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厨房日誌

ヒット作症候群の苦悩

東野圭吾はミステリージャンルの人気作家ですが、実はコメディーも結構描いていたりします。

彼のコメディー短編連作「×笑小説(×に1文字入ります)」のシリーズ、歪笑小説は作家業の悲哀をネタに笑わせる短編集なのですが、その中で『ヒット作症候群』という言葉が出てきます。

これは、あるジャンル、あるテイストの小説で大ヒットを飛ばした作家がその後の作品でもずっとその一作を引きずってなかなか自分の殻を破ることができなくなる病(やまい)といったほどの意味です。

なるほど、これはホントあるあるだなぁと思っちゃいますが、これって、誰が悪いかって読者が悪いよなぁとも思ってしまいます。

たとえば、渥美清が登場する映画を見ると誰もが「あ、寅さんだ」と言います。ピーターフォークが登場するドラマを見ると誰もが「あ、コロンボ」と言います。いや、渥美さんもピーターフォークもそれ以外にも良い作品に出てるんですけどね。

 

で、この病はご本人もかなり苦しまれるようで、ピーターフォークはイメージが固定化するのを嫌って、一時期コロンボのシリーズを降板したことがありました(それでも、ファンの声が鳴りやまず。食べていかないといけないこともあってカムバックするのですが心中如何だったのでしょうね)。

同様に、マイケル・J・フォックスはバック・トゥ・ザ・フューチャーのインパクトが強すぎて、何時まで経っても高校生くらいの若者役を求められたようです。

どんなヒット作であっても、それは独立した一本であり不世出のものであることを読者や観客は知るべきじゃないのかなと僕は思います。

ましてや、以降の作風がそのヒット作とは異なったとしても「こんなの××さんの作品じゃない」だの「つまらなくなったな」だのと軽々しく言うべきではないと思うのです。

監督であれ俳優であれ、クリエーターは新境地を開こうと苦闘し続けるものです。真のファンであるならばその産物を揶揄するのではなく温かく応援すべきではないでしょうか。

宮崎駿監督が未だに「ラピュタは良かった」、「トトロの頃が最高」などと言われるのを見るにつけしみじみそう思います。

顧みて、クリエーターの側はファンをほっぽらかして「黙って俺の新作を見やがれ」みたいに慢心してはいけないとも思います。

例えば小津安二郎は好んで笠智衆(男はつらいよシリーズで御前様をやってらした方)を起用しましたが、ある時、彼の友人が「今作の笠君はイマイチだったね」と言ったら、むっとした顔になって「君は笠のことが嫌いなんだね」と返したとか。

いや、そこは貴重な意見として拝聴しておきましょうよ。

数年前、新海監督がリリースしたアニメーション作品が空前の大ヒットを飛ばした直後、あちこちのアニメ監督にスポンサーが「君の名は。みたいな作品を一つ作ってちょうだいよ」と注文を付けるムーブメントがあったそうです。

ヒット作症候群もここまでくるともはやギャグですね。ある監督は「じゃあ、新海監督にご依頼ください」と言ったとか。

まさしく、その通りだと思いますが、新海監督も嫌がるだろうなぁ^^;

2020/02/10 Mon.

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