2025/07/22のブログに「茄子と海老のチリソース炒め」を書きましたが、そこに添えたエッセイで家庭に常備している調味料の歴史について書きました。
そこでまとめた歴史は江戸後期をスタートラインにしたのですが、こんな風にまとめています。
『江戸時代の東京(江戸)は男女比2:1でやたら独身男性が多い街でした。
当然、家で料理をしてくれる人はおらず(もちろん、自分も作れず)食事は屋台や荷売り屋(できあいのお惣菜を売る店)で買ってくるのが主流。
家で料理をするのはレアケース。
必然的に調味料も調理器具も必要最低限しか家にはなかったのです』
料理ができる男子がもてはやされる昨今、料理が苦手な男子の中にはこの一節に福音を得た気分になって会ったことのないご先祖様に親近感を抱いた人もいたかもしれませんね。
ただ、そんな気分に水を差して申し訳ないのですがここで書いた江戸時代の男子の"料理のできなさ加減"は"令和の料理苦手男子"のそれとは次元が違うのです。
江戸時代の自炊事情をちょっと想像してみてください。
まず、食材は基本的に野菜か乾物しかありません。
ちょっと贅沢をしても魚くらいですが、もちろん切り身など売っていないので自分で捌くしかありません。
次に、調味料は塩、味噌、酒といったところ。
江戸後期には醤油や砂糖も普及し始めていましたがまだまだ高級品、もちろん〇〇の素的な合わせ調味料などは売られていません。
そして何と言っても今と大きく違うのは調理器具。
煮炊きはかまどなのです(笑)
電子レンジもIHヒーターもガスコンロすらありません。
火を熾すのも一苦労ですが、火が安定してきても、火力を調整する機能はありません。
こんな台所事情(物理)では令和の"料理得意男子"だって手も足も出ないのじゃないでしょうか。
つまり、”令和の料理が苦手男子が会ったことのないご先祖様に親近感を抱く"というのは申し訳ないけれど限りなくおこがましい話です。
シビアな喩え方をすると甲子園常連校の野球部補欠選手に一回戦負けの常連校の補欠選手が
「あ、俺といっしょじゃん。仲間、仲間」
なんて言ってるようなものなのです。
過日、冷蔵庫のあり合わせで、こんな料理をぱぱっと作りました。
味の決め手は焼肉のタレ、これ1本。
かまどで煮炊きする時代に生まれなかった自分はなんて恵まれているんだろうとしみじみ思った次第です。
【材料】(1人分)
-調理時間:15分-
- 鶏むね肉:100g
- 茄子:1本
- 揚げ油:48g(大さじ4)
- ピーマン:1個
- 片栗粉:6g(小さじ2)
- 炒りごま:適宜
[下味パート]
- 酒:7.5g(大さじ1/2)
- 砂糖:3g(小さじ1)
[調味料パート]
- 焼肉のタレ:18g(大さじ1)
- 酒:15g(大さじ1)
- 豆板醤:3g(小さじ1)
【作り方】
- 鶏肉は1cmのそぎ切りにして[下味パート]をまぶします。さらに片栗粉を振ってまぶします。茄子はがくを取って横半分に切り、さらに6つ割りまたは8つ割りにします。ピーマンはヘタと種を取って1cm幅の細切りにします。
- フライパンに揚げ油を張って中火にかけ、1分半温めます。これに茄子を加えて1分半素揚げし、引き上げます。
- 2.のフライパンに今度は鶏肉を重ならないように加えて中火で1分揚げ焼きにします。ひっくり返してさらに1分揚げ焼きしたら引き上げます。油はオイルストッカーにしまいます。
- 3.のフライパンを洗わずにそのまま使います。[調味料パート]を入れて中火にかけます。ふつふつと煮立ってきたらピーマンを入れて10秒炒めます。さらに茄子、鶏むね肉を加えて[調味料パート]を全体に絡めながら、水気がほぼなくなるまで炒めます。これを皿に盛って炒りごまを振ればできあがり。
【一口メモ】
- 「焼き肉はお肉もさることながら焼肉のタレの味が好きなんだ」派の人にとっては夢のような1皿です。これ1本で味が決まるという調味料がある時代に生まれたことを謳歌してください。
- 僕は辛口が好きなので[調味料パート]
- に豆板醤を加えていますが苦手な人は抜いてください。
- このレシピはアジアンテイストの炒め物のテンプレートになります。[調味料パート]
- を据え置きにして具材は自由自在、冷蔵庫の中身と相談しながらいろいろ作ってみてください。