インスタグラムが登場して料理の写真映え──いわゆる"インスタ映え"がもてはやされた頃、「食べ物で遊ぶな」という言説をよく耳にしました。
確かにせっかく美味しく調理した料理を台無しにするような振舞をすればそう言われても仕方がないと思うのですが盛り付けに工夫をするのも非難されるようなことなのかしらんと僕はちょっと懐疑的に思ったものです。
料理の盛り付けで見た目のインパクトを狙うというのは何も新しいことではなく江戸の昔から盛んに使われた技法で「何をいまさら」という気もしたんですよね。
例えば握り寿司の原型はおにぎりですが、色鮮やかな刺身がむき出しに載っている方が旨そうに見えると考えた人があの形にしました。
太平洋戦争開戦の頃にはそれが更に進化して軍艦巻きが考案されましたが、あれも最初はうるさ方から「あんなものは寿司ではない」ときついお叱りがあったとか。
ソフトクリーム、綿菓子、飴細工などはどれも突き詰めれば別にあの形でなくても味に変わりはありません。
けれど、あの形は子供たちの"食べてみたい"という好奇心をすこぶる刺激するのです。
そう、あれらは「遊んでいる」のではなく「遊び心」のなせる業だと思うのです。
別に食べ物を粗末にしているわけでないし良いじゃんと思ってしまうな。
ひとつ屁理屈を言わせてもらえば、熟したトマトを投げ合うスペインのトマト祭りや豆を手一杯に握って撒く日本の節分の方が風習を知らない人からしたらよほど食べ物を粗末にしているように見えるでしょう。
そういった盛り付け同様に料理を伝統的な味付けから敢えて逸脱させて全く違うジャンルのテイストにしてしまうという"遊び"も21世紀の料理の世界ではよくあることです。
回転寿司屋に行くとハンバーグやサラダやイベリコ豚などが載ったどこの国の料理かわからないような握り寿司が回っていたりします。
あれも敢えて目くじらを立てるのではなく"面白い"と感じてその遊びに乗っかった方がずっと楽しいと思うんですよね。
僕は炒飯が好きでよくランチに作るのですがいつもいつも中華テイストのオーソドックスなものばかり作っているわけではありません。
スパイスを利かせたインド風カレー炒飯にする時もあれば、ケイジャンスパイスを使ってアメリカ南部風のチキン炒飯なんてのを作ることもあります。
それだって伝統的な炒飯をイジっているわけではなく炒飯にはもっといろいろなものに化ける可能性があると考えて模索しているのです。
この炒飯を作った日はちょうどイタリアンが食べたい気分だったのでご飯をパスタになぞらえてこんな風に仕立ててみました。
しつこいようですが、これも食べ物で遊んでいるわけではなく、遊び心のなせる業なのですよ。
【材料】(1人分)
-調理時間:8分-
- ご飯:1膳分
- 卵:1個
- ベーコン:30g
- 玉ねぎ:1/4個
- にんにく:ひとかけ
- 鷹の爪:半本
- オリーブオイル:12g(大さじ1)
- 塩:2g(小さじ1/3)
- ブラックペッパー:適宜
【作り方】
- 卵はよく溶いておきます。ベーコンは5mm幅の小口切りにします。玉ねぎ、にんにくはみじん切りにします。鷹の爪は種を取って小口切りにします。
- 中華鍋かフライパンにオリーブオイルを入れて強火にかけ、煙がうっすら立つ程度に加熱します。これに卵を入れてざっとかき混ぜご飯を加えて卵と和えながらパラパラになるまで炒めます。これを一旦皿に取ります。
- 2.ににんにくと鷹の爪を入れて弱めの中火にかけ香りが立つまで炒めます。これにベーコン、玉ねぎを加えて中火にして炒め、玉ねぎが透明になるまで炒めます。
- 3.に2.のご飯と塩を加えて味が均等になるようによく和えます。ブラックペッパーを振ってざっと混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- 食欲をそそるにんにくの香りと鷹の爪のピリッとした辛さが際立っています。見た目はただの炒飯ですが味はまさにペペロンチーノ。これは洋食の範疇に入るご飯ものだと思います。
- 手順3.でにんにく、鷹の爪を投入する際は一旦火力を下げてください。にんにくは中華料理でよくやるように焦がすのではなく、淡いきつね色になる程度に炒めてすぐに残りの具材を加えるのがコツです。
- 味付けはシンプルに塩を使っていますがより中華料理に寄せるなら袋入りラーメン(塩味)の粉末スープを半袋ほど使うとぐっと味が複雑になってまた楽しいですよ。