僕の同僚に「俺は形から入るタイプやねん」を標榜する人がいました。
例えば僕らが新入社員だった平成元年頃はスキーが大ブームで毎年のように同期でスキー旅行に出かけておりました。
ところが、彼は毎年のようにスキーウェアを買い替えて来るのです。
で、そのウェアに合わせないと気が済まないらしくスキー板もストックもゴーグルさえも買い替えてくるという念の入りよう。
で、
「俺は形から入るタイプやねん」
なんてうそぶいてましたっけ。
ま、人様が何にお金を使おうが口出しするようなことではないのですが豪快というか……
はっきりいってもったいないなぁとか内心思っておりました。
とはいえ形から入ることは決して悪いことではないと思います。
「形」、「型」というのは先人が長い年月をかけて編み出した必勝パターン。
それに倣っていれば初心者でもベテランと同じ結果を出せるという強みがあるのは事実です。
料理の世界も先人たちの結晶ともいうべき形、型があふれています。
例えば味噌や醤油は長い年月をかけて試行錯誤の上、昇華させた発酵調味料です。
これらを使えば誰でも簡単にプロの味が出せるので家に常備しておきたいところです。
「いや、俺は新しい地平を目指すんだ」
と一念発起してイチから醤油づくりを始めたりしたら料理が食べられるのはずっと先の話になってお腹が鳴ります。
こういった発酵調味料の延長線上にある合わせ調味料も現代では百花繚乱。
焼き肉のタレやドレッシングだけでなく焼き鳥のタレ、生姜焼きのタレ、唐揚げの素などそのまま素材の味付けに使えるものもありますし、COOK-DOのようにほぼ料理が完成する1歩手前までやってくれているレトルト食品までスーパーに行けばずらっとそろっています。
「まずは形から入るべし」
なんて言ってそれをかごに入れるのもありっちゃありなのですがそのスタイルには弊害もあります。
「酢豚が食べたいけど、酢豚の素が家にない!」
なんて嘆くことになったりするのです。
酢豚は醤油、砂糖、酢といった基本的な調味料と片栗粉があれば実は作れます(好みでケチャップを入れるのもあり)。
中華料理の世界には様々な合わせ調味料があります。
豆板醤、甜麺醤、豆鼓醤、XO醤、オイスターソースなどなど。
料理はレシピ通りに作るのが鉄則ですがレシピにこれらの合わせ調味料がずらっと並んでいる場合それを全部そろえるというのはどうなのでしょう。
お財布的にも痛いし冷蔵庫も瓶で溢れちゃう。
それに一度使ったきりでずっと使わない調味料がいっぱいある──なんて嘆きも聞こえてきそうです。
そう思ったら一度「形」、「型」から離れて自作することを考えるのも手かもしれません。
と言っても必ずしも本物を作る必要はなくどこの家にでもある基本の調味料を合わせてそれっぽい味が出せれば十分。
だって一つの料理に使う調味料なんて小匙1杯からせいぜい大匙1杯程度ですからいうほど変な味になったりはしません。
年末、おせち料理に中華おせちの新作を入れたくて仕入れたレシピの中で立て続けに甜麺醤という言葉と遭遇しました。
甜麺醤は塩、小麦粉を麹で発酵させた甘味噌です。
ちなみに名前の「麺」の字は小麦粉を指す言葉ですね。
買ってきても良いのですがいうほど頻繁に使う調味料ではないので持て余す可能性が高い。
冷蔵庫の中で場所を塞ぐし味も悪くなっていきます。
ということで手近な調味料を使って甜麺醤っぽい合わせ調味料を作ることにしたのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:2分-
- 味噌(できれば赤味噌):18g(大匙1)
- 砂糖:5g(大匙1/2強)
- 濃口醤油:3g(小匙1/2)
- ごま油:2g(小匙1/2)
【作り方】
- 全部の材料を合わせてよく混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- 味見してみましたがそれっぽい味に仕上がっています。甜面醤は中華の甘味噌なので要は味噌と砂糖を軸に合わせればだいたいOK。あとは風味付けに醤油、ごま油を使っています。
- 調味の要は砂糖の分量です。味見をしながら少しずつ加えて納得のいく甘さにしてください。ちょっと甘めくらいの方が良いかもです。
- 頻繁に中華料理が食卓に上るお家でしたら本物をひと瓶買っておくのもありだと思います。けど、滅多に使わないだろうなと思う方はぜひお試しあれ。
- 赤味噌の常備がなく普通の味噌で作ったので写真はかなり色が浅いです。赤味噌を使うともっと黒々として更に本物っぽく見えますよ。但し、料理に使ってしまったら色はわからなくなっちゃうけどw