以前、「酔鏡」という居酒屋を舞台にしたミステリーを書いたことがあります。
執筆に際して特に意識したことは出てくる料理がどれも美味しそうに見えること。
シズル感──なんて言葉をまだ知らなかった時期でしたが振り返ってみるとまさにそれを意識していたんだなぁと思います。
文字だけで表現する小説の世界で美味しそうに『見える』ことなんて書くと変に思われるかもですが確かに見せることができるのです。
僕が使った飛び道具は色の形容。
例えば赤系だけでも紅、緋色、朱、鴇色、火色など十種類以上の形容をリストアップして使い分け、読者の想像力を掻き立てる工夫をしました。
拙いところもいっぱいあったけど頑張ってたなぁと懐かしく思い出すこと仕切り。
近頃はドラマやアニメでも料理をテーマにしたものがたくさんあってどれも美味しそうな料理がいっぱい登場します。
それを観ているとスタッフの皆さんもシズル感をどうやって出そうか日々悩んでおられるんだろうなと容易に想像できます。
そんなシズル感の出し方のヒントがアマチュアの世界にあることに最近気が付きました。
それは──インスタグラムに代表されるSNSサイト。
レストランでいわゆる「映え」を出そうと腐心する人達の努力と工夫は侮れないものがあります。
中には「こんな手があったか」とプロを唸らせるテクニックだってあちこちに散らばってるんじゃないかな。
そしてそれが現実の映像作品に活かされる。
昔はなかったムーブメントだと思います。
この料理は「異世界居酒屋のぶ」のとある1話に登場したものです。
ドラマやアニメ版では登場していないけれどコミックスで読んだときはこれは美味しそうと感じました。
味はちょっと地味なんだけどかぼちゃとイカのコントラスト。
見た目の色艶は明らかにシズル感をそそる出来になっていると思うのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:25分-
- ヤリイカ:2杯
- 南瓜:1/8個
[煮汁パート]
- 水:200g(カップ1)
- 鰹出汁の素:小匙1/2
- 濃口醤油:18g(大匙1)
- 酒:15g(大匙1)
- 味醂:36g(大匙2)
- 砂糖:3g(小匙1)
【作り方】
- イカは胴と足を切り離します。胴から軟骨とワタを外して1cm幅の輪切りにします。足は食べやすい大きさに切ります。南瓜も食べやすい大きさに切ります。
- 小鍋に[煮汁パート]を合わせてひと煮立ちさせ南瓜を加えて蓋をし、弱火で15分煮込みます。
- 2.にヤリイカを加えて5分煮込めばできあがり。
【一口メモ】
- イカのような海鮮に甘めの野菜って合うのかなと気になりましたが予想以上に美味しかったです。子供やお年寄りにもウケの良いおかずになりそう。
- イカはタコに置き換えても美味しいですよ。
- 工程1.で外したワタは少量のバターと一緒にアルミホイルにくるんでオーブントースターで焼けば良いおつまみになります。
- このレシピは純然たる和食ですがカレー粉やスパイスを加えてエスニック風にしても楽しいと思います。