僕が社会人になって入社式を終えたばかりの1988年4月。
スタジオジブリの新作アニメが公開されました。
しかも2本立て。
1作は「火垂るの墓」、もう1作は「となりのトトロ」です。
ラピュタで宮崎駿のファンになっていた僕は社会人初のGWに劇場に足を運びましたとも。
火垂るの墓はメンタル的になかなかきつい作品だったのですが、その後に観たトトロは「日本人の原風景を刺激する」作品でした。
のどかな田舎の風景、木造家屋、雨戸、タイル張りのお風呂などなど、あの頃の大人たちの誰もがかつて実体験したものばかり。
ひととき、子供の頃に還った気分になりました。
けれど、こうも思ったんですよね。
「外国の人がこの作品を観てもこの郷愁めいた感傷は共有できないだろうなぁ」
その感情は日本の田舎で暮らした経験があって初めて湧くものだと思ったのです。
その丁度1年後、1989年4月にアメリカで公開された映画が大ヒットしたという噂を聞きました。
映画のタイトルは「フィールド・オブ・ドリームス」。
日本公開は翌年の3月。
全米で感動の嵐──なんて煽り言葉に釣られて観に行きましたっけ。
農場を営む主人公がトウモロコシ畑で聞いた謎の声にいざなわれて畑の一部を潰して野球場を作ると、伝説のメジャーリーガー(無実の罪で球界を追われて不遇の生涯を終えた選手)が現れる──そんなお話でした。
映画はそれなりに楽しめたのですが……感動の嵐、というほどの作品か?
あの煽り文句は盛り過ぎだろうと僕は感じました。
けどね、しばらくして気が付いたのです。
"フィールド・オブ・ドリームス"はアメリカ人にとっての"となりのトトロ"なのだと。
あの映画を心底楽しむためには伝説のメジャーリーガー、“シューレス”・ジョー・ジャクソンに熱狂した記憶があってこそなのでしょう。
もしかしたら、あの映画に感動したアメリカ人の中には「外国の人がこの作品を観てもこの郷愁めいた感傷は共有できないだろうなぁ」なんて考えた人もいたかもしれません。
話は変わりますが、海外では日本食ブームが続いていると聞きます。
けど、そんな記事を見かける度に似たことを考えてしまうのです。
「外国の人が僕らが普段食べているようなお惣菜を食べても、郷愁めいた感傷は共有できないんじゃないかな」って。
けど、そこはお互い様というのもわかっているんですよね。
例えばアメリカはトウモロコシ大国と言われます。
食べ方も豊富で粉に挽いて作るコーンブレッドから、スープにしたコーン・チャウダー、コーンサラダ、コーンプディングと多種多様。
有名なバーボン・ウィスキーの原料もトウモロコシ。
お酒を造るのにもトウモロコシは欠かせない材料なのです。
かたや、僕ら日本人がトウモロコシと聞いて思い浮かぶのは、ポップコーンにコーンフレーク、コーンスープ、あと、夜店で売っている焼きトウモロコシくらい。
アメリカ人がそれを見たら「違う、トウモロコシの凄さはそんなものじゃないんだ」と言うんじゃないかしらん……よく、知らんけど(笑)
過日、生のトウモロコシから本格的なスープを作りました。
裏ごしをして滑らかなスープにしたのですが当然、搾りかすが残ります。
"搾りかす? いやこれ繊維質たっぷりのちゃんとした食材でしょ"──そんな想いが脳裏をよぎり、そのリッチな"搾りかす"を具材にリゾットを作ってみました。
思った以上に美味しくて、トウモロコシの凄さの一端を見た気分。
忘れないようにレシピをメモしておきます。
【材料】(1人分)
-調理時間:12分-
- ご飯:1膳分
- コーン缶(ホール):50g分
- ベーコンスライス:1枚
- 玉ねぎ:1/4個
- にんにく:ひとかけ
- オリーブオイル:12g(大さじ1)
- スライスチーズ:1枚(ピザ用チーズ30gでもOK)
- コンソメの素(顆粒):4g
[煮汁パート]
- 水:100g(1/2カップ)
- 牛乳:100g(1/2カップ)
[仕上げパート]
- ドライパセリ:少々
- 粗挽きブラックペッパー:少々
【作り方】
- ベーコンは5mm幅の小口切りにします。玉ねぎ、にんにくはみじん切りにします。スライスチーズは細切りにします。
- フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて弱火にかけ、にんにくがうっすら色づくまで炒めます。これにベーコンを加えてカリカリになるまで炒めます。さらに、玉ねぎとコーンを加えて1分炒めます。 ※火加減はずっと弱火でじわっと炒めるのがコツです。
- 2.に[煮汁パート]とコンソメの素を加えて中火にし、ひと煮立ちさせます。
- 3.にご飯とスライスチーズを加えてざっくり混ぜ、蓋をして、弱火で3分煮込みます。 ※ふきこぼれないよう火加減に注意して蓋は少しずらしておきましょう。
- 4.を器に移して[仕上げパート]を振ればできあがり。
【一口メモ】
- みじん切りにしたにんにくを香ばしく焼いて混ぜ込んだのが、実に良いアクセントになっています。
- 生トウモロコシからスープを作った時に裏ごしした残り(粉砕したつぶつぶ)を転用して、リゾットの具にしてみたというのがこの料理の生い立ちです。このレシピではイチから作る想定でコーン缶を使っています。
- 手持ちがあれば生コーンを使うと旨味と甘みが格段にアップしますよ。