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味付けの呪いを祓う

味付けの呪いを祓う② 調味料は重さで計ろう

 

基本中の基本! 計量スプーンを使った分量の計り方

前回は少人数分しか調理しない今の時代に目分量では味がぶれるという話を解説しました。

香川綾さんという1人の栄養学者が苦労して考案した計量スプーン、計量カップを正しく使ってきちんと調味料を計ろうという話でしたね。

今回はその計量を楽にするテクニックについて解説したいと思います。

その前に、1つ大事なことを前回書き忘れていたので最初に補足します。

ええっ、そこから書くか? って、言われそうですけど書きます!

計量スプーンで分量を計る時の分量は「擦り切り」です。

調味料を掬って盛り上がっている部分を菜箸などですりきってください。ご米をカップで計って炊飯器に移す時、盛り上がった米は手で擦り切って上面を平らにしますでしょ。あの要領です。

なんでこんなことをくどくどと書いているかというと、過日行きつけの飲み屋でご主人とバカ話をしている時に「計量スプーンで砂糖を計るのにてんこ盛りにする人がいるらしい」という話になったからです。

それやっちゃうと正確に計れるわけがありませんのでご用心。


では、本題を。

味付けの手間を省く計量テクニック

ここまで書いておいてなんなのですが、計量スプーンや計量カップにはいろいろと欠点があると僕は思っています。

  • 液状の調味料(醤油、酒、みりんなど)を計ると粉状の調味料(砂糖、塩など)が計れなくなる。(砂糖入れが醤油まみれになっても構わないのなら別ですが)
  • どうしてもスプーンやカップに少量の調味料が残ってしまって正確に計れるとは言えない。

確かに香川綾さんがこれらのアイテムを考案した終戦直後はこれが最適解だったのだと思います。けど、今は21世紀。もっと楽に、もっと正確に調味料を計る方法があるのです。

いきなりカミングアウトします。

前回あれだけ計量スプーンやカップを使いましょうと言っておいてなんなのですが、実は僕は料理でそれらを使うことはほとんどありません(^^;

ってをい、あんだけ人には分量を計れとか言っといて自分は目分量かよと言うなかれ。

ちゃんと計っていますよ。これで。

そう、リセットボタン付きデジタルスケールで調味料の分量を計っています。

手前味噌で恐縮ですけど、このサイトに投稿している《簡単過ぎるレシピ》のコーナーから「オニオンピクルス」のレシピを見てみてください。[ここをクリック]

さて、材料表に注目

  • 酢:27g(大匙2弱)
  • 粒マスタード:2g(小匙1/2)
  • 蜂蜜:22g(大匙1)

と書いてあります。

僕が書くレシピの分量表には基本的にグラムと計量スプーンの分量を併記するようにしています。

これは計量スプーンで計っても良いけどキッチンスケールで重さを計って味付けすることもできるよという意図です。

計量スプーンが考案された終戦直後と違って今の時代にはデジタル式のキッチンスケールがあります。

これを活用すると調味料を計る手間は楽になるだけでなく先に挙げた計量スプーンの欠点を解消できちゃうのです。

まず計量スプーンより正確に計れます。先に書いたように計量スプーンはすり切りで計るのがお約束です。

そうすることで誰が計っても同じ分量が計れる理屈ですが、人それぞれ計りグセがあって実は結構バラツキがあるのです。

加えて液体の調味料の場合、どうしてもスプーン側に多少の調味料が残ってしまうので計った調味料が全て鍋に移ったとは言い難いのです。

その点、デジタルスケールは計量結果が数字で表示されるので、かなり精度が上がります。(3gと表示されれば、入れたのが誰であれその調味料は3gなのです^_^)

次に粉末系の調味料と液体の調味料を合わせる場合でも入れる順番を問いません。醤油の後に砂糖を入れたって砂糖入れが醤油まみれになることはないのです。

更に鍋やフライパンにダイレクトに調味料を加える場合に便利な機能が付いている機種があります。

それがリセットボタンで、これを押すと表示が0に戻ります。

例えば醤油18グラム(大匙1)を入れて次に砂糖9グラム(大匙1)を入れる場合、

「今、18グラムになっているから9足して27グラム」

と言った暗算をする必要はありません。リセットボタンを押して0に戻してから9グラム計ればOKです。

最後に小さなことですけど、計量スプーンや計量カップを使わない分、洗い物が減ります。

このようにわりと良いことづくめに見えるデジタルスケールを使った計量ですが、もちろんデメリットがないわけではありません。

ひと煮立ちさせた鍋に調味料を加える場合を想像してください。

デジタルスケールに鍋敷きを置いてその上に鍋を載せるようにすれば煮立った鍋でも調味料を計りながら入れることはできます。けど、計ってるそばからデジタル表示が減っていくのです。

