江戸時代の後半、江戸庶民の食生活はわりと外食と中食(料理を買って帰って家で食べる)中心だったみたいです。
理由はいくつかありますが、ひとつは独身が多かった。
男女比2:1というちょっと異常な比率で生涯独身の男性が多かった。
今みたいにコンロをはじめとする便利な調理器具があるわけじゃなし、食材を買って帰って家で作るなんてことはまずない。
加えて出稼ぎ者が多かった。
農繁期になれば郷里に戻るわけですから余分な道具は持てないわけでますます家で料理をするという選択肢はなくなっていったわけです。
ということで、料理屋や煮売屋と呼ばれる今の駅ナカみたいに出来合いの料理をお持ち帰り用に売る店がたいそう繁盛したそうです。
江戸は文政年間に上方から出てきて料理屋を始めた女料理人の活躍を描いた「みをつくし料理帖」にもそういった庶民の暮らしがふんだんに描かれています。
そんなエピソードのひとつに放火に遭って店を喪った彼女が屋台から心機一転商売を始めた際に今日の料理を出す場面があります。
木枯らしが吹く中、酒粕をたっぷり使った汁物は別に小腹が空いていなくてもついつい「ひとつくんない」と言いたくなる一品だったでしょうね。
【材料】(4人分)
-調理時間:20分(昆布や干し椎茸を水に浸ける時間は含めていません)-
- 酒粕:100g
- 鮭のアラ(または塩鮭):一切れ分くらい
- 大根:3cmほど
- 人参:3cmほど
- ごぼう:半本
- 干し椎茸:2枚
- 薄揚げ:半丁
- 刻みネギ:10cm分
- 味噌:36g~45g(大匙2~2.5)
- 昆布:3cm角
- 水:650ml(3カップと1/4)
- ぬるま湯(酒粕戻し用):100ml(0.5カップ)
【作り方】
- 昆布は料理バサミで細かくひだを入れます。干し椎茸と昆布を650mlの水に1時間浸けて戻します。 ※できれば冷蔵庫に入れて低温で戻すと椎茸の乾物臭さが抜けます。お急ぎの時はぬるま湯に浸けると早く戻ります。
- 酒粕を細かくちぎってぬるま湯に入れ泡立て器などを使ってよく溶いておきます。 ※工程1、2はちょっと時間がかかるので早めに仕込むと吉です。
- 大根の下茹で用の湯を沸かします。
- 3.をやっている間に大根はかつらに剥いていちょう切りにします。鮭、人参、ごぼうも食べ易い大きさに切ります。薄揚げは熱湯をかけて湯通しをして小口切りにします。
- 大根、人参を3.に入れて10分下茹でします。
- 1.から椎茸を抜いて鍋にかけます。湯を沸かしている間に椎茸を細切りにします。沸騰寸前に昆布を抜いて野菜類を加え(椎茸を含む)、蓋をして2、3分煮ます。
- 6.に鮭と薄揚げを加えて更に3分煮ます。
- 7.に味を見ながら味噌を少しずつ加えていきます。 ※塩鮭を使う場合は特に塩加減にばらつきがありますので味を見ながら「ちょっともの足りない」ところで止めて下さい。煮詰まると味は濃くなります。
- 8.に2.を加えてよく混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- じんわり体が温まります。寒い夜には特にお薦め。究極に美味しい食べ方は熱々のお椀を持って木枯らしの吹くベランダに出て食べること。がたがた体を震わせながら冬のごちそうを楽しんで下さい。
- この料理は段取りの良し悪しでかかる時間が大きく違ってきます。工程1、2は仕込めばほったらかしですのでお昼間にやっておいて下さい。あと、材料を切るのは鍋を火にかけてからを心がけましょう。沸くのを待つ間に済ませられます。
- 面倒なので僕はやりませんが、工程9で酒粕を加える際に裏ごすと食感がなめらかになります。
- 一種の鍋料理ですので具材はお好みかつありあわせでどうぞ。