「嫌いなものもちゃんと全部食べなさい」
子供の頃にお母さんからそんなことを言われた人も多いんじゃないでしょうか。
「そんなこと言ったってまずいものはまずいし」
とふてくされながらしぶしぶ苦手な食べ物を口に運んだなんてのは誰しもある経験のような気がします。
子供の偏食に頭を悩ますお母さんも多いと思うのですが「ちゃんと食べなさい」と叱る前にちょっと考えてみましょう。
なぜ、この子はこれを食べることを嫌がるのか?
その疑問を解くためにはまず相手の立場を理解しようと歩み寄る必要があります。
大人と子供では食の経験値が圧倒的に違います。
お母さんにとってはそれは食べたことがあるもので「食べても大丈夫」と知っているものでも子供にとっては未知のものがたくさんあります。
たとえ大人であっても未知の国で聞いたこともない食材で作られた料理を出されたら箸を伸ばすのを躊躇う人はたくさんいるでしょう。
今、目の前で嫌がっている子供はまさにそんな箸を伸ばすのを躊躇っている自分と同じだと想像してみましょう。
次にこの子はこの食べ物の何が嫌いなのかを考えてみましょう。
味?
確かに苦み(=毒かもしれない)、酸味(=腐敗し始めているかもしれない)のある食べ物は生物の本能で忌避します。
大人がそれを食べられるのは単に過去に食べたことがあって大丈夫と知っているからに過ぎません。
食感?
ぶにょっとした食べ物が苦手な人は大人でもたくさんいます。
見た目?
トラウマ?
お友達が嫌いだと言っていたからなんてのもあるかも。
それだって頭ごなしに叱ってはダメです。
食の経験が足りていない子供にとって信頼のおける友人から得た情報は貴重な判断材料なのです。
それを知った上でではどう子供に接するかですが「これ美味しいのにな」なんて子供の前で美味しそうな顔をして食べてみせるというのはあまり効果的ではないそう。
だって、子供はそれをまずいと思っているんですからそんな小芝居を見せられても白けた顔で見られるのがオチです。
子育てしてみて改めて気づいたのは子供って案外子供じゃなくてちゃんといろんなことが見えていますからそんな子供だましには引っ掛かりません。
取るべき方法は大きく分けて二つ。
一つは「あ、じゃあ無理に食べなくて良いよ」とあっさり引き下がって別のものを食べさせること。
栄養価に大差ないものであればそれもありだと思います。
もう一つはそのまずいと思っている食べ物を美味しいと思う料理に仕立てること。
食べさせる親の勉強と工夫にかかっていると思うのです。
【材料】(5ピース分)
-調理時間:8分-
- ほうれん草:2株
- スライスチーズ:1枚
- 塩、ブラックペッパー:少々
【作り方】
- ざく切りしたほうれん草をラップに包んで耐熱皿に置き電子レンジの500ワットで1分チンします。レンジから取り出したら手早くラップから取り出しぬるま湯に晒してじゃぶじゃぶすすぎます。
- 1.のほうれん草の水気を絞り塩、ブラックペッパーをまぶして耐熱皿に戻します。細かく切ったスライスチーズを載せてオーブトースターの高温で5分、チーズが融けるまで焼けばできあがり。
【一口メモ】
- 僕もほうれん草は苦手な野菜なのですがこれはチーズの風味が利いていてちょっと好きかも。加えて工程1.の手順で独特のえぐみが抑えられているので普通に食べられます。
- ほうれん草は独特のえぐみがありますがあれはほうれん草に含まれるシュウ酸が口内のカルシウム(歯の成分)と結合してシュウ酸カルシウムが合成されるときに生じる味です。シュウ酸は水溶性ですので工程1.で加熱して溶けやすい状態を作ってすぐに水ですすぐことでシュウ酸を抜いてえぐみを抑えることができます。これなら子供たちも食べてくれるかも。
- ほうれん草のえぐみを抑えるもう一つの方法は口に入れる前にシュウ酸カルシウムを合成してしまうこと。カルシウムが豊富な食品、たとえば牛乳といっしょにほうれん草を煮ると効果的です。
- 持論ですが食育は子供に親が願っているものを食べさせることを目的にするのではなく「食べるって楽しい」ということを知ってもらうことを目的にすべきだと思っています。食べることは生きている限りずっと続きます。子供の頃にトラウマ級の嫌な思い出を作っちゃったら本末転倒だと思うのです。