2017年夏アニメ、アクションヒロインチアフルーツの最終回はなかなか感動的でした。
とてつもない厄を背負い、自分が参加する試合、舞台ことごとくで大コケするジンクスを持つチームのキャップがひっそりと身を引いて舞台から降りてしまうところからスタート。それをメンバーがアドリブの応酬で無理やり舞台に引きずり上げるという強引で危険だけど熱い展開になりました。
ネットのコメントでは、「みんなアドリブ力あり過ぎ」なんてコメントがちらほら。けどね、舞台に立っていた人間として言わせてもらいますとアドリブ力なんてものは存在しないのですよ。
アドリブの本質は引き出しです。一度もやったことがないことをぶっつけ本番でやってみるなんてまず無理。持ってる引き出しを開け閉めして適切な演技を引っ張り出しているのです。
アドリブ力と呼ぶものがあるとすれば、それは引き出しの多さとそこから適切な演技を一瞬で選び出して一瞬で引っ張り出せる瞬発力のことを指すのだと思います。
じゃあ、その引き出しを増やしたり、瞬発力を磨くにはどうしたら良いか?
答えは一つしかありません。ひたすら稽古を重ねること。
何千回も何万回も試行錯誤しながら稽古を繰り返すことでしか鍛えようがありません。どんな天才でもやったことがないことはできませんから。
そして、これが演劇の怖いところでもあるのです。
他者と才能の差を比べればキリがありません。自分より上のやつはごまんといます。
けどね、自分自身と比べれば、百回しかやってない自分は千回やった自分には勝てませんし、千回しかやってない自分は一万回やった自分には勝てない。それは絶対にゆるがない事実なのです。
「俺にはやっぱ才能ないんだわ」と途中で稽古を投げ出す人はまだ幸せかも。芝居にのめり込む人はそうやって自分の持てる全ての時間を稽古につぎ込んでもまだ止めないし、やり足りないと思うのです。ある意味、パチンコにのめり込むのよりずっと質が悪いのです。
けど、そうやって重ねた稽古や場数は才能をも凌駕します。天才と言われる主役を何十年も芝居をしてきたベテランの脇役が喰っちゃうなんてことも往々にしてあります。
ただ、それを「さすがベテラン」の一言で片付けるのは軽すぎる。一流と呼ばれる演者は間違いなく人知れず膨大な量の稽古や場数を踏んできていますから。
デビュー当初は大根と呼ばれていたアイドル女優がそのうち観れる演技をしだすのも、ひとえに稽古を重ねて引き出しを増やしてきたから。最初はできなくても、「あ、これはあの時やったあの演技が応用できる」って、一瞬で気づくようになるからなのです。
料理だって同じこと。今はどんなに料理が苦手でも毎日毎日、飽きもせず作っていれば半年後の自分は必ず今の自分に勝ちます。10年後の自分の前では今の自分は足元にも及ばないのは間違いありません。
2019/10/30 Wed.