そう、鍋の中身が湯気になってどんどん蒸発していくのでその分目減りするのです。だからともかく手早く計る必要があります。

こういったところはグラム単位で正確に計れてしまうデジタルスケールの欠点と言えます。そもそも計量スプーンを使う場合は調味料の体積を計っているので鍋の中身が減ろうがどうしようが計る調味料の分量に変動は生じません。

ま、これなんかは手早く計る練習をすれば回避できることですし、どうしても気になるのであれば予め別の器に調味料を計り入れてそこから移せば済む話ではあります。

けどね、デジタルスケールを使いこなすにはもっと高いハードルがあるのです。

デジタルスケールを使う最大のハードル(比重の話)

多くのレシピ本やネットのレシピでは調味料の分量を計量スプーンや計量カップで表現しています。つまり、調味料の「体積」が書いてあるわけです。

けど、デジタルスケールで計る「量」は質量=重さです。なので、レシピを読んでデジタルスケールで調味料を計るには体積を重さに換算する必要があります。この換算に使う係数のことを比重と言います。式にするとこんな感じ。

ちなみに水の比重は1。1mlが1グラムになります。なので、小匙1杯(=5ml)なら5グラム。大匙1杯(=15ml)なら15グラム。計量カップ1杯分(=200ml)なら200グラムです。

けど、調味料によっては同じ体積で水より重いものもあります。例えば、醤油は塩分を含んでいる分、水より重くて比重は1.2。なので、大匙1杯は15ml×1.2=18グラムになります。

逆に水より軽いサラダ油の比重は0.8。大匙1杯なら12グラムです。

「やっぱ、あたしは計量スプーンで計るからいいや」とかつぶやいて、もう、挫けそうになっているあなた。心配ご無用。別に比重を暗記していちいち掛け算する必要はありません。

醤油の大匙1杯は18グラム。サラダ油の大匙1杯は12グラムと答えだけ知っておけばデジタルスケールは使えます。

主要な調味料の換算表を書いておきますね。(数字の単位はグラムです)

 
調味料小匙1杯大匙1杯カップ1杯
米、酢、酒515200
味噌、醤油、味醂618240
618240
砂糖39120
薄力粉、強力粉、片栗粉39120
パン粉1340
トマトケチャップ515200
マヨネーズ412160
油、ラード、バター412180

更にこの表に載ってない調味料の分量を知りたい方はこのサイトがオススメです。必要に応じて覗きに行ってください。僕もよくお世話になっています。

これらの数字は覚えておくに越したことはありませんが、小学生が九九を練習するように無理やり暗記する必要はありません。必要に応じてこの表を見ればOKです。

けど、結果的に僕は主な調味料のグラム換算を暗記しています。

覚えるコツは日常的にレシピをメモしていること。レシピを書く時に調味料表を計量スプーンとグラムの両方を書くクセを付けているのでいつの間にか覚えちゃったのです。

なので、今ではいちいち換算表を見返さなくてもスムースに調理ができるようになりました。って、自分のレシピを読む時はそもそもグラムが書いてあるんですけどね^^

デジタルスケールを使ってみよう(基本編)

では、簡単なレシピを使って実際にデジタルスケールを使った調理をシミュレーションしてみましょう。

■豚ひき肉とごぼうのつくね

【材料】(2人分) 調理時間:10分-

  • 豚ミンチ:150g
  • ごぼう:20cm
  • サラダ油:少々
  • 粉山椒:適宜

[下味パート]

  • おろし生姜:ひとかけ分
  • 卵:1/2個
  • 片栗粉:5g(大匙1/2)
  • 酒:7g(大匙1/2)
  • 濃口醤油:3g(小匙1/2)

[調味料パート]

  • 濃口醤油:18g(大匙1)
  • 酒:7g(大匙1/2)
  • 味醂:18g(大匙1)
  • 砂糖:3g(小匙1)

【作り方】

  1. ごぼうは粗みじんに切って5分間水に晒します。
  2. 1.をやっている間に豚ミンチと[下味パート]をボウルに合わせてよく練ります。★1
  3. ごぼうをざるに揚げて水気をよく切り、2.に加えて練り込み、一口大にちぎって小判型に整形します。
  4. フライパンにサラダ油少々を入れて中火にかけ3.を入れて両面よく焼きます。これに[調味料パート]を加えて炒りつけながら水気がなくなるまで焼けばできあがり。器に盛り付けて粉山椒を振って頂きます。★2

