大学時代に行きつけの飲み屋を持ったのを皮切りに、僕は生活環境が変わったり、引っ越しをする度に、ご近所を探訪して徒歩圏内に居心地の良い居酒屋を探すのが癖になっています。

わりとものおじしない質なので一人で見知らぬ店の暖簾をくぐるのに抵抗はなく、初めての店でもまるで10年も通い慣らしたような顔でちゃっかりカウンターに収まったりします。
そんな振る舞いが気安く感じてもらえるからか、行く先々のお店で仲良くなってくださる人が何人かはできるのですが、育ちも業種も違うそんな常連さんから聞かされる話が僕にとって『飲み屋の楽しみ』のひとつになっています。

そんな飲み友達の中でも少し変わり種の経歴をお持ちなドクターがいらっしゃいます。
お年は僕の母の1、2歳下だったかな。
母は太平洋戦争の終盤、昭和19年生まれなので彼は終戦前後の生まれなのだと思います。
僕とは20歳近く離れた年の差友達ですね。

生まれは中国大陸のモンゴルかどこか、そちら方面。
その後、日本に引き揚げてきたクチです。
その後の経歴を、酒の肴にうかがいましたが。
- 楯の会の会員で自殺直前の三島由紀夫に会っていたとか
- ゴルバチョフ大統領時代に国賓でクレムリンに行ったとか
- スマトラ沖地震の時は被災地医療で現地入りしていたとか
- 東日本大震災の時もスクランブルがかかって11日の16時にはヘリで北海道上空にいたとか
普通に考えたら飲み屋でよく聞く、盛り盛りの武勇伝にしか思えないのですが、彼が語ると妙に真実味があってつい手に汗握ってしまいます。

実際、その店で泥酔客が椅子ごとひっくり返って頭から血を流した際の救護の手際は見事なものでしたので、彼の経歴もあながち侮れないものだと窺えました。
そんな彼がある時、真顔でこんなことをおっしゃいました。
「酒を飲んだ後、お茶漬けを食べる習慣は止めた方が良いよ」

お茶漬けはご飯がやわらかくなっているのでついついかきこみ勝ち。
けれど、それは胃に負担をかける消化に悪い食べ方なのだとか。
いわんや、酔って冷静な判断ができなくなっている時ならなおのこと。
ゆっくり咀嚼して食べようなんて絶対考えないでしょ。

というのです。
ごもっとも。
理にかなっていて返す言葉もありません。
けれど、僕は根が天邪鬼なので、
「だったら消化に良い具材を選んでお茶漬けや雑炊を作れば良いのでは」
なんてことを心のうちで考えておりました。

過日、冷蔵庫に大根が残っていたので宿題事項になっていた「消化に良い雑炊」を目指して、こんな料理を作ってみたのですが……果たして彼からは及第点がもらえるかなぁ。
【材料】(1人分)
-調理時間:13分-
- ご飯:1膳分
- 卵:1個
- 刻み葱:少々
- 大根:3cm分
- ポン酢醤油:5g(小さじ1)
[煮汁パート]
- 鰹出汁:100g(カップ1/2)
- 濃口醤油:3g(小さじ1/2)
- 味醂:6g(小さじ1)
- 塩:ひとつまみ
- 千切り生姜:スライス1枚分
【作り方】
- 大根の皮をかつら剥きにしてから、大根をすりおろします。小鍋に[煮汁パート]を合わせて大根おろしの汁をこれに加えます。(大根おろし自体は加えずに別皿に取っておきます)。
- 1.を中火にかけてひと煮立ちさせ、ご飯を加えて3分煮ます。待っている間に盛り付ける器で卵を溶いておきます。 ※盛り付ける器で卵を溶いておけば最終的に雑炊がここに戻ってくるので卵液を一滴も無駄にせずに食べ切れます。
- 2.に溶き卵を加えてざっくりと混ぜ、30秒煮込みます。火を止めて蓋をし、1分蒸らします。待っている間に別皿に入れた大根おろしを電子レンジの500ワットで40秒温めます。
- 3.を卵を溶いた器に盛り、大根おろしをトッピング、ポン酢醤油を回しがけて刻み葱を散らせばできあがり。底からよく混ぜていただきましょう。
【一口メモ】
- 具材は大根と卵だけだけどめちゃ旨い。つくづく日本人の舌って安上がりにできているなぁと妙なことに感心してしまいました。
- お茶漬けや雑炊はご飯が柔らかくて咀嚼しなくてもつるっと入ってしまうので消化に悪いと言われることがありますが、この雑炊は消化に良いポイントが4つもあるので体調がすぐれないときにもおすすめです。
- 大根おろしの消化酵素(アミラーゼ・ジアスターゼ)を含んでいて胃の負担を軽減します。
- 水分が多くご飯を柔らかく煮込んでいるため、消化・吸収がスムーズに行われます。
- 温かい料理なので冷えた胃腸を優しくいたわります。
- 低脂肪、低カロリーで内臓に負担をかけません。
- お好みで刻み海苔や炒りごまなどを加えて風味を強化しても楽しいです。あと、味変アイテムとしてわさびや柚子胡椒を途中で混ぜ込むのありですね。

