豊臣秀吉はダブルブッキングの達人だった──なんて話を何かの本で読んだことがあります。
約束をしたのに待てど暮らせど秀吉がやってこない。
後刻、約束をすっぽかされた相手が抗議しても「あ、すまん」と言って片手拝みするだけ。
それなのに相手も「まあサルだからしゃーないか」となんとなく赦してしまっちゃったという。
世の中には同じことをしても怒られる人とそうでない人がいるようで後者は周囲から「あいつはそういうやつやからしゃーない」と赦されるお得な(?)気質を持ち合わせている気がします。
なんか釈然としない気がしますが事の是非は当の本人の善し悪しが問われるべきではなく「●●はこういうもの」とやたらレッテルを貼りたがる周囲に責任がある気がします。
この『レッテルを貼りたがる』というのは普遍的な人の性なようで日常生活の中でもよく見かけます。
たとえば女子高生=「可憐な乙女」みたいな幻想を抱く男性は多くいると思いますが女子校に通っていた娘にそんな話をしたら「アホか」と一蹴されました。
教室に男子生徒がいない分、あけっぴろげであけすけ。
控えめに言ってあれは動物園やな──だそうです。
ま、実態はそんなもんなんでしょうね。
これなども「●●というものはこういうもの」というレッテルを貼りたがる人の性の証左でしょう。
同様に人は土地柄にもレッテルを貼りたがります。
たとえば「京都」ってどんなイメージがある?
という質問を投げかけると異口同音に和風、はんなり、いけずな人が多いなどなどと返ってきます。
なぜか面白いくらい抱くイメージが多くの人で共通しているのはそれだけ京都に対する固定観念が浸透しちゃっているからでしょう。
では京都ラーメンってどんなラーメンだと思う?
と質問したらどうでしょう。
ラーメンに詳しくない人なら和風のすまし汁のような淡麗で薄味なスープに細うどんのような麺料理をイメージするかもしれません。
けれどエッセイスト入江敦彦氏はこう評しています。
「京都のラーメンは日本一こってりしている」
京都のラーメンは大別すると3系統──
- 豚系の出汁をベースにした濃厚醤油ラーメン
- 鶏ガラ主体の背脂が浮きまくった背脂チャッチャ系ラーメン
- 鶏白湯ラーメン
そのいずれもがとんでもなく濃厚なのが特徴です。
なんかそれって京都らしくない! などと憤慨するなかれ。
それは雨の日に登校してきた女子高生が靴下を教室で干しているのを見て衝撃を受けたと嘆くのと同じくらい「大きなお世話」というやつです(ちなみにこの靴下のエピソードは娘から教わった実話w)。
「勝手に京都のイメージを決めつけんといておくれやす」
なんて叱られても仕方がありません。
って、ネイティブ京都人はそんなしゃべり方をせん気がしますが。
ですので「和風のすまし汁のような淡麗で薄味なスープのラーメン」を作っても「それは京都ラーメンとは言えん」と叱られるそうです。
しいて言うならそれは京都に対するイメージを具現化しただけの料理──
「京風ラーメン」と言ったところでしょうか。
過日、一泊二日の京都旅行に行って来てどっぷりと古都の雰囲気に浸かった勢いでこんなラーメンを作ってみました。
これはまさしく「京風ラーメン」なんでしょうね。
【材料】(1人分)
-調理時間:18分-
- 棒ラーメン:60g
- 椎茸:1本
- 人参:1cm
- 大葉の千切り:1枚
[スープパート]
- 水:300g(カップ1.5)
- 昆布出汁の素:小匙1/2
- 蕎麦の返しまたはめんつゆ:大匙1
- 鶏がらスープの素:小匙1
【作り方】
- 椎茸は軸を切り離してスライスします。軸も石突を切り落としてスライスします。これらと[スープパート]を小鍋に合わせて強火にかけ1分加熱します。蓋を取ってごく弱火にし10分かけてゆっくり加熱します。10分経過したら[スープパート]の残りを加えて中火にかけ煮立つ寸前に火を止めます。
- 1.を待っている間に大葉は千切りにします。人参を細切りにして1.に加えます。
- 1.の工程が終わったら麺を茹でる湯(分量外)を沸かして麺を茹でます。1.の小鍋は蓋をしてそのまま弱火にかけ人参が柔らかくなるまで煮ます。
- 茹で上がった麺を湯切し丼に入れます。これに3.のスープを注いで大葉をトッピングすればできあがり。
【一口メモ】
- 京都をイメージして純和風でちょっと薄味なスープに仕上げました。はんなりと優しい味で最後の一滴まで飲めます。
- 京都のご当地ラーメンはこれとは真逆で濃厚味のスープがウリです。懐石料理のようなラーメンを期待したらショックを受けるので暖簾をくぐるときはご覚悟をw
- おばんざいをイメージしたので具材は野菜のみにしています。ただ「肉がないと寂しい」という方は普通に叉焼やハムを入れちゃってください。
- お好みで柚子胡椒を食べる時に加えると味が変わってまた楽しいですよ。