何年か前の暑い夏の盛り。
何をとち狂ったのか「茶碗蒸しが食べたい!」という衝動にかられました。
衝動にかられはしたのですが脳内で熱々の茶碗蒸しをふうふう吹きながら食べている自分をイメージしたらそれだけで汗が吹き出しそうになりました。
「この季節に食べるものじゃないだろ」
と自分を宥めにかかったのですがふと思ったのです。
茶碗蒸しに似た食べ物にプリンというのがある。
けどあれは熱々をふうふう吹きながら食べやしないじゃないか。
冷蔵庫で冷やして冷たいやつを食べるじゃないか──かくして茶碗蒸しも冷やせば良いじゃんという発想に至り『冷やし茶碗蒸し』がその日の食卓に並びました。
その時代を生きていないのであくまでも想像ですが冷蔵庫が登場するまでは季節を問わずできたての温かい料理が何よりのご馳走だったような気がします。
逆に「冷たい料理=(作ってから時間が経って)冷めた料理」という固定観念が強かったんじゃないかな。
まさかその冷たい料理もキンキンに冷やすところまでいけば熱々に負けないごちそうになるなんて発想はなかっただろうなぁ。
けど、家に冷蔵庫を置くようになって作った料理をそこにしまうようになって初めて僕らはキンキンに冷えた料理の美味しさ、ありがたさが身に沁みてわかるようになりました。
特に夏場は。
変な例えですが僕が中高生だった1970年代はテレビゲームがやりたければ近所の駄菓子屋か喫茶店に行く必要がありました。
インベーダーゲームや平安京エイリアンなんてのが流行っていた時代ですね。
そのうちテレビゲームの専門店、いわゆるゲームセンターというのが登場して若者でにぎわいました。
ところが──ファミリーコンピュータの登場で状況は一変します。
1プレイするごとにお金を払っていたのが家にファミコンがあれば好きなだけ「タダで」ゲームができる時代になってしまったのです。
家庭用冷蔵庫の登場はそれと似たムーブメントを巻き起こしました。
それまではかき氷が食べたければお店に行ってお金を払って店の中で食べていた。
ところが家に冷蔵庫があれば家にいながら好きなだけ「タダで」かき氷が食べられるようになってしまったのです。
かき氷に限らずアイスクリームだってプリンだって葛餅だって自分で作って食べられるようになっちゃったのです。
その延長線上にあるのがこのレシピのような冷たいお惣菜──「冷菜」だと思うのです。
すっかり当たり前になってしまってそのありがたみを忘れてしまっておりましたがたまには冷蔵庫に手を合わせてから夕飯を戴こうかしらん。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分(冷蔵庫で冷やす時間は含めていません)-
- 鶏むね肉:200g(小ぶりなもの1枚)
- 揚げ油:適宜
[衣パート]
- マヨネーズ:6g(大匙1/2)
- 水:3g(3ml)衣の固さを確かめながら必要に応じて追い足します。
- 強力粉:3g(小匙1)
- 薄力粉:3g(小匙1)
[タレパート]
- 鷹の爪:半本
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 酢:10g(小匙2)
- 砂糖:6g(小匙2)
[タルタルソースパート]
- ゆで卵:1個
- 胡瓜:1/3本
- 玉ねぎ:1/4個
- マヨネーズ:24g(大匙2)
- トマトケチャップ:5g(小匙1)
- レモン果汁:5g(小匙1)
【作り方】
- 揚げ油を170度に温めます。待っている間に鶏肉を観音開きにします。[衣パート]を合わせて鶏肉にしっかりまぶします。
- 油が温まったら鶏肉を投入し片面2分ずつ揚げて油をよく切ります。並行して[タレパート]を合わせてよく混ぜておきます。
- 鶏肉を1.5cm幅に切り深皿に盛って上から[タレパート]を回しがけます。 ※タレを張ってその上に鶏肉を盛って漬け込むと上面が浸からないためこの手順にしています。
- 3.の粗熱が取れたら冷蔵庫で冷やします。待っている間に[タルタルソースパート]のゆで卵、胡瓜、玉ねぎをみじん切りにし残りの材料と合わせてよく混ぜてこれも冷蔵庫で冷やします。
- 3.の皿を冷蔵庫から取り出し4.をたっぷりかければできあがり。
【一口メモ】
- 甘酸っぱいタレは後から鷹の爪の辛味が押し寄せてきます。それが酸味の利いたタルタルソースとよく合う。そして何より冷たいのがもう夏のご馳走です。
- 普通、揚げ物は揚げたての熱々が身上ですが南蛮漬けだけは別。よく冷えた皿が冷蔵庫から取り出されるのを見ただけでワクワクします。
- [タルタルソースパート]の胡瓜は手持ちがあればピクルスまたはらっきょうの漬物を使ってください。風味が格段に違います。
- [タルタルソースパート]は卵1個使っているので多めにできてしまって少し余るかも。パンやクラッカーに塗ってカナッペにしても良いですがそのまま食べても良いおつまみになりますよ。