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厨房日誌

祭りの行方

「東京オリンピック中止か、新型肺炎対策でIOCとWHOが協議」なんてニュースをツイッターで見かけました。けど、何の感慨もわかないんですよね。

スポーツが苦手で元々僕がオリンピックという祭りに興味を持てていなかったからというのもあると思います。

けど、それ以上に当事者意識が持てないというか、今回のオリンピックが「みんなで力を合わせて作りあげてきた祭り」って言う実感が湧いてこないのです。どこかで誰かが何かやってるらしいみたいな感慨しかないんですよね。

あくまで個人的な実感ですけど。祭りといえばもっとこう……

1983年、僕が大学生になった時、それまでの高校生活とは明確に違うなと感じたことはたくさんあったのですが、その中の1つが自治でした。

高校までは部活動をするにしても顧問の先生──つまり大人のお目付け役がいていろいろ指導して下さったのですが、大学のサークルでは自分たちでなんとかしなさいというスタンス。ま、考えてみれば先輩方は二十歳を過ぎたいい大人ですし、自分もすぐに二十歳を過ぎる。

 

当たり前といえば当たり前なのですが、良い意味で自己責任をもって行動することを任してもらえていました。

学園祭なども良い意味での乱痴気騒ぎが許容されていて、ま、高校と違っておおっぴらに酒も飲めますからさまざまな狼藉もあったわけです。24時間朝まで騒げましたしね。学食の店先から味噌汁の食品サンプルを引っ張り出して売り歩く先輩がいたし(しかもタチの悪いことに別の先輩の名を騙って売り歩くし^_^;)草葉の陰で睦み合う女子2人がいたし(ドキドキ)酔っ払って包丁を使うからなんか血が混じったようなサンドイッチを模擬店の商品として出すコックがいたし(あ、これ自分だ^_^;)起きたら飲んで眠くなったら寝る3日間を過ごしたものです。

祭りのあとは言いようのない虚無感と倦怠感があたりに漂っていました。

けど、痛快だったな、馬鹿やったよなと今振り返っても思います。

けどね、そうやって笑えるのは狼藉には狼藉なりのルールがあったからこそなのです。あとから振り返ってやらなきゃよかったと思うような馬鹿はやらなかった。

ましてや犯罪まがいのことをやる馬鹿はいなかった。

なぜならそれが自治だから。自治というのは自制でもあったのです。僕が卒業して数年後、風の噂で車に火をかけたやつがいるという話を聞きました。その結果当局も看過できなくて学祭は夜の○時まで、それ以降は学生も追い出されて学校は封鎖されることになったとか。

僕もそうでしたが、その馬鹿な後輩を心の中で罵った諸先輩や同輩は大勢いた事でしょう。今では母校の学園祭はどんな感じなのだろうかとか、数年前、渋谷のハロウィンの馬鹿騒ぎのニュースを見た時にふとそんなことを思い出しました。

昭和のゆるい時代に学生時代を過ごした僕らから見ればずいぶんとおとなしやかな祭りに変貌しているのかもしれませんね。

日本のハロウィンについても僕はどちらかというと肯定的な意見を持っています。

元来、日本人は外国の祭事を変節させて全く違う祭りを作り上げることに長けていると僕は思っています。だから、「そもそもハロウィンとは」なんて野暮なことを言うつもりも全くありません。

けどね、祭りは参加している人だけじゃなくてそれを見に来た人も楽しめるものであるべきでしょ。

工夫を凝らしたコスプレの集団が何百、何千、何万と練り歩く光景は圧巻です。そういうふうな祭りに発展する可能性をハロウィンは秘めていたはずなのです。

それが一部の不心得な酔漢のせいで傍から見て楽しめるものになっていないのはなんとも残念。

当局が規制を加えるのも致し方なしとは思います。

それでも、今からでも、本当の意味での自治を取り戻して、参加した人もそれを見る人も楽しめるそんな祭りに変貌していってくれないかなと願ってやみません。で、話は振り出しに戻ります。

いろいろ物議を醸し出す一面はあるにせよ日本のハロウィンには熱狂があります。

それはかつて僕が大学の学園祭で体感した熱狂と相通じる熱狂です。

『当事者意識』

誰に強制されたわけでもなく自分達がやりたいからやるという熱情。

今年開催される東京オリンピックに今、一番必要なのはそれじゃないかな。それを持つことができれば「なんとかして中止は回避できないものか」という機運は盛り上がるでしょうし、持てなければ中止されても「あ、そう」で終わるような気がします。

ツイッターのどこか冷めたような呟きを斜め読みしながらそんなことを考えました。

3兆円かけた祭りが渋谷のハロウィンより盛り上がらないって、やっぱり切ないじゃないですか^_^;

2020/01/30 Thu.

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