料理の基本として知られている技法の中には今では形骸化しているものもあります。
たとえば「差し水」。
豆や麺類を煮るときに吹きこぼれを防ぐために冷たい水を差す手法ですがこれは火加減を簡単に調節できないかまどで煮炊きしていた時代には有効な技法でした。
コンロで煮炊きをする今では……
つまみをひねって火を弱めれば済む話です。
同じようにお揚げは下ごしらえとして油抜きをする──というのはよく知られた技法ですがこれも今では必ずしも必要な手順ではありません。
揚げ油の質が悪かった時代は沁み込んだ油を抜いてやらないと美味しくなかった。
だから油抜きをしていたというのが諸説ある中で油抜きの起源として有力な説です。
けど、イマドキ、質の悪い油でお揚げなんか作っても売れるわけがない。
どんな安物のお揚げでもそこそこまともな油を使っているものです。
だから、わざわざ抜く必要もなしといえます。
じゃ、油抜きはしなくて良いかというとそうとも限らない。
揚げ油を吸ったお揚げは言ってしまえばお腹いっぱいの状態。
美味しい煮汁に浸しても満腹だから吸ってくれないのです。
それに対して油を抜いたお揚げは空腹の状態。
お腹が空いているからごくごく煮汁を飲んでくれる。
結果、味染みが良くなるのです。
ということでお揚げを煮物に使う場合などはやっぱり油抜きをした方が良かったりします。
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- 厚揚げ:半丁
- 山芋:100g
- 生姜:1枚
[煮汁パート]
- かつお出汁:100g(カップ1/2)
- 濃口醤油:27g(大匙1.5)
- 酒:15g(大匙1)
- 砂糖:4.5g(大匙1/2)
【作り方】
- 厚揚げは熱湯(分量外)をかけて油抜きをします。これを1.5cm角の賽の目切りにします。山芋は皮を剥いて1cm厚の半月切りにします。生姜は千切りにします。
- 小鍋に[煮汁パート]と生姜を入れて中火にかけひと煮立ちさせます。これに厚揚げ、山芋を加えて蓋をせずに弱めの中火で7分ほど煮ます。煮汁が1/3くらいになったらできあがり。
【一口メモ】
- ちょっと濃い目の味付けにしてあるので主菜になり得ます。お肉のおかずがない日にはおススメの1品ですよ。
- お好みで七味唐辛子を振っても美味しいです。あと、仕上げに鰹節をひとつまみ加えてガっと混ぜれば旨味が増します。
- 山芋はジャガイモに置き換えるのもあり。厚揚げを薄揚げにしても美味しく作れます。