今の自分はかりそめの自分。
本当の自分はどこか遠いところにいる──なんて憧憬は誰しも抱いたことがあるのではないでしょうか。
それが高じて楽し気に騒いでいるクラスメイト達を冷めた目で見るようになったら──それはもう立派な中二病です。
更に行動派の人は「自分探しの旅」と称してふらふらっとどこかに旅行に行ったりもします。
身もふたもない言い方をすれば端から自分はそこにいますからどこに旅行しても見つかりはしないのですけども。
それでも旅行で得た経験は良き思い出になるでしょう。
誰しも身近なものほどありふれて無価値なものに見えて、手の届かないところにあるものほど価値ある素晴らしいものに感じてしまう──そんな心理が変身願望の原動力なのかもしれません。
この心理を逆手に取れば容易に不人気なものを一躍大人気にすることができます。
要は不人気な理由が「いつでも手に入るありふれたもの」ということであれば「今しか手に入らない特別なもの」にアレンジしてしまえば良いのです。
毎年おせち料理を作る度に「今年は入れるのを止めようかな」と思いつつやっぱり入れてしまう品があります。
それは──『黒豆の煮物』むちゃくちゃ手間がかかるので(そして大量にできてしまうので)とうの昔に自作は諦めて出来合いのものを買ってくるのですが、家族には不人気。
1粒、2粒箸でつまんだら
「美味しかった。ごちそうさま」
と言ったそっけない扱いなのです。
ホント、だったら買ってこなきゃ良いのにね(笑)
あまりにも誰も箸を付けないので業を煮やしてある年、残っていた黒豆を全部生地に混ぜ込んで「抹茶と黒豆のパウンドケーキ」というのを焼いたら一瞬でなくなった。
「いや、これ君らが見向きもしなかった黒豆やで」
と娘に言ったら
「これは今しか食べられへんスイーツやから食べとかな」
との返事。
どうやら黒豆は煮豆の一種で年中いつでも食べられるけど和風スイーツ──
ましてやおせち料理をアレンジして作ったスイーツは1年でも正月にしか食べられへんということらしい。
いやそれ理屈が通っているようないないような……
釈然としない気分ながら僕はひとつの真理にたどり着きました。
「これは特別。今を逃したら食べられないと思わせた料理は人気が爆上がりする」
爾来、毎年正月明けには黒豆をアレンジした正月ならではの料理が食卓に上るのが我が家の年中行事。
正月の終わりを告げる風物詩となりました。
今年はおこわ。
お赤飯ぽい料理なので果たしてウケるかなと危ぶんでいたのですがどうやら杞憂だった模様。
これもあっという間になくなってしまいました。
気の早い話ですが来年は食パン生地に混ぜ込んで小倉トースト風にしてみようかなと思っております。
……、って、やっぱり黒豆を買うんかい。
【材料】(1人分)
-調理時間:105分-
- おせちで残った黒豆:あるだけ
- もち米:1/2合(なければ米1/2合)
- 米:1/2合
- 塩:2g(小匙1/3)
- 水:炊飯器の目盛りより少し下目盛の線が水に浸からない程度
【作り方】
- もち米を研いで水に1時間浸します。30分経過したらに普通のお米を研いでもち米のボウルに加えて水に30分浸します。 ※もち米と普通のお米(うるち米)は水に浸す時間が異なるので時間差で研いで工程終わりが同時になるように合わせます。
- 1.をざるに揚げて水を切り炊飯器に入れて水と塩を加えてよく混ぜます。 ※もち米はそれ自体が水分を多く含みますので炊飯器の目盛通りに水を入れるとべちゃべちゃになります。心持ち少なめの水で炊いてください。
- 2.の上に黒豆を載せて普通に炊けばできあがり。
【一口メモ】
- おこわというか赤飯に近いテイストの炊き込みご飯になりました。けっこう甘いのですがこれはこれでありかな。
- 味付けの要は塩加減。少し強めに加減した方が黒豆の甘味が引き立って美味しいです。
- お好みで針生姜を加えるとさっぱり風味のおこわになりますよ。