坂田靖子の名作漫画に「村野」という短編がありました。
時は明治30年代。主人公の家に高等学校の悪友たちがお年賀に来る話です。
彼女の作品の持ち味は軽妙ながら斜め上の発想が絶妙な「笑い」で、本作も全編コメディタッチで進行するのですが、最後の最後に背中がしんと冷えるような終わり方が待っています。
その展開も自然で無理矢理感がなく、フィニッシュストロークのお手本のような一編でした。
作中のエピソードで悪友のひとりが牛肉のかたまりを持ち込んできて、「よし、牛鍋をやろう」という話になるのですが、スライスするととんでもない量になっちゃった。
で、いざ鍋を始めると肉ばかりでネギが圧倒的に少ない。「お前は肉を食ってろ。ネギは俺のもんだ」なんてセリフが飛び出してネギを奪い合う珍妙な鍋風景が展開されていました。
よくこんな話を思いつくな(^^;肉に限らず食材は細かく切れば食べ応えが増します。
昔の人はそうやって高い食材を賢く堪能していたのですね。うざくもそういった料理のひとつ。
うなぎは高くて少ししか買えなくてもこうやって調理すれば立派な小鉢料理になるのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:35分-
- さんまの蒲焼(缶詰):1缶
- 酒:10g(小匙2)
- きゅうり:1本
- 塩:少々
- 生姜:スライス1枚
- [漬け汁パート] だし汁:30g(大匙2)
- 酢:30g(大匙2)
- 濃口醤油:12g(小匙2)
- 味醂:12g(小匙2)
【作り方】
- きゅうりは5mm厚の斜め切りにし塩少々を加えて塩もみします。生姜は細切りにします。 ※きゅうりは丸のまま塩もみするのではなく斜め切りにしてから塩もみした方がうなぎとの絡みが良くなります。
- ボウルに[漬け汁パート]を合わせて1.を加えよく和えます。これを小鉢に取り分けて冷蔵庫で30分冷やします。
- 2.の冷やす工程がもうすぐ終わる頃合いを見計らってさんまの蒲焼を耐熱皿に入れ、酒10gを振ってラップにかけます(串でラップに2、3箇所穴を開けます)。これを電子レンジに入れて600ワットで1分半チンします。
- 3.の蒲焼きを1cm幅の短冊に切ります(熱いので注意)。冷蔵庫から小鉢を取り出して熱々の蒲焼きを盛り付ければできあがり。
【一口メモ】
- 三杯酢のさっぱりした風味が蒲焼きの甘辛い味によく合っています。きゅうりの青臭さとシャキシャキした食感が料理の清涼感を更に盛り上げてくれる。演出の利いた小鉢だなと感心することしきり。
- お好みで粉山椒を振ると涼味が増します。
- さんまの蒲焼は缶詰ではなくスーパーなどで売られているパックのものを使ってください。近頃は「鰻屋さんが焼いたさんまの蒲焼」なんて商品もあります。これを使うと味のグレードが格段に上がります。
- 更に上を目指すのであればさんまを開いて自分で焼きましょう。タレの配合は醤油:酒:味醂:砂糖が1:1:1:1というのが基本です。1尾分なら小匙2×4といったところです。