馴染みの焼鳥屋の大将は理学部数学科を卒業して料理人になったという変わり種です。
更に変わっているのは卒業してすぐにオーストラリアに渡って3年焼き鳥の修行をやっていたとのこと。
なんでオーストラリアだったんだろ?(笑)
その修行をしていた店の近くに繁盛している中華飯店があってそこの店員と仲良くなったらしいのですがある時そこの店員が大将に「店の味の秘密をおしえてやる」と店の裏に呼んだことがあったそうな。
「この秘密の粉を使うとどんな料理でも飛び切り旨くなるんだ」と言って彼が見せてくれたサラサラの粉は──味の素だったそうな。
彼がオーストラリアに渡ったのは1980年代。
あの頃は日本の料理店でも普通に化学調味料を使っていた気がします。
実際、評判のラーメン屋でも丼にタレと一緒に結構な量の白い粉を入れている店を見かけました。
その後、飲食店から化学調味料が消えていったのは美味しんぼの影響が大きかったんじゃないかな。
同作では化学調味料は徹底的にディスられてまるで有害物質扱いでしたから。
僕自身は化学調味料に対してはニュートラルなスタンスで「それで料理が美味しくなるなら使うのを躊躇わない」という考えです。
だってグルタミン酸ソーダ自体は多くの食品に旨味成分として含まれているものでそれを化学的に抽出したのが化学調味料なわけでどちらも同じ化合物であることに変わりはありません。
言ってみれば昔ながらの塩田で作った塩と専売公社が売っていた食塩(塩化ナトリウム)の違いと同じこと。
前者ももちろん塩化ナトリウムが主成分でただそれ以外にもいろいろなミネラル成分が含まれているので旨味があるよというだけのこと。
別に食塩が体に悪いわけではありません。
って、いかにも工学部有機化学科卒らしい言だな(笑)
美味しんぼの中では塩田で作った塩を「本物の塩」なんて言い方をして化学的に作られた食塩を偽物扱いにする描写がしばしばありましたが僕的には一方が本物で他方が偽物なのではなく別物と捉えれば良いんじゃないかなと思っています。
大将のオーストラリア修行からかれこれ40年が経ちました。
その間にも数多の調味料やサプリメント、バランス栄養食などが誕生しましたがその中には化学の恩恵を被って生まれたものが少なからずあります。
それをいちいち偽物とディスるのはいかがなものか。
むしろ新しいものとして生活に取り入れていくのが21世紀的な食生活なんじゃないかしらん。
このレシピでも出汁の素を使っていますが慣れればけっこうお手軽だし味も侮れない旨さなんですよ。
【材料】(1人分)
-調理時間:4分-
- オクラ:1本
- 乾燥わかめ:ひとつまみ
- 水:250g(250ml)
- コンソメスープの素(顆粒):3g
- 塩:1g(小匙1/6)
- 昆布だしの素:小匙1/2
【作り方】
- オクラはヘタを落として小口切りにします。
- 全ての材料を小鍋に合わせて中火にかけひと煮立ちさせます。そのまま1分煮こめばできあがり。
【一口メモ】
- 昆布の風味が利いた野趣あふれる味わい。インスタントっぽい作りなのになかなかどうして侮れない一杯でした。
- 出汁の素を使うのに抵抗がある方もいらっしゃると思いますが近頃は化学調味料&食塩無添加の昆布の粉末みたいな商品も売られていますのでぜひお試しあれ。昆布で出汁を挽く手間の数倍は楽ちんです。ちなみに我が家では「リケンの素材力だし」シリーズを使っていますがガチで良い出汁が挽けますよ。
- お好みで冷蔵庫のあり合わせの野菜を細かく刻んで加えるとにぎやかなスープにグレードアップさせることもできます。合わない材料はあまりありませんのでいろいろ試してみてくださいな。