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厨房日誌

失敗する演技

今日はちょっとオススメの映画の話を書きます。

ブログのタイトルが紛らわしいのですが、『演技が失敗する』ではなく『失敗する』演技です。

どういうこと? って思われるかもしれませんが、まあ聞いて下さい。

「太秦ライムライト」を観ました。名斬られ役、福本清三さん初主演作品です。

彼は元々大部屋俳優で一般に名前が知られる存在ではなかったのですが、探偵ナイトスクープで「いつも悪徳商人に「先生、お願いします」とおだてられて、ぬっと現れてはあっさり正義の味方に斬られるあの俳優さんは誰?」と取り上げられていきなり認知度がアップ。

その後、映画「ラスト・サムライ」で高く評価されすっかり有名人になっちゃいました。

で、本作のストーリーは時代劇の衰退とともに、仕事を失っていく大部屋俳優たちというテーマを軸に映画制作の現場を丹念に描いた群像劇です。タイトルから推せるようにチャップリンの「ライムライト」へのオマージュという一面もあります。

ストーリー自体はありがちと言えばありがちなのですが、普段目にすることのない時代劇制作の現場はなかなか新鮮でした。

そして何より福本さんの演技が素晴らしかった。

「五万回斬られた男」の異名を取る彼の殺陣はさすがの一言に尽きるのですが、彼がキャメラに入るだけで場面がキリッと引き締まるんですよね。

そして、それに加えて殺陣に失敗する演技が巧かった。

彼の役どころは腕に故障を抱えた老俳優で、度々肝心な場面で刀を取り落してしまうのです。

スピード感あふれる真剣勝負の殺陣の中、全く不自然さがない失敗の演技。

この人は本物の役者だなぁと舌を巻きました。

下手な役者がやると如何にも「あ、失敗した」と言った絵になるところ、全身全霊で真剣に体を動かしていて剣を取り落してしまうその様に息を呑みました。

お芝居はそれが「お芝居だ」と感じさせられた瞬間、観客は一気に冷めます。「とても、芝居とは思えない」と思わせて初めて観客はその世界に引き込まれていくのだと思います。

多くの俳優が彼を斬ること(彼と組んで芝居をしたい)を望んだという理由の一端を見せつけられた気がしました。

ヒロインの山本千尋も数々の武道大会でチャンピオンになっただけのことはある迫力のある殺陣で楽しめます。
ぜひ一度ご照覧あれとお薦めしたい映画です。

2020/03/26 Thu.

太秦ライムライト [ 福本清三 ]

 

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