茄子のしぎ焼きという料理を僕がいつ知ったのかは覚えていませんがどこで知ったかについては明確に覚えいてます。
そしてそのエビデンス(確証)もあります。
それは……
高橋留美子作「めぞん一刻」第7巻10ページ最初のコマの四谷さんのセリフ!
おんんぼろアパート一刻館4号室の住人にして職業年齢不詳な怪しい中年男性──というのが四谷さんのざっくりしたプロフィールですが彼のセリフは9ページの最後のコマから続いています。
「ひじきの煮つけ。じゃがいもの煮っころがし。きんぴらごぼう。ナスのしぎ焼き。五目ずし」
主人公の五代君(五号室の住人)のおばあちゃんが田舎から上京して来ている一連の話の中でその回では田舎に帰るおばあちゃんの送別会をやっていました。
四谷さんがつらつら並べた料理名は毎日5号室に現れては夕飯をタカっていたお礼だったのですw
ひじきの煮つけやきんぴらごぼう、五目ずしはわかる。
じゃがいもの煮っころがしも食べたことないけどどんなものか想像が付く。
けど……茄子のしぎ焼きってなんだ?
めぞん一刻が連載されていたのは1980年代で僕はわりとリアルタイムに読んでいたので件の茄子のしぎ焼きという単語を目にした時期もその頃だと思います。
COOKPADやGOOGLEもない時代。
それどころかインターネットすらなかった時代。
料理に関する情報を得ようと思えば図書館か書店に行って料理本を読み漁るくらいしか手立てはありませんでした。
けどそこまでして茄子のしぎ焼きの正体を知りたいとは思わんなぁ──そう考えた僕は早々に真相究明を諦めました。
それより話の続きが気になっていそいそとラブコメの金字塔のページをめくっていましたっけ。
ところが案外にそういうしこりというか心の棘というのはなくならないものらしい。
めぞん一刻で茄子のしぎ焼きを目にしてから40年くらいの歳月が経過した2024年の夏。
冷蔵庫を開けると週末に買った茄子の徳用袋が目に飛び込んできました。
『茄子のしぎ焼きってなんだ?』
その大量の茄子が呼び水になったらしい。
脳裏にそんな懐かしい疑問文が浮かび上がってきました。
けど今は1980年代ではありません。
その謎を解くのは造作もないこと。
ものの数秒の検索で40年越しの謎の答えはあっさりGOOGLE大先生が教えてくれました。
で、せっかくなので40年前に四谷さんが五代君のおばあちゃんにごちそうになった茄子のしぎ焼きを作ってみたという次第です。
【材料】(1人分)
-調理時間:6分-
- 茄子:1本
- サラダ油:12g(大匙1)
[調味料パート]
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 酒:7.5g(大匙1/2)
- 濃口醤油:3g(小匙1/2)
- 味噌:9g(大匙1/2)
- 砂糖:3g(小匙1)
【作り方】
- 茄子はヘタを取り乱切りにします。[調味料パート]を合わせてよく混ぜておきます。
- 冷たいフライパンに茄子とサラダ油を入れてよく和えます。これを中火にかけて2分炒めます。
- 2.に[調味料パート]を加えて絡めながら水気がほぼなくなるまで炒めればできあがり。
【一口メモ】
- 「あ、田舎のおばあちゃんの味だ」なんて思わず口に出して言ってしまいそうな料理です。醤油ベースじゃなく味噌ベースというところがまた素朴な感じ。
- しぎ焼きは漢字で書くと「鴫焼き」。茄子を鳥の鴫(しぎ)肉に見立てた焼き物ですがもちろん使うのは茄子だけでお肉は使いません。使う調味料は味噌が定番で味噌田楽の一種と定義されることもあります。
- 鴫は鳥の名前ですが日本ではけっこう昔から食べられていたらしい。で、めちゃ旨いらしい。いつか食べてみたいな。
- なぜ鴫肉を使わないのに鴫焼きと呼ぶかについて一説にはもともと茄子の実をくりぬいてしぎ肉を詰めて焼いた鴫壺焼という料理があってそこから転じたのではとも言われています。戦国時代に生まれた料理だそうですがその頃から野菜の肉詰め料理があったのはなんとも興味深い。なんか戦後に家庭で生まれたアイデア料理くらいに思っていました。
- [調味料パート]に小口切りにした鷹の爪か七味唐辛子を加えてピリ辛にしても楽しいですよ。