僕の本業であるシステムエンジニアという仕事は他の職業では得難い経験を得ることが往々にしてあります。
その最たるものは異業種の現場に触れることかな。
どんなに古風な職業でも今時、コンピュータを導入していない会社はありませんので実にいろいろな業界の会社に出向くのです。
で、外からではわからない現場の雰囲気や働く人のご苦労を間近で見ることができます。
それだけでなく、ちょっとした役得もあったりして……。
2001年を過ぎて世紀が新しくなったばかりの頃、京都は伏見にある日本酒の蔵元を担当したことがあります。
年の瀬も押し迫った頃、あいさつ回りに伺ったのですが、お土産にずしりと重みのある紙袋を戴きました。
口を開いてみるとぷんと良い酒の香り。
酒粕でした。
しかし、入っている量に対して重みが市販のそれとは明らかに違います。
おそらく絞り切っていないたっぷりと酒精を含んだ逸品だったのでしょう。
家に持ち帰りお湯で溶かして甘酒にして戴きましたが美味しかったな。
ちなみに僕は経験がないのですが件の酒蔵に年始に挨拶に行くと「今日、これから他に回るところある?」と訊かれるとか。
「ありません」と答えれば小売りには出していない秘蔵の酒が冷蔵庫から出されて振舞われるのだそうです。
酒呑みにはたまらないお客様だったなぁ。
あれから二十数年。
久しぶりに酒粕を買いましてこんな料理を作ってみました。
もしあの時の酒粕が今手元にあったら──この料理の味わいも一段と深かったことでしょう。
【材料】(1人分)
-調理時間:14分-
- 塩鮭:1切れ
- 大根:2cm
- 人参:1/3本
- 味噌:18g(大匙1)
[煮汁パート]
- 昆布だし:150g(カップ3/4)
- 酒:15g(大匙1)
- 酒粕:10g
- おろし生姜:ひとかけ分
【作り方】
- 小鍋に根菜がひたひたにつかる程度の湯(分量外)を沸かします。大根と人参は7mmのいちょう切りにし、この小鍋に入れて5分下茹でします。
- 1.をやっている間に鮭を一口大に切り大き目の骨は取り除いてざるに並べます。これに熱湯(分量外)を注いで霜降りにします。
- 小鍋に[煮汁パート]を入れて中火にかけ酒粕をよく溶きます(泡立て器を使うと楽ちん)。ひと煮立ちしたら鮭と根菜類を入れて蓋をし、弱火で10分煮込みます。
- 3.に味噌を加えて火を止め、よく溶けばできあがり。 ※煮汁を煮立たせると味噌の風味が飛ぶので一旦火を止めて溶き、煮立たせないように温めなおしましょう。
【一口メモ】
- ほうっと思わずため息がでるような汁物です。体の芯から温まりますよ。
- 味噌以外に醤油や塩を加えるレシピをよく見かけますがこのレシピでは塩鮭を使っているので味噌オンリーで控えめに味付けするのが吉です。物足りなければあとから塩をひとつまみ加えましょう。
- 鮭と合わせる野菜は他にも小松菜などの葉菜、キノコ類、長ネギなどがおすすめ。冷蔵庫のあり合わせをプラスすると更に贅沢な一杯になります。