「いらっしゃい。タンとハツならもう焼けてるよ」
高橋留美子原作の1ポンドの福音がOVA化された際の作中のセリフです。
主人公は若手ボクサー。
実力はあるのについつい食べ物の誘惑に負けて減量に失敗してしまう筋金入りの根性なし。
そんな彼が教会のシスター見習いに一目ぼれして……といったお話です。
で、今日も今日とてランニング中に見かけた屋台の串焼き屋にふらふらと寄って行ってしまいそれを見た屋台の主人に「タンとハツならもう焼けてるよ」なんて声をかけられてしまう始末。
特段重要なシーンではないのですがなぜかこのセリフが耳について同作を鑑賞してから40年近くが経つというのに記憶に残っております。
タンというのは舌のことだよな──牛タンの串焼きかな。
けどハツってなんだろう。
食べたことないけど美味しいのかな。
このセリフを覚えていた理由はまだ見ぬ「ハツ」という食べ物──おそらくは肉の部位──に興味を惹かれたからかもしれません。
件のハツが心臓を指す言葉で英語のhearts(ハーツ)が縮まった呼び名だと知ったのはもう少し後のことだったと思います。
機会を得て鶏のハツを食べてみましたが噛み応えがあって美味しかったな。
それ以外にも焼肉屋で牛や豚のハツも戴きましたし、変わった体験としては鮪のハツを戴いたこともあります。
あれは天満の日本酒バーで飲んでいた時のこと。
隣に座った巨体のおじさんが本職の漁師さんでその日獲った鮪の心臓を持ち込まれていて板前さんが刺身に捌いたのをお相伴にあずかったのでした。
塩とごま油に浸けて頂いたのですがあれも美味しかった。
そして多分一生で一度の体験になるんじゃないかな。
今後とも鮪の心臓を刺身で食べるなんていう機会はそうそうやって来ないでしょう。
お店で食べて美味しかったものは自分でも作ってみたくなるのが料理好きの性。
スーパーではなかなか見かけませんが鶏肉専門の精肉店でハツを見つけて購入。
見よう見まねで焼いてみたのですがイマイチ味が気に入らない。
爾来、思い出したようにハツを買って帰っては挑戦しているのですがなかなか思うような味にならない。
で、過日少し視点を変えて洋風にこんな料理を作ってみました。
まだまだ進化する気がするのですが今まで作った中では一番美味しかったのでレシピをメモしておきます。
【材料】(1人分)
-調理時間:7分-
- 鶏ハツ(心臓):100g
- 白ネギ(緑色の部分):10cm
- サラダ油:4g(小匙1)
- レモン果汁:10g(小匙2)
[調味料パート]
- 有塩バター:10g
- 塩:1g(小匙1/6)
- おろしにんにく:ひとかけ分
- ホワイトペッパー:少々
【作り方】
- 鶏ハツは半分に切り断面を見て血の塊があれば包丁の刃先で取り除きます。白ネギは縦半分に切って更に千切りにします。
- 中華鍋かフライパンにサラダ油を入れて強火にかけます。鶏ハツを加えて色が変わり始めたら白ネギを加え白ネギがしんなりするまで炒めます。
- 2.に[調味料パート]を加えて強火で1分炒めます。仕上げにレモン果汁を加えてさっと炒めればできあがり。
【一口メモ】
- バターの濃厚な風味とにんにくの刺激的な香り。ガリバタ風味はやっぱり鉄板です。打ち明けてしまうと別に鶏のハツじゃなくても美味しいやつじゃんという気がしないでもないのですが美味しいことは間違いなし。
- 鶏のハツはわりと小さい部位なのでちまちまと箸でつまんで食べることになります。お惣菜としても美味しいけどやっぱりおつまみ向けかな。
- 鶏ハツは血合いさえ取ってしまえば血抜き等の下処理なしですぐに調理できます。お酒を飲んでいて口寂しくなった時など手早くパパっと作れてしまうところが嬉しいですね。
- よりスパイシーにしたい場合はホワイトペッパーを粗挽きブラックペッパーに変えてみてください。