文献によると織田信長は椅子に座ってワインを飲んだことがあるそうです。
おそらくご本人は「俺ってなんてナウいんだ」なんて思ってたんじゃないかな。
確かに、1500年代にそんなことしていたらそう思いたくもなりますよね。
それから300年後、明治維新が起きて東京に文明開化がやってきました。
「文明開化」というワードは明治人にとってハイカラそのものだったと思います。
西洋の文化はどれもこれも華やかでカッコイイ。
それに比べて和風のものはもっさりしていて野暮ったい。
見るもの聞くもの目新しいことばかりでそう思いたくもなりますよね。
そんな明治人が憧れて食べたことを自慢したくなる肉料理は牛鍋でした。
いわゆるすき焼きですね。
それからさらに数十年後、太平洋戦争が終わって進駐軍がやってきてアメリカンな文化をもたらしました。
ロードショーにかかるハリウッド映画の登場人物はみな洒脱で小粋でカッコイイ。
観客はひととき野暮ったい日常生活を忘れて華やかなパーティーに憧れ、酔いしれたと思います。
当時の人々が憧れた肉料理は和風のすき焼きではなく、ステーキだったのではないでしょうか。
分厚い肉を豪快な炎で焼き、豪快に頬張る。
あんなの旨いに決まってるじゃないか──まあ、そう思いたくもなりますよね。
21世紀、そのアメリカ産やオーストラリア産のステーキ肉はかなり安価に手に入るようになって、決して手の届かない高嶺の花ではなくなりました。
けど、お肉が手に入ってもそれを美味しく焼く技法を持っていなければ「お家でステーキハウス」は夢のまた夢。
ということで、少し奮発してステーキ肉を購入。
焼き方の勉強をしてみました。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- 牛もも肉ステーキ用:1枚
- 塩:適宜
- 粗挽きブラックペッパー:たっぷりめ
- バター:12g(大匙1)
- 赤ワイン:15g(大匙1)
- ジップロック:耐熱温度上限100度のもの
【作り方】
- フライパンにステーキが半分くらい浸かるほどの水を張って中火にかけます。お肉をジップロックに入れて空気を抜きます。 ※ジップロックにストローを刺して口を閉じ、ストローから空気を吸うと綺麗に抜けます。なお、この段階では塩、ブラックペッパーはまぶしません。
- 1.のフライパンの水が細かい泡を立て始めたら火を止めてジップロックに入れた肉を浸け5分置きます。一旦、肉を抜いて中火にかけ再び細かい泡が立ち始めたら火を止めて肉のもう片面を浸けて5分置きます。
- 肉をジップロックから出して塩と粗挽きブラックペッパーをまぶします。
- フライパンにバターを入れて強火にかけます。バターが融けだしたら肉を入れて1分焼きます。焼いている間、何度もバターと肉汁を上面にかけます。肉をひっくり返して同じ要領で30秒焼いて皿に取ります。 ※肉汁の溶け出したバターを肉の上面にかけることで表面の乾燥を防ぎ肉の旨味を戻すことができます(フレンチのアロゼと呼ばれる技法です)。
- 4.のフライパンに赤ワインを入れて固まり始めた肉汁をこそげ落とすようにして溶かします。これをお肉にかければできあがり。 ※肉汁を赤ワインに溶かしてステーキソースにするこの技法をデグラッセと呼びます。
【一口メモ】
- 表面はカリッと中はしっとり柔らか。かなり理想的なステーキに仕上がりました。味付けは塩、ブラックペッパーとシンプルですが赤ワインを使った肉汁のソースが贅沢な風味を加えてくれます。
- ポイントは肉を60~70度の湯煎にかけて先に肉の中に火を通すこと。動物性タンパク質は70度を超えると硬くなりますので比較的低温でやんわりと火を通すのがコツです。10分間浸けるとミディアム・レアからミディアムくらいでした。これより短いとレア、長いとウェルダンになります。何度か練習してお好みの火の通り方の時間を覚えましょう。
- 表面を焼く時間は強火で短時間がポイント。時間をかけるとせっかく柔らかく火が通った中まで硬くなってしまいます。
- 少し手間ですが炊飯器に肉が浸かる程度の熱湯を張ってしばらく置いてからジップロックに入れた肉を浸けて保温モードをオンにする手法がオススメです。保温モードはお湯を約70度にキープしてくれますので温度管理が楽なのです。