僕は中学生の時にアガサクリスティーにハマって以来のミステリーマニアで、六十に手が届く今に至るまで読んだ小説の9割以上がミステリーだったりします。
わりと雑食でどんなジャンルでも読んでしまう人ですが謎解きに重点を置き過ぎて人物や背景が記号か書割みたいになっている作品はちょっと苦手かな。
逆に物語として読んでも十分面白い作品は大好物でどっぷり作品世界にハマってしまうタイプです。
で、根が食いしん坊なので飲食店を舞台にした作品に触れると謎解きそっちのけで物語に登場する料理にばかり目がいくという変な習性も持ち合わせていたりします。
北森鴻のビア・バー「香菜里屋」シリーズなどは度々読書の手を止めて出てきた料理と想定されるレシピをメモしてはまた読み進めるという読書家としてはたいへんお行儀の悪い読み方をした思い出があります(笑)。
数年前「シェフは名探偵」というタイトルでドラマ化された近藤史恵原作の「ビストロ・パ・マル」シリーズも飲食店を舞台にした短編連作ミステリーで毎話、提示される謎が料理にまつわるものだったので興味深く読みました。
実はシリーズ3冊目が出ていることを知らなくてドラマをきっかけに知って急いで図書館に借りに行ったというのも良い思い出です。
作中にヴィーガンの女性から予約が入って「動物性のものはダメだから」と電話越しに釘を差されるエピソードがありました。
物語の舞台になるビストロの料理ジャンルはフレンチ。
バターなどの乳製品をふんだんに使うメニューが多くシェフは代用食材に工夫を凝らします。
彼が牛乳の代わりに使ったのは豆乳。
風味は牛乳より劣りますがさすがにプロ。
全然見劣りのしない料理を用意するのですが──
店に来たその予約客の会話の端々から何か強い信念があってヴィーガン料理を注文したのではなくただ何となく流行っているからというだけで頼んでみたということが透けて見えました。
要はその客にとってヴィーガンはファッションのひとつ。
「わたしヴィーガンなの。動物性のものって体が受け付けなくって」
とか言ってるわたしって格好良い!
くらいに思っているようなのです。
それでもシェフは顔色一つ変えず他の客と同じように接します。
そこに彼のプロとしての矜持を感じました。
ホント、格好良い!
豆乳をフランス料理に使うという発想は目から鱗でその話を読んでしばらくは手持ちのルセット(レシピ)を引っ張り出しては牛乳や生クリームの代わりに豆乳を使った料理を試作してましたっけ……
イマイチ、格好良くないなw
けど、爾来豆乳の可能性に目覚めてしまいただ飲み物として飲むだけでなくいろいろなスープに応用が利くんじゃないかといろいろ試しております。
このラーメンも思い付きではあったのですがばっちりかみ合って旨いスープに仕上がりました。
まあ、豆乳と味噌って大豆を使った発酵食品同士ですし、ある意味最強のコンビネーションなんですよね。
【材料】(1人分)
-調理時間:15分-
- 棒ラーメン:100gまたは生ラーメン1玉
- 白菜:1枚
- 人参:1cm
[トッピングパート]
- 牛もも肉または豚もも肉:50g
- 塩、ブラックペッパー:少々
- サラダ油:4g(小匙1)
[スープパート]
- 豆乳:200g(カップ1)
- 水:150g(150ml)
- 牛ダシダ:6g
- 味噌:20g(大匙1強)
- おろしにんにく:ひとかけ分
- おろし生姜:ひとかけ分
【作り方】
- [トッピングパート]の肉を冷たいフライパンに入れ、塩、ブラックペッパー、サラダ油をまぶしてごく弱火にかけ10分いじらずに焼きます。肉を返して更に2、3分焼きまんべんなく焼き色を付けます。
- 1.と並行して[スープパート]を小鍋に合わせて中火にかけひと煮立ちさせます(吹きこぼれに注意)。待っている間に白菜、人参を食べやすい大きさに切ります。煮立ったら白菜、人参を加えて弱火で5分煮込みます。
- 工程1.の肉を焼く工程が7分を経過したら棒ラーメンを茹でる湯(分量外)を沸かします。湯が沸いたら棒ラーメンを投入して規定時間茹でます。茹で上がったらざるに揚げて湯を切ります。
- 丼に麺を入れて2.のスープを注ぎ1.のトッピングを載せればできあがり。
【一口メモ】
- このスープのベースは豆乳鍋のつゆです。鍋の〆にラーメンを食べるというのがありなら鍋のつゆをラーメンスープにすると美味しいのではという発想。で、めちゃ旨かったです。
- おろし生姜、おろしにんにくが利いていて体がぽかぽか温まります。真冬には特におススメの1杯ですよ。
- 豆乳は栄養価が高いうえに旨味成分の塊なのでそれ自体が出汁の役割を担えます。麺料理に限らず各種スープに応用できますのでぜひお試しあれ。