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厨房日誌

スランプの本質と脱出のコツ

かつて落合 博満がこんなことを言ったそうです。


「スランプなんて言葉を使って良いのは王か長嶋くらいだ。それ以外の選手が口にしても才能がないか単に怠けている言い訳をしているようにしか聞こえない」


なかなか手厳しいですが、含蓄のある言葉だと思います。

長いこと一つの仕事をしていれば誰でもベテランになっていきます。

それでも、日によって「今日は調子が出ないな」と思うことはあるし、ひどい時はそれが何日も、何ヶ月も続いたりします。

この状況は同じ作業を繰り返す仕事ではあまり起きません。

一方、スポーツや芸事のように取り組む度に白紙状態から始めないといけない仕事で起き易い傾向にあるのは周知の事実です。


そんな時、スランプという言葉はとても便利です。

要は「調子が出ない」状況を「スランプ」という言葉に翻訳して、自分で自分をなだめているんですよね。

けど、それをやってしまうと人は思考停止しちゃうのです。

調子が出ない原因の分析を放棄し、どうやったら脱出できるか足掻くことまで止めちゃいます。

で、「スランプだからしかたがない。そのうち抜け出せるだろう」なんて虫の良いことを考えちゃうのです。


スタジオジブリの「魔女の宅急便」で空を飛べなくなった主人公のキキに絵描きのウルスラがアドバイスをする場面があります。


「私もね描けなくなることがよくあるよ」
「そんな時、どうするの?」
「描いて描いて描きまくる」
「それでも描けなかったら」
「描くのをやめる。何もしない。湖の周りを散歩したりして過ごす」


スランプをスランプだから仕方ないと放置せず、取っ組み合ったり突き放してみたり試行錯誤する前向きな姿勢を僕は好ましく思います。

ただ、経験則から言うと何もしないでスランプが解決した試しが僕にはありません。

自分が「スランプ」と思いたがっている状況には必ず原因があって、スキルが足りないのなら足りないところを磨かないと復活できませんし、怠けているのなら気合を入れ直す必要があります。

十中八九、人がスランプという言葉を口にする時は現実から目をそむけたがっているときと考えて間違いないのです。

やはり、落合の言葉には含蓄があると感じます。

過日、近所の居酒屋に顔を出した折、常連のお姐さんにこの話をしたら「そこにイチローも入れたげて」と言われました。

あれだけのスター選手になっていても、日々の練習メニューを訥々とこなすストイックな姿勢を見ていると、確かにあれだけのことをやって調子が出ないのなら仕方がないなと思えちゃいます。

けど、当のイチローはスランプという言葉を口にするのを潔しとしないんじゃないかな。

それは王や長嶋も同じな気がします。

そう考えるとスランプという言葉を使う資格のある人は自分をスランプという言葉で決してなだめない人ということになって、結局誰もこの言葉を使えなくなりそう。

それが原因でこの言葉が死語になったり……しないだろうな。凡人の逃げ口上としてこれからも生き残っていく言葉だと思います。

とまれ、僕らもついつい「スランプ」という言葉を使いたくなる時には、「ちょっと待てよ。本当にそうか?」と立ち止まって冷静に状況を見つめ直すのが賢明だと思います。

それが、結果的には「スランプ」と思っている状況から抜け出す近道になりますから。

2020/03/01 Sun.

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