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生姜湯

人はなぜキャンプファイアの周りに集まるのだろうか──

別に哲学的な問いではなくて純粋に素朴な疑問、大きな火が焚いてあるとなんとなくその傍に寄って行きたくなりませんか? という問いです。

火は安心感をもたらす(防衛手段とか暖房とか)。

瞑想的な気分になって心が落ち着く。

遺伝子に刻まれた原始の儀式めいた記憶が蘇る。

などなどいろいろな理由が思い付きます。

中には「あの大きな火の下では何か美味しいものを焼いているに違いない」なんて下心で寄ってくる人もいるかもしれません。

で、寄って来た人たちは示し合わせたように談笑を始めます。

別に「しばしご歓談ください」なんて披露宴の司会者めいた号令を誰かがかけたわけでもないのにね。

そうするとますます火の傍から離れがたくなるのも人情です。

そんなキャンプファイアの魔力を家の中で再現した文明の利器があります。

そう、冬になると登場するあれ。

炬燵ですね。

人はなぜ炬燵が置いてあると足を突っ込みたがるのだろうか──その理由は恐らくキャンプファイアと似たようなものじゃないかと僕は想像しています。

そしてひとたび足を突っ込んでしまったら容易に抜け出せなくなるのもキャンプファイアと同種の魔力と言えるでしょう。

とはいえ炬燵に入っていると何か食べたり飲みたくなったりするのが人情。

で、時ならぬ非情のじゃんけん大会が始まったりするのです。

炬燵に似つかわしい食べ物とは?

多くの人が鍋料理を挙げそうな気がします。

その理由は温かい料理であるというだけではありますまい。

一度セッティングしてしまえば炬燵から抜け出すことなく炬燵の上で調理ができること。

ご馳走様を言うまで炬燵から出ないで済むことこそが鍋料理最大の魅力だと僕は思うのです。

ならば──炬燵に似つかわしい飲み物は?

僕ならいの一番に熱燗を挙げたいところ。

太宰治の短編小説「駈込み訴え」は太宰が口頭でしゃべったことを、妻の美知子さんが書きとった小説なのですが小説が完成するまで太宰は炬燵に浸かって熱燗の盃を傾けながら淀みなくしゃべり続けたそうです。

言うなればあの小説は「炬燵で熱燗」という魔物が生み出した作品と言えなくも……ないのかな。

アルコールが苦手な方におススメな炬燵向け飲み物といえば甘酒やお汁粉でしょうか。

けどこの一杯も捨てがたいですよ。

きりりと生姜の風味が利いたこの一杯は炬燵で温まった体を今度は内側からポカポカと温めてくれること請け合いなのです。

【材料】(1人前) 

調理時間:4分-

  • 水:250g(250ml)
  • おろし生姜:ひとかけ分(チューブなら1cm)
  • はちみつ:21g(大匙1)
  • レモン果汁:5g(小匙1)

[仕上げパート]

  • 水溶き片栗粉:3g分

【作り方】

  1. 小鍋に[仕上げパート]以外を合わせて中火にかけひと煮立ちさせます。
  2. 1.を煮立たせながら[仕上げパート]を加えてとろみを付ければできあがり。

【一口メモ】

  • はちみつとレモンの甘酸っぱさにキリッと涼やかな生姜の風味が織り成すハーモニー。体の芯から温まりますのでぜひ冬に飲みたい一杯です。
  • もうすぐ外から帰って来る家族がいらっしゃるならぜひお鍋にこれを温めてお出迎えしてあげましょう。たった4分で作れる至福の一杯が冷えた体に沁みわたります。
  • 寒い中で飲むのも良いのですが炬燵でぬくぬくしながら飲んでも美味。ポットにたっぷり拵えて炬燵の上にセッティングしておけば炬燵から抜け出すことなく何杯も楽しむことができます。

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