「この子はもっと良い子になれる」北村薫の短編ミステリー「覆面作家のお茶の会」の中のセリフです。
街のパティスリーに嫁いだ娘はそう言って店のサンマルクのレシピをそば粉を使ったものにアレンジすることを提案。
店の看板スイーツへと押し上げてしまいます。
「この子はもっと良い子になれる」ボロネーゼが誕生する際にも同じセリフがつぶやかれたのかもしれません。
元々、南イタリアにあった単調な味のミートソースを食した北イタリアの貴族が専属料理人に命じてフレンチの技法を使った高級美食へと変貌させたのがその誕生のいきさつだとか。
トマトで煮込むミートソースと違って赤ワインをたっぷり使って肉にワインの渋みを与えることで重厚な風味のソースを構築しました。けどね、確かに美味しいのだけれど、作ったことがある身から言わせてもらうとめちゃくちゃ手間のかかるソースなのです。
ソースを作るだけで1時間以上かかってしまいます。
ランチは何にしようかな──と考えていて、超手抜きなボロネーゼ風レシピをネットで発見。
身近な調味料を合わせてそれっぽい味に仕上げる仕掛けらしい。
面白そうだったのでさっそく挑戦してみました。
【材料】(1人分)
-調理時間:10分-
- スパゲティ:100g~120g
- 豚ミンチ:30~50g
- オリーブオイル:少々
- 茄子:1/2本
- にんにく:ひとかけ
[ソースパート]
- トマトケチャップ:30g(大匙2)
- ウスターソース:18g(大匙1)
- コンソメの素(顆粒):小匙1
- ブラックペッパー:少々
[仕上げパート]
- 赤ワイン:30g(大匙1)
[茹で汁パート]
- 水:600g(3カップ)
- 塩:9g(大匙1/2)
【作り方】
- [茹で汁パート]を鍋に合わせ小ぶりのスプーンを入れて(突沸による吹きこぼれを防いでくれます)、沸騰したらスパゲティを加えてパッケージに記載の時間-1分茹でます。
- 1.をやっている間に茄子は1cm幅の輪切りにし更に半月切りにします。にんにくはみじん切りにします。
- フライパンにオリーブオイルとミンチを入れてよく和え薄く伸ばします。これを弱火にかけてしっかり焼き色がつくまでいじらずに焼きます。肉をスパチュラで返して裏面も焼きます。
- 3.ににんにくを加えて中火でさっと炒め更に茄子を加えてしんなりするまで炒めます。
- 4.に[ソースパート]を加えて具材と絡ませながら中火で1分炒めます。更に[仕上げパート]を加えて水気がほぼなくなるまで煮詰めます。
- 茹で上がったスパゲティをザルに揚げて水気をよく切り、5.のフライパンに加えてよく絡めればできあがり。
【一口メモ】
- 甘さ控えめで赤ワインの渋みが加わったいわゆる大人の味のパスタです。お好みでパルメザンチーズを振ると風味がマイルドになってまた楽しいですよ。
- ケチャップやウスターソースというボロネーゼが発祥した当時には存在しなかった調味料を使うことで時短を可能にしています。それだけこれらのソースがよくできているということなんでしょうね。
- このレシピの段取りポイントはスパゲティを茹で上げるまでに工程2.~5.のソースを仕上げること。ただし、少し時間オーバーしてしまうかも。茹で上がりのスパゲティを待機させる場合は軽くオリーブオイルを振っておきましょう。表面に皮膜ができて必要以上に水分が抜けるのを防ぎます。
- 正式にはスパゲティではなくタリアテッレ(きしめんのような形状のパスタ)を使います。ソースの絡みが断然違うのでもし手持ちがあればオススメです。
- 風味のポイントは仕上げに加える赤ワイン。安物で構わないのでたっぷり目に使うように配合を決めました。