昭和の頃は「洋食」という非常にざっくりとしたくくりだった料理が国籍ごとに細分化されるようになったのはバブル景気に沸いていた平成が始まったばかりの頃だったんじゃないかなと思います。
彼女をデートに誘うにしても街の洋食屋さんではダサい。
「フレンチの良い店ができてさ」とか
「隠れ家的なイタリアンのレストランがあるんだけど」なんて言うと料理にハクが付いた気がする。
彼女の方も「オっシャレ~」といって喜ぶ。
結局、国籍が冠に付いたレストランがブームになった原動力って女の子にモテたいという下心のなせる業だったんじゃないかな、なんてあの頃を振り返って思っちゃいます。
動機がそういったふわっとしたものだったので実はどこの国籍料理かなんてどうでも良くて「通っぽい」響きがあれば良い。
なのでブームの寿命は短くその移ろいは雨の後の河のごとく激しいものでした。
2000年になる頃には「イタ飯? 未だそんなこと言ってるの。ダセぇよ」
なんて言われるようになって新しく台頭してきたのがスペイン料理。
「何それ。聞いたことない。なんかオシャレっぽい」──相変わらずそんなノリでブームは始まったんじゃないかな。
ただバブルの頃と違ったのはみんなお金を持っていない。
財布の中の軍資金も寂しい感じ。
なのでリーズナブルに楽しめるお店が求められると考えた人が始めたのが「バル」という営業形態でした。
出される料理はピンチョスやタパスと呼ばれるおつまみ類。
しっかりした料理に比べると割安なのがウケたというところかな。
ということで2010年くらいから雨後の筍のように街中にスペインバルの店が新装開店されました。
それだけにとどまらず中華バルだのイタリアンバルだの要は中華やイタリアン風のおつまみを出すお店に〇〇バルという名前を付けるのが流行っちゃいましたね。
本場スペインのバルは朝から営業しているのが一般的。
朝はカフェとして昼は定食屋として夜は居酒屋として機能するのが普通です。
けど、日本で見かけるバルは居酒屋に特化している店が多くあくまでも「なんちゃってバル」といった感じ。
せめて料理くらいは本格的なスペイン料理を出してほしいな。
スペイン料理はフレンチやイタリアンのようにソースに凝らず素材の美味しさを前面に押し出すのが身上。
このレシピのように至ってシンプルな味付けの簡単な料理も多いんですよ。
【材料】(2人分)
-調理時間:70分-
- 茄子:2本
- 塩、ブラックペッパー:少々
[マリネ液パート]
- シェリービネガー(なければワインビネガー):30g(大匙2)
- 塩:2g(小匙1/3)
- オリーブオイル:24g(大匙2)
- にんにく:ひとかけ
【作り方】
- オーブンを220度に予熱します。茄子はがくを取りパプリカはそのままで金属製のバットか耐熱皿に並べて待機します。オーブンが温まったら天板にバットを載せてオーブンに入れ30分焼きます(時々、野菜をひっくり返してまんべんなく焼きます)。
- 1.をやっている間に[マリネ液パート]のにんにくはスライスして残りの材料と合わせてよく混ぜておきます。3.1.が焼きあがったらバットにアルミホイルをかぶせて30分放置して蒸らします。 ※アルミホイルは野菜から出る汁が蒸発しないようにするためのカバーですのでぴっちりと端を折り込んでバットをしっかり覆ってください。
- 茄子は皮を手で剥いて細切りにします。パプリカはヘタを取って中の種を取り細切りにします。これらを器に移します。[マリネ液パート]にバットに溜まった野菜の汁を加えて野菜の上からかけてよく和えればできあがり。できれば冷蔵庫で冷やしてから戴きましょう。
【一口メモ】
- 使う調味料は塩のみのシンプルさ。だからこそ野菜本来の優しい甘みをしっかり堪能できる一皿なのです。
- 焼いた茄子の皮を剥いてソースをかけて食べる。まさにスペイン晩「焼きナス」といった料理です。和食では醤油の力を借りて焼けた野菜の香ばしさを楽しみますが、こっちは野菜自体から出た甘い汁を活かして優しい味に仕上げていますね。
- 夏野菜全般に行かせる料理です。他にもトマト、トウモロコシ、オクラなどを一緒に焼いてにぎやかな皿にすれば野菜オンリーのごちそう料理に仕立てることだってできちゃいます。