新しい料理を全くのゼロから考えるということはかなり困難を要します。
まだ誰も知らない調理技法を使い、斬新な食材を選択し、思いもよらない味付けを施す。そんな料理をほいほい作れる人がいたらその人は天才……、いやそんな呼び方では生ぬるい、神か悪魔の域にいる人です。
現実問題として、料理人が新作料理を考える場合は既にある料理をベースに考えていくのが一般的です。
やり方はいくつかありますが、一番ポピュラーなのはアレンジかな。誰もが知っている和食を中華風にしたり洋食に置き換えてみたり、あるいは使う食材を変えてみるだけでまるで違う料理に見えることもあります。
東郷平八郎にビーフシチューを請われて肉じゃがを作っちゃった料理人もいますしね。
別の方法としては合体。既存の複数の料理を合体させて、新しい料理を生み出す方法。
例えば、僕が持っているエンゼルクッキーというお菓子のレシピではクッキー生地の上にメレンゲ菓子(マカロンみたいな生地)を塗ります。下はしっとり、上はさくっとした食感が楽しめるという仕掛け。
ただ、アレンジにしろ合体にしろ考案するにあたって一つ大きな壁があるのです。それは、その料理の必然性。
なぜ、和食のこの料理を洋食にしようとするのか? 洋食にすることでどんなメリットがあり、どんな効果が期待できるのか? その裏付けがなければそれはただの思い付きで、ちょっとした遊び心としては許されても店のメニューに載せるにはいささか軽い品になってしまいます。
日清食品のチキンラーメンを使ったこの一品。名前から伺えるように元になった料理は親子丼です。
鶏がらスープを使った麺料理にこれを置き換えたらどうなるかというのが発想の原点でした。使う食材は鶏肉と卵ですからスープとの相性もバッチリ。そして何より、親子丼では実現できなかったスープに卵を溶け込ませてしまうというアレンジが目新しく、親子丼から出発して全く別の料理になったんじゃないかなと自画自賛しているのですが如何でしょう?
【材料】(1人分)
-調理時間:5分-
- 日清のチキンラーメン:1袋
- 鶏もも肉:50g
- 卵:1個
- ししとう:2本
- 塩:少々
- 粗挽きブラックペッパー:少々
- 水:400g(2カップ)
【作り方】
- 小鍋に水2カップを入れ強火にかけて沸騰させます。
- 1.をやっている間に鶏肉は食べ易い大きさに切ります。ししとうはがくを落とします。フライパンにサラダ油少々(分量外)を入れて鶏肉とししとうを入れ、塩少々を振って焼き色が付くまで炒めます。
- 1.にチキンラーメンを入れて吹きこぼれないよう火加減を調整し、1分茹でます。小鍋の蓋は2.のフライパンに載せて予熱で芯まで火が通るようにしましょう。
- 3.をやっている間に丼に卵を割り入れ泡立て器で丁寧にほぐします。
- 持ち時間は1分ですので手早くやりましょう。
- 3.の火を止めてスープを4.の丼に少しずつ加えながら都度泡立て器でしっかり混ぜます。最終的に全てのスープと麺を加えてしっかり混ぜます。
- 5.に鶏肉、ししとうをトッピングして粗挽きブラックペッパーを振ればできあがり。
【一口メモ】
- 出された人は「どこが親子チキンラーメン? 鶏肉だけで卵が入ってないじゃん」というかもしれません。けど、食べれば納得。スープに卵が溶け込んでマイルドな味が料理全体を包み込んでくれます。
- 5.の工程ではお湯を少しずつ加えてしっかり混ぜるのがポイント。ここで、急いてしまうと卵がもろもろに固まって炒り卵状態になっちゃいます。
- 調理の段取りはまず1.で湯を沸かし始め、沸騰するまでに2.を済ませるようにすること。次に3.で麺を茹で始めてから並行して4.の卵の撹拌を1分で行うこと。そうするといつものチキンラーメンを作る時間とほぼ同じ時間で調理完了します。
- より親子丼っぽい味を求める場合はスープに大匙1くらいの味醂を加えるのがお勧め。少し甘めのスープに変身します。その場合は粗挽きブラックペッパーの代わりに七味唐辛子を降るのが良いかも。