このレシピでは調味料を加える工程が2つあります。下味を付ける★1の工程と本筋の味を付ける★2の工程ですね。

★1ではデジタルスケールにボウルを載せてまず豚ミンチ150gを計ります。これに[下味パート]のおろし生姜と卵1/2個(Mサイズの卵なら25グラムです)を足してリセットボタンをポチッとな。更に続けて……

  1. 片栗粉を5グラム計る → リセットボタン
  2. 酒を7グラム計る → リセットボタン
  3. 濃口醤油を3グラム計る

という流れになります。簡単でしょ? それに3グラムとか5グラムといった計量スプーンで計るとバラつきが出る少量でもデジタルスケールなら正確に計ることができて味がぶれません。

更に片栗粉を先に計らないと片栗粉の入れ物が酒まみれ、醤油まみれになるということもありません。

★2は、つくねを焼いている工程ですのでフライパンは絶賛熱々状態。こういうときはキッチンスケールに鍋敷きを載せてその上に一旦火から外したフライパンを載せます。そして……

  1. 濃口醤油を18グラム計る → リセットボタン
  2. 酒を7グラム計る → リセットボタン
  3. 味醂を18グラム計る → リセットボタン
  4. 砂糖を3グラム計る

と調味料を加えていってコンロに戻せばOK。計量スプーンを洗う手間も省けてかなり楽になります。

それに下味で酒や醤油を計ったから計量スプーンを一旦洗って拭いておかないと砂糖が計れないということもありません。


デジタルスケールを使ってみよう(上級編)

デジタルスケールを使うと調味料の計量がとっても楽になって料理を段取り良く進めることができます。

けどね、デジタルスケールを使った料理の技は単に調味料を計るだけではありません。調理の工程のいろいろなシチュエーションで役に立つのです。

ポテトサラダを作る場合

ポテトサラダ、美味しいですよね。僕は大好きでちょくちょく作ります。

ポテトサラダを作る上で難しいのは作ったサラダの量に調味料の量を合わせないといけないことです。

同じじゃがいも1個から作ったとしてもじゃがいもには個体差がありますのでいつも同じマヨネーズの量では味がぶれます。

ポテトサラダに加えるマヨネーズの量は作ったサラダの重量の15%が適量です。けど、潰したじゃがいもの重さをどうやって計れば良いのでしょう? 普通にデジタルスケールに載せるとボウルの重さも含まれてしまうし、いちいち別の器に移して計るのも面倒です。

そういう時はこれ!

ポイント:ボウルの空重量を計っておく

僕は頻繁に使うボウルや丼、鍋などの空の重さを計って表にまとめています。例えば、うちで一番小さいボウルの空重量は204グラムです。

このボウルを使ってポテトサラダを作ってみましょう。

  1. じゃがいもを牛乳で茹でます。(水で茹でるのとは段違いにコクが増します)
  2. 茹でたじゃがいもをボウルに移して玉ねぎのみじん切りを加えてマッシュします。(玉ねぎはこの段階で加えるのがコツ。じゃがいもの熱で火が通ります)
  3. で、ボウルごと重さを計ります。

では、計算。

例えば重さが384グラムだとしましょう。ボウルの空重量は204グラムですから作ったサラダの重さは

384 - 204 = 180(グラム)

加えるべきマヨネーズの量はこの15%なので……

180 × 0.15 = 27(グラム)

これがこのサラダに対するマヨネーズの適量。こういう風にすれば味がブレず、いつも同じ味のサラダができあがります。

肉団子を作る場合

うちの娘達は中華料理の肉団子甘酢あんかけが大好き。なので、料理のサーブにはそれなりに気を遣う必要があります。

肉団子の数はもちろん、大きさが違うと喧嘩になっちゃいますから^^;

ポイント:肉団子や餃子の餡などはできれば目分量ではなく、きちんと重さを計ると大きさを統一にすることができます。

例えばこの写真の肉団子は種をこねた後、25グラムずつ計ってまるめています。ちょっとした手間ですが大きさにばらつきがあると見た目も悪くなりますのでぜひやってみてください。

ショートケーキを作る場合

僕は料理だけじゃなくお菓子も結構作ります。たまに知人からリクエストを受けて材料費をもらって作ることもあります(自慢げ^^;)。

これは知人に結婚記念日用に「ケーキを焼いて」とオーダーいただいて焼いたものです。秋をイメージしたケーキということなので柿、梨、ぶどうなどをたっぷり載せて上には松葉をイメージする揚げそうめんをトッピングしています。

そうめんは意外に塩分を含んでいるのでスイーツに合わせると良いアクセントになるんですよ。

で、中身はスポンジ生地なのですがスポンジを作る場合、薄力粉はダマがない状態にする必要があるので粉をふるっておく必要があります。

けど、一旦粉をボウルで計って粉ふるいに移すのは面倒ですし計量も不正確になります。そういう時は……

ポイント:粉ふるいごと秤に載せて計っちゃえ

ボウルに粉ふるいも載せちゃってリセットボタンをポチッとな。それから薄力粉を粉ふるいの中に入れて重さを計りましょう。

パスタを茹でる場合

パスタは茹でてソースをかけるだけのお手軽料理なので週末などにはよく作ります。

パスタを作る時にちょっと面倒なのはパスタの重さを計ること。

それこそ目分量で良いじゃんと言われそうですが、僕はパスタ1人分は100~120グラム(お腹の空き具合によって加減します)と決めているのでなんとなく計らないと気持ちが悪いんですよね。

けど、キッチンスケールの上面は真っ平らでツルンとした構造ですのでここにパスタを載せるとぽろぽろ転がっていって計りにくいことこの上ありません。そういう時は……

うちはこんなパスタポットにパスタを入れてしまっているのですが、このポットごとキッチンスケールに載せてしまいます。そしてリセットボタンをポチッとな。

表示が0グラムになったのを確認してポットからパスタを抜きます。表示はマイナスになりますが気にしない。

で、どんどんパスタを抜いていって表示がマイナス100~120グラムになれば抜いたパスタの重さがちょうど100~120グラムになったという印。

重量のマイナス表示もできちゃうキッチンスケールならではの技ですがキッチンスケールに載せるのが難しいものを計る時にはオススメのテクニックです。

まとめ

  • 計量スプーンで分量を計る時は「擦り切り」で計ること。
  • デジタルスケールを使って調味料を重さで計るようにすると計量スプーンや計量カップの欠点をカバーすることができます。
  • 熱々の鍋などに入れる調味料をデジタルスケールで計る場合は水分が蒸発して表示が目減りしていくので手早く計ること。
  • 多くのレシピは計量スプーンの単位(体積)で書かれているのでデジタルスケールで計る場合は重さに換算する必要があります。
  • 調味料の計量スプーン→グラムの換算は暗記する必要はないけど暗記していると換算表を見返す必要がなくなるので調理をスムースに進めることができます。
  • 計量スプーン→グラムの換算を覚えてしまうコツはレシピをメモする習慣を付けること。そして、分量表にはグラムと計量スプーンの両方を書くクセを付けること。
  • リセットボタン付きのデジタルスケールを使えば1つの調味料を計るたびに表示を0に戻して次の調味料が計れるので便利です。
  • 熱々の鍋やフライパンに調味料を加える場合でも、デジタルスケールに鍋敷きを敷いて鍋やフライパンを載せれば調味料を計ることができます。
  • ポテトサラダのようにできあがったサラダの量に調味料を合わせないといけない場合はサラダの量と調味料の量の比率を覚えておくと味がぶれません。ポテトサラダの場合はサラダの重さの15%がマヨネーズの適量です。
  • ポテトサラダの重さをはかる場合は使っているボウルの空重量を控えておくとボウルごと重さを計って引き算ができるので便利です。
  • 肉団子やつくねのような料理ではきちんと重さを計って分けていくと大きさが揃うので見栄えが良くなります。
  • 粉ふるいにかける薄力粉を計る場合は粉ふるいごとデジタルスケールに載せて計りましょう。
  • パスタなどデジタルスケールに載せると転がり落ちて計りにくいものは器ごと載せてリセットボタンをON。それからパスタを抜いてマイナス表示で重さを計りましょう
by カエレバ

 

デジタルスケールは1度買うと10年、20年単位で使えるものなので長らく買い替えなど考えたこともなかったのですが、↑これなんか良さげですね。

お値段は1000円と手頃だし、0.1グラム単位で計れるのもなかなか魅力的。

次回予告

次回は世の中に氾濫しているレシピの読み方について解説していきたいと思います。

レシピ通り作っているのになんで美味しくできないんだろうと悩んでいるあなた。

もしかしたら、あなたはレシピを鵜呑みにしていませんか? 人が書いたレシピは書いたのがたとえプロでも疑ってかからないといけません──というようなお話です。

では、また。

次回:『レシピ通りに作ったのになぜ?』の正体

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