年明けのピクニック弁当。
汁物をお正月らしく各種お雑煮にしてみたくて100均ショップで切り餅を買ってきました。
お値段はもちろん100円(税別)。
5個入りの食べきりサイズです。
ところが、あいにくの雨天やら寒波やらが続いてピクニック中止が続発。
お餅が余ってしまいました。
せっかくなのでお肉と合わせて夕飯のおかずをこしらえようと考えたのですが──どうにも……
ノスタルジックな気分が溢れて来るのです。
結婚して間もない頃、新居の近くに居酒屋を見つけてちょくちょく寄り道しては嫁に叱られていました。
場所が大学のおひざ元ということもあってか、やたらアカデミックな常連たちが集う良い店でした。
その雰囲気に魅了されてしまったんですよね。
三十年オーバーで日本史の教鞭を取っていてとっくに帰化されている英国人の教授とか(日本語ペラペラでした)。
かつては野球少年で地区大会であの星野監督(当時高校生)と対決し甲子園行きを阻んだ物理化学の准教授だとか。
やはりスポーツ少年で高校時代に東京オリンピックの聖火ランナーを経験しているどこぞの企業の偉い人だとか──
どういうわけか店に居つく客たちは一廉(ひとかど)の錚々たる人物が多くて、彼らと語る話題は一介のサラリーマンをやっていただけでは一生経験することのないものばかりでした。
話題がアカデミックな議論に及ぶと事の真偽や事実関係を確かめたくなることもしばしば。
そんな時のために店の奥には広辞苑と最新版のイミダスが常備されていました。
居酒屋にそんなものが置いてあること事態笑えるのですが、思えばあの本たちは店の特徴を端的に説明する象徴みたいなものだったな。
良い居酒屋にはその店のウリとなる名物料理があるものです。
多分に漏れずその店にも人気メニューがありまして御三家ともいうべき料理は──ささみ明太子、ナスっちー&トマトっちー、そして……
もちーズベーコンでした。
開いたささみに叩いた明太子を塗って巻いて揚げたささみ明太子。
バター焼きにしたナスやトマトにチーズを載せて仕上げるナスっちー&トマトっちーも美味。
けどなんと言っても、もチーズベーコンは目から鱗の落ちる思いがした1品でした。
餅に肉を合わせる?
それおいしいの?
そう、とっても美味しかったのです。
多くの居酒屋の宿命で長女が生まれて数年した頃、経営が上手くいかなくなったようで数多の常連に惜しまれながら店は畳まれることになりました。
あそこのカウンターで舌つづみを打つことはもうできないけれど僕の舌はそこで食べた料理の味を覚えています。
で、時々思い出したようにこしらえてみては懐かしい気分に浸っているという。
お雑煮用のお餅が余ったのも何かの縁でしょう。
あいにくベーコンの手持ちはありませんでしたが豚肉を使ってこんな料理をこしらえました。
遠い日々の思い出に浸りながら傾ける杯はまたひとしお。
こんな夜の過ごし方も良き良き。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- 豚バラスライス(長さ20cmくらいのもの):3枚
- 切り餅:3個
- スライスチーズ:1枚
[調味料パート]
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 味醂:12g(小匙2)
- 粉山椒:少々
- 砂糖:4.5g(大匙1)
【作り方】
- 豚バラスライスは横半分に切ります。切り餅は半分に切ります。スライスチーズは六等分します。
- 豚バラスライスで切り餅を巻いて巻き終わりを下にして冷たいフライパンに並べます。これを弱火にかけて5分焼きます。豚肉を返していきながら全面に焼き色を付けます。待っている間に[調味料パート]を合わせてよく混ぜておきます。
- 2.に[調味料パート]を流しいれ中火にして絡めながら水気がほぼなくなるまで焼きます。これにスライスチーズを載せ蓋をして30秒蒸し焼きにすればできあがり。
【一口メモ】
- 定番の照り焼き風甘辛味にしてみました。粉山椒がキリッと味を引き締めてくれて良い感じ。いくらでも食べられそうな気がします。
- おつまみにもおススメですがお餅を使っていて腹持ちが良いので普通におかずにしても満足感の高い一皿になりますよ。
- お好みで練り辛子、わさび、柚子胡椒などを付けるのもあり。変わったところでは[調味料パート]に茶さじ一杯くらいカレー粉を加えるとぐっとエスニックなテイストになります。