とある夏の週末。ドラマ「みをつくし料理帖」(北川景子主演の方)を見ていたら無性に茶わん蒸しが食べたくなりました。
しかし、季節は夏。あまりにも茶わん蒸しは合いません。
で、ふと思ったのですが、プリンだって冷やして食べるじゃないですか。茶わん蒸しだって冷やして食べれば夏のご馳走になるはず。
江戸時代と違って今は冷蔵庫があるんだから!! まさに目から鱗。なんで気付かなかったんだろうと思いつつ早速製作。
基本は茶わん蒸しと同じなのですが舌がひんやりする工夫としておろし生姜を加えました。具材も夏らしいものを選びました。
久しぶりに真面目に出汁を挽きましたけど手間をかけると美味しいですね。
ドラマの中では上方は昆布出汁、江戸は鰹出汁、そのどちらでもない新しい自分の出汁を作るといって、主人公が合わせ出汁を編み出していく過程がリアルに描かれています。
今では当たり前の手法ですけど当時は画期的だったんでしょうねぇ。
ただ一つ疑問。当時の鶏卵は今の感覚で1個400円くらい。本当に商品になり得たのでしょうか? 確かに商品名は「とろとろ茶わん蒸し」とあってかなり緩いとろみがウリ。
つまり卵を必要最小限に抑え込んでいるようには窺えるのですが。文献を紐解くと茶碗蒸しは1790年頃、京、大阪に発祥し江戸に広がっていったとあるので史実と合ってはいるのですが……。
ちなみに1866年(明治維新の2年前)に長崎に日本初の茶わん蒸しの専門店が開店したとのこと。
どう考えても外国人相手の高級料理店な気がするんですけどねぇ。ま、お話ですので野暮なことは言いますまい。
【材料】(4人分)
-調理時間:40分(出汁を挽いたり冷やす時間は含めていません)-
- 大葉:2枚
- 小海老:6尾
- 焼き穴子:1尾
- 椎茸:1枚
- 夏野菜(茄子、オクラ、茗荷、胡瓜など):少しずつ多種類
- 竹輪:1本
[卵液パート]
- 水:350cc
- 出汁昆布:3cm四方
- 鰹節:一掴み
- 卵:2個
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 砂糖:ひとつまみ
- 塩:1g
- 濃口醤油:9g(大匙1/2)
- おろし生姜:二かけ分
【作り方】
- 出汁昆布を水350ccに2、3分浸け、柔らかくしてから料理バサミでひだを入れます。再び出汁昆布を水に戻し1時間浸けます。
- 1.をやっている間に大葉は細切りにし、鶏肉は1cm角に切り、椎茸は細切りにし、人参は5mm厚の銀杏切にし、竹輪は輪切りにします。人参は電子レンジで1分ほどチンして柔らかくしておきます。
- 1.を中火にかけ煮立つ寸前に昆布を抜いて鰹節を加え煮立ち始めたら火を止めます。そのまま1分置いて鰹節を濾します。
- 昆布と鰹節を細かく刻んで醤油3g、味醂3g、砂糖2gを加えて炒り付けると美味しいふりかけになりますので是非リサイクルしましょう。
- 3.に[卵液パート]の卵以外を加えて粗熱を取ります。これによく解きほぐした卵を加えて良く混ぜます。
- 器に2.の具材を加え4.の卵液を流し込みます。これを蒸気の上がった蒸し器に入れ蛍火(火が消える寸前のごく弱火)にかけプリンのようにとろみが付いたら取り出します。
- 5.の粗熱を取り更に冷蔵庫で冷やせばできあがり。
【一口メモ】
- 暑い日に食べると最高のごちそうです。生姜が利いているので舌先がよりひんやりとします。大葉の清々しい雰囲気も涼味の演出になっています。穴子や夏野菜など夏らしい具材も目先が変わって楽しい。
- 出汁をきちんと引くというのはやっぱり大切だなぁと感じました。コツは昆布も鰹節もさっと挽いてさっと抜くこと。いつまでも入れていると香りが強すぎて風味を損ないます。
- 茶わん蒸しやプリンは火加減が難しい料理です。火が強いとすが立ってとろとろ感が損なわれます。最近のコンロは火力が強くて蛍火が出せないものがありますが(実は我が家のもそう)、その場合は3~4分弱火で蒸して火を止め数分待ってまた3~4分弱火というのを繰り返して根気よく火を通して下さい。オーブンレンジの良い機種になると茶碗蒸しモードなんてのがあるので楽ちんなんですけどね。
- このレシピでは焼き穴子をチョイスしていますが蒲焼きではなく白焼きの方を想定しています。関東ではなかなか売っていないのですが、もしハモが手に入れば1ランク上のごちそうになりますよ。
- 冷やして食べる茶わん蒸しですので具材も夏野菜の方が夏らしい演出になって映えました。ちょっとためらって使わなかったのだけどトマトの酸味もありかも。