昭和の昔、家庭の食卓には醤油さしが置いてあった──そう言われると微かな記憶ですがあったような気がします。
もちろん家庭によってまちまちだったと思います。
調味料が全くないすっきりしたテーブルのお宅もあったでしょう。
逆に醤油にとどまらず、ソース、塩、マヨネーズ、味の素などなどがずらっと食卓に並べてあったお宅もあったのじゃないかしらん。
で、そういう家庭には何にでも醤油をかけたがる家族がいたんじゃないかしらん。
目玉焼きに醤油、カレーライスに醤油、ハンバーグやステーキにも醤油。
中には塩鮭やお漬物にまで醤油をかけたがる人がいるというのを風の噂に聞いたことがあります。
いや、さすがに塩鮭に醤油は……
想像しただけで口の中が塩っ辛くなるのですが。
けどそういった嗜好の人たちを安易に「味音痴」の一言で片づけるのはいかがなものかとも思うのです。
例えば昭和の喫茶店で出されていたカレーは小麦粉と油脂でとろみを付けているだけでコクが希薄だった覚えがあります。
一口食べてみて「なんか一味足りない」と考えた人が醤油を少し垂らして風味を強化していたのだとしたらそれはむしろ味音痴などではなく味に敏感な人たちだったのかもしれません。
その癖が未だに抜けずカレーを見ると条件反射的に醤油をかけたくなったとしても誰がその人を責められましょうか。
ただイマドキの渾身の本格派カレーハウスで店の人に「醤油ください」なんて言ったらヤな顔をされるのは必至。
下手したら出禁ものではあるのですがw
昭和の頃、特に洋食の調理技術は発展途上で市井の飲食店にまで十分な情報が伝わっていなかった節があります。
なので「なんか残念な感じ」と思える料理が出てくることもあったんじゃないかな。
そういった時「テーブルの上にある調味料をご自由にお使いください」というサービスはとても嬉しかったんじゃないかと思うのです。
今は逆に情報が行き届き過ぎて素人が家で作った料理でさえ侮れない味のものがあります。
ましてやお店で出される料理が「残念な感じ」──なんて機会はぐっと減ってしまいました(って、「機会」と呼んで良いのか(笑))。
なら残念な料理の風味を強化するために醤油を後足しする意味はなくなったかというと一概にそうとも言えないんですね。
『洋食に醤油や味噌を少量加えると風味が複雑になる』
というのは紛う方なき真理です。
で、欧米の食文化に培われた料理人には出てこない発想なので店のオリジナリティを出すためソースの隠し味に和風の調味料を使う料理人は多くいるのです。
【材料】(1人分)
-調理時間:2分-
- 酒:15g(大匙1)
- トマトケチャップ:15g(大匙1)
- 味噌:12g(小匙2)
- 味醂:6g(小匙1)
- (お好みで)一味唐辛子:少々
【作り方】
- 冷たいフライパンに全ての材料を合わせます。これを弱めの中火にかけて水気がほぼなくなるまで煮詰めればできあがり。特に肉料理のソースとしておススメです。
【一口メモ】
- トマトの味が前面に出て来るので言われなければ味噌を使っているとわからないかもしれません。それでいて明らかにトマトケチャップより風味が数段複雑で旨味も増している。なんかちょっとプロっぽい味付けが演出できますよ。
- 洋食全般に使えるソースですが特におススメは肉料理。あと、温野菜のサラダにかけても美味しいです。
- このレシピは使い切り前提の少ない分量で組み立てているのでトマトケチャップを使っています。たくさん作って作り置きをする場合はトマトまたはトマト缶を使うと風味がより鮮烈になるのでおススメです。その場合はバターでトマトを炒めてから残りの材料を加え更に味を見ながら粒マスタード、蜂蜜をプラスしてください。