美味しんぼの人気エピソードに"トンカツ慕情"というのがあります。
不良にカツアゲされて給料日に文無しになった学生に同情したトンカツ屋の主人がトンカツを奢ってあげる人情噺、その学生が卒業後、渡米して事業に成功して久しぶりに帰国したらそのトンカツ屋がなくなっていて……といった風に物語は進みます。
「勉強してえらくなって頂戴よ」
トンカツを食べる学生に店の奥さんが発破をかけるのですが主人は少し否定的。
「なあに人間そんなにえらくなるこたあねえ。ちょうどいいってものがあらあ。」
と奥さんを嗜めておいてこう諭すのです。
「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるくらいになりなよ。それが、人間えら過ぎもしない貧乏過ぎもしない、ちょうどいいくらいってとこなんだ。」
このセリフが特に大人気でこれをもじったセリフがネットでは氾濫していて大喜利状態。
なかでも奮ってるなぁと僕が思ったのはこれです。
「いいかい学生さん、トンカツをな、トンカツをいつでも食えるぐらいの経済力がつくころにはトンカツみたいな重たいものは食えなくなってた…。」
いや、まったくおっしゃる通りで。
過日、40歳になったばかりの年下の知人とおしゃべりする機会があったのですが娘と焼肉屋などでデートしていると話すと羨ましがられました。
「けどねぇ、焼肉みたいな重いものはあんまり食べられなくなってねぇ」と僕が言うと興味津々で「いつ頃から食べられなくなりましたか?」なんて訊かれましたっけ。
彼はまだまだ食欲旺盛で焼肉ならいくらでも食べられると豪語。
羨ましい限りです。
彼に言われて改めていつ頃から重いものが食べられなくなったのか振り返ってみたのですが……。
正直、いつからという記憶はあまりありません。
ただ、「今日は食欲がないな」と思っても「昨夜飲み過ぎたからか」なんて思っていたのが、
「お代わりを……。や、もうこれで止めとくか」とか
「あと、もう一杯……。いや、もうここまでにしよう。大将、お勘定」
なんて考えることが多くなって、いつのまにやら焼肉も一口目は美味しいんだけど、二口、三口と箸を進めるとなんかもういいやと思うようになってしまっていたという。
ま、誰もが通る道だと思うのであまり悩んだりしたことはないのですが。
その分、野菜の煮つけや漬物などシブいお惣菜を美味しく感じるようになりましたね。
それでもたまにはお肉が食べたくなる日もあります。
けど、分厚いかつ丼などは想像しただけで胃が重たくなっちゃう。
そんな葛藤を解決してくれるライトな丼物はないものかといろいろ模索したひとつの帰結がこの料理だったりします。
肉は薄めでご飯もソースも酸味が利いてさっぱり。
お肉を重たく感じる年頃のおじさん世代だけでなく、まだ小さい子供さんにもおすすめの1杯ですよ。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- ご飯:1膳分
- 豚ロース生姜焼き用:100g
- 揚げ油:48g(大さじ4)
- キャベツ:3枚
- オリーブオイル:4g(小さじ1)
- 水:30g(大さじ2)
[豚肉の下味パート]
- 塩、ブラックペッパー:少々
- 薄力粉:小さじ1/2
- [衣パート]
- マヨネーズ:6g(大さじ1/2)+水5g(小さじ1)
- パン粉:適宜
[即席ザワークラウトパート]
- すし酢:10g(小さじ2)
- 塩:ひとつまみ
- 粒マスタード:小さじ1/2
[ソースパート]
- トマト缶(ダイスカット):100g(約1/4缶)
- おろしにんにく:ひとかけ分
- 塩(できればクレイジーソルト):1g
- コンソメの素(顆粒):2g
- 粒マスタード:小さじ1/2
- 白ワイン:15g(大匙1)
- レモン汁:10g(小さじ2)
- バルサミコ酢:5g(小さじ1)
【作り方】
- フライパンに揚げ油を張って強火で1分半温めます。待っている間に豚肉は横半分に切って[豚肉の下味パート]をまぶします。さらに[衣パート]をまぶして揚げ油が温まったら入れて揚げます。片面1分半、ひっくり返して更に1分半揚げ焼きにしたら豚肉を引き上げます。揚げ焼きをしている間にキャベツは千切りにします。
- 1.の揚げ油を片付けてフライパンは洗わずにそのまま弱火にかけます。これにキャベツを加えて焦がさないよう注意しながらしんなりするまで炒めます。これに[即席ザワークラウトパート]を加えて水気がなくなるまで炒めれば即席のザワークラウトの完成。これを一旦、別皿に取ります。
- 2.のフライパンを洗わずに[ソースパート]を加えて中火にかけ1分煮込んで火を止めます。
- 丼にご飯をよそって2.のザワークラウトを加えてよく混ぜます。その上に1.のカツレツを盛り付け3.のソースをトッピングすればできがり。
【一口メモ】
- 洋風の寿司飯のようなザワークラウトご飯にシュニッツェル風に揚げ焼きしたカツレツが良く合います。かつ丼に比べると肉の厚みも薄めでライト。軽めのランチにしたい時におすすめの一杯です。かつ丼がまだ食べ切れないお子さんにもぴったりですよ。
- ライスとソースに酸味を利かせることでメインの具材であるカツレツとバランスを取っています。揚げ物を食べるとさっぱりしたものが食べたくなる。すっぱいものを食べるとまた揚げ物が欲しくなる。結果、ライス、カツレツ、ソースの無限ループが完成し、いくらでも箸が進みますよ。
- [ソースパート]のバルサミコ酢はワインビネガーに置き換えてもOK。両方とも手持ちがなければお酢を使っても問題ありません。