贅沢なごちそう──と