比べることです。
調味料の分量は数値で表現されています。2つのレシピを見比べて調味料の分量が
- 同じ:同じくらいの味の濃さ
- 初めてのレシピのほうが多い:あなた好みの味付けより濃い味付け
- 初めてのレシピのほうが少ない:あなた好みの味付けより薄い味付け
となります。更に調味料の種類によって
- 砂糖、はちみつなどの甘味系調味料が多い(少ない):甘めの味付け(甘さ控えめな味付け)
- 酢、レモンなどの酸味系調味料が多い(少ない):酸味が強い味付け(酸味が控えめな味付け)
- 塩、醤油、味噌などの塩辛い系調味料が多い(少ない):味が濃い味付け(味が薄い味付け)
と、ざっくり見当を付けることができます。
特に甘み、酸味は極端でなければ許容できても塩辛い系で濃い味付けは受け入れ難いのじゃないかなと個人的には思っています。
あと、分量の表現が「適宜」や「適量」と曖昧な場合は手持ちのレシピを参考にして具体的にどれだけ使うか決めておきましょう。
そうすれば調理の途中で迷うことがありません。
STEP2 少し控えめの調味料で料理する
さて、いざ料理を始めたらいきなり分量通りの調味料を使うのではなく、少し控えめの調味料で味付けしてみましょう。
調理の味付けは三段階あります。
- STEP1:火を通す前に食材を調味料と合わせて味を染み込ませる下味
- STEP2:料理の味を決めるメインの味付け
- STEP3:料理の味の微調整を行う仕上げの味付け
初めてのレシピで調理を行う場合は、STEP1はレシピ通りで行ってSTEP2のメインの味付けを8割くらいの調味料で行って味を見ながら整えるようにすると濃い味付けになるのを回避できます。
[ちょっと休憩]調味料の足し算と引き算について
僕の料理の師匠である僕の母はよくこんなことを言っていました。
「味付けの足し算はできても引き算はできない」
- 味見をして味が薄いなと感じた料理は調味料を加えれば味を濃くすることはできます。(味付けの足し算)
- けど、味見をして味が濃いなと感じた料理の味を薄くすることはできません。(味付けの引き算)
屁理屈を言えば食材の量を倍にして倍の水で希釈すれば味を薄められます。
けどそれは2人分作っていた料理が4人分に膨れ上がったということですので、とんでもない量の料理を食べなきゃいけないことになっちゃいます^^;
なので、味付けは薄めにして味を見ながら整えていくというのが味付けのセオリーなのです。
実は市販の合わせ調味料(各種中華料理の素など)の弱点もそこにあります。
味を見て物足りなければスパイスなどを適宜加えて味を複雑にすることはできます。(足し算)
けど、既にレトルトパックの中に入っている調味料を抜いて味を自分好みに調整し直すことはできないのです。(引き算)
STEP3 味見をして味をととのえる
はるか昔の話ですが僕の叔母が結婚した当初、料理の味が毎回違うと祖母(彼女の母)に愚痴をこぼしました。
「味見はちゃんとしてるのかい?」
と祖母が訊ねると
「味見って何?」
と聞き返して祖母をずっこけさせたというなかなか豪快なエピソードがありました。
今更ですが調理の作業で一番たいせつなのは味見です。
料理は舌の上に載せてみないとその味はわかりません。ですので、必ず調理の仕上げに味見をして味の微調整を行いましょう。
味見のコツ
特に煮物など火を通す料理の場合はそうなのですが「ちょっと物足りない」と感じたところで味付けを止めるのが味見のコツです。
理由は2つあります。
- 火を止めても煮汁は蒸発していくので実際に食卓に出した際には今より濃い味になっていること
- 一口目で美味しいと感じた料理は実は失敗していることが多いこと
一口目味で美味しいと感じる料理は往々にして味が濃いのです。
なので食べすすめると飽きてくるんですよね。逆に「ちょっと物足りない」と思う味付けは、もうひと口、あとひと口と箸が進みやすいのです。
サラダなど火を通さない料理でも2番目のポイントは当てはまりますのでちょっと意識しておきましょう。
一発勝負の料理について
ミートローフや餃子など焼き物の料理では料理を仕上げるまでに味見ができるタイミングがないものもあります。
その場合はどうするか……
取り敢えず試作してみるしかありません。
そういった料理は完成してからでないと味見ができません。
できあがったものを食べてみて濃ければ次回はもう少し薄く味付けする。逆もまた然りです。
一発勝負の料理は何度か作ってみて気に入った味のレシピに仕上げる──と、腹をくくるしかないのです。
レシピを記録する意義
ここまで自分の舌を使って初めて使うレシピの味の加減をする手順を解説してきました。
けどまだ、最後にとても大事な作業が残っています。それは……
最終的にどれだけ調味料を使って味付けしたか、すぐその場でメモしておくことです。
ちょっと状況を想像してみてください。
目の前にはできたての美味しそうな料理が湯気を立てています。
あなたは晩ごはん前でとても空腹です。
あとでメモしようっと──なんて自分に言い聞かせて、いそいそとテーブルに就きたい誘惑にかられませんか?
でも、ダメですよ。メモ用紙でも構いません。スマホのメモアプリでも構いません。必ずその場で今使った調味料の配合をメモしておきましょう。
その負担を軽減するためにもメモは調理中の待ち時間(煮込んでいる間などのちょっとした時間)に済ませておくのがオススメです。
僕自身、そうやってメモを後回しにしたまま結局メモを取り忘れたことがあるのです。
そして、後日思い出そうとしてもどうしても正確な配合が思い出せなかったことが一度ならずあるのです。
そういう時に限って料理の出来がとても良かったりするんですよね。
でも、オリジナルからどうアレンジしたかが思い出せなくて、未だに再現できない料理があるのです。
大事なことなので2度言います。
レシピをアレンジしたら、どれだけ調味料を使って味付けしたか、すぐその場でメモしておきましょう。
(具体例)僕的和食の調味料黄金率
唐突ですが僕は神戸生まれの神戸育ちです。
両親は四国の香川と徳島出身ですが僕自身はわりと標準的な関西人の味の好みじゃないかなと思っています。
両親が足利と水戸の僕の嫁さんから見ると僕の味の好みはけっこう薄味だそうです。
と、ここまで僕の舌のプロフィールを紹介した上で、僕なりの和食の味付けの黄金律を紹介しますね。
黄金律その1 甘辛
関西人は特に甘辛い味が好きなのですが、僕にとって甘辛料理の1人前で使う料理はこうなります。
■調味料の比率
醤油:酒:味醂:砂糖=1:1:1:1
■調味料の分量(1人分)
- 濃口醤油:6g(小匙1)
- 酒:5g(小匙1)
- 味醂:6g(小匙1)
- 砂糖:3g(小匙1)
で味付けをする。
黄金律その2 塩の分量
1人前の料理であればこんな感じです。
■下味に使う塩の分量
塩:1g(小匙1/6)
■メインの味付けに使う塩の分量
塩:2g(小匙1/3)~ 仕上げで味見して薄ければ追い足します。
塩は少量で味を濃くできる調味料なので追い足す量はひとつまみずつくらい、ごく少量ずつ足しましょう。
黄金律その3 煮物に使う味噌の分量
1~2人前らいの料理であればこんな感じです。
味噌:18g(大匙1)~ 仕上げで味見して薄ければ追い足します。
味噌は少量では味が変化しません。なので6g(小匙1)くらいずつ追い足しても大丈夫です。
自分の黄金律を記録しておく
上に書いたのはあくまでも僕の好みに合わせた調味料の黄金律です。
たとえばあなたが関東出身の方ならこの味付けは物足りなく感じるのではないでしょうか。
あくまでもこの情報は参考程度に捉えてあなた好みの味付けの黄金律をぜひあなたの舌で探ってください。
そして、探り当てた黄金律は必ずメモしておきましょう。
そのメモは、あなたが新しいレシピにチャレンジする時の物差し──そのレシピがあなたの好みに合っているかどうかを判断する基準になってくれます。
まとめ
あなた自身の「舌」を使って料理をする味見の極意について解説しました。
最後に要点をまとめておきますね。
- 「レシピ通りに作る」ことと「レシピを鵜呑みにする」ことは違います。人が書いたレシピはあくまでも参考資料、その人とあなたで味の好みが違うかもしれないと疑ってかかりましょう。
- レシピを疑う代わりにあなたが信じるべきものはあなたの舌(味覚)です。
- 初めてのレシピを試す際には3つのステップを踏むことをお勧めします。
- レシピの調味料の量を手持ちの似た料理のレシピと比べてチェックする。
- 最初は少し控えめの調味料で味付けする
- 料理の仕上げで味見をして味をととのえる
- 仕上げるまでに味見ができるタイミングがない一発勝負の料理は覚悟を決めて作ってみましょう。何度か試作しながら自分の好みの調味料の配合を探っていくしかありません。
- あなた好みの調味料の配合を見つけたら必ずメモを取っておきましょう。そのメモは新しいレシピに挑戦する時の物差しになってくれます。
次回予告
誰だって失敗するのはいやです。
特に料理の場合、失敗すると漏れなく「まずい料理」がセットで付いてくるからなんとしても避けたいと考えるのは人情です。
けどね、人は失敗するから上手くなれるんです。
端から巧くいった経験から得られるものは実はあまりありません。
逆に失敗から得られる教訓は山ほどあります。そう、失敗という経験は宝の山なのです。
次回のテーマは「失敗するから上手くなる」。味付けの失敗経験から学ぶ手順などを解説していきたいと思います。
では、また。