僕の母方の母方の曾祖母(言い回しがややこしいなw)は長命で僕が中学2年生になった年に亡くなりました。
生まれがほぼ江戸時代にかかるような人だったな。
若い頃は火を振るような激しい気性の方で周囲から恐れられていたそうなのですが僕の記憶にある彼女は穏やかなお婆さんで、田舎からうちに遊びに来られた時などはよくボードゲームなどで遊んでもらいました。
とても頭の切れる方で一度も勝たせてもらった覚えがないのですが見方を変えれば勝負事には子供相手でも容赦がない大人げない一面もあったなと今にして思います(笑)
血筋なのか彼女も無類の酒好きで特に日本酒を好まれましたがお年もお年なので「柳陰(やなぎかげ)」というのをよく飲まれていました。
うちの実家ではなぜか訛って「やなぎがけ」と呼ばれていましたが要はお酒を味醂で割って飲みやすくした一種のカクテルです。
ネットで調べると焼酎と味醂を1:1で混ぜるというレシピをよく見かけますが曾祖母はこれを日本酒と味醂でやっておりました。
酒の味をまだ知らない子供の頃の話なので僕には想像だにできませんでしたが旨そうに飲む彼女を見るにつけちょっと飲んでみたいなんて思ったものです。
今では調味料としてしか使われなくなっちゃいましたが江戸時代、味醂は日本酒などと同様にアルコール飲料の一種で「飲むもの」だったようです。
日本酒よりもアルコール度数が低く甘みがあったので下戸でも飲みやすいと評判だったとか。
今で言えば缶酎ハイみたいなポジションだったのかな。
ただ酒より値が張ったそうなので羨望のまなざしを向けられる高級アルコール飲料だったのかもしれません。
──味醂はただ飲むだけではもったいない。
これを使えば料理の幅はもっと広がる──そう気づいた料理人がいたのでしょう。
江戸末期頃から味醂は調味料としても使われるようになりました。
鰻の蒲焼きのタレや蕎麦つゆに味醂を使うと醤油オンリーのただ辛いだけだった味に甘みとコクがプラスされることに気付いたその料理人はまさしく天才だったのだと思います。
開いた魚を醤油に漬け込んで干せば日持ちするという技法は古くからありましたがこの漬け汁に味醂を加える味醂干しの技法が完成したのはそれよりもずっと後、太平洋戦争後のことで最初に作られたのは秋刀魚の味醂干しだったそうです。
今となっては味醂をアルコール飲料として飲もうという人はいなくなってしまってもっぱら料理の味付けや漬けダレなど調味料として使われるばかりですが、過日この料理を作りながらふとその味醂で作ったカクテルを旨そうに飲んでいた曾祖母のことを思い出しました。
【材料】(2人分)
-調理時間:一晩+20分-
- 鮭:2切れ
- 塩:1g(小匙1/6)
- サラダ油:適宜
[漬けダレパート]
- 味醂:27g(大匙1.5)
- 濃口醤油:9g(大匙1/2)
【作り方】
- 鮭を半分に切ってバットに並べて塩をまぶします。そのまま冷蔵庫で10分休ませます。
- 1.の水気をキッチンペーパーでふき取りジップロックに入れて[漬けダレパート]を加えて空気を抜いて冷蔵庫で一晩漬けこみます。 ※ジップロックの端にストローを挿してジッパーを閉じストローから中の空気を吸いだすときちんと空気が抜けます。簡易版真空パックですね。
- 2.をジップロックから取り出して水気を切り焼き網に載せます。表面に薄くサラダ油を塗ってグリルで7~8分ほど焼いて両面にこんがり焼き色を付ければできあがり。 ※焦げやすいので時々グリルから取り出して焼き色を見ながら仕上げてください。
【一口メモ】
- ほんのり甘みを帯びた醤油辛さはごはんに良く合います。夕飯のおかずにもぴったりですが、冷めても美味しいのでお弁当のおかずにも向いていますよ。
- 時間は少々かかりますが漬け込んだら後はほったらかしなので手間は大してかかりません。できれば多めに漬け込んで冷蔵庫で保存しておけば後は焼くだけなので良い常備菜になります。1週間程度は保存が利きますよ。
- 焼きあがった鮭にレモンを絞るとさっぱりして美味しいです。お好みでどうぞ。
- [漬けダレパート]に砂糖を3g(小匙1)ほど加えると甘めの味付けになるのでこちらの方が子供には喜ばれるかも。あと、醤油をポン酢醤油に置き換えれば柚庵焼き風のテイストにすることもできます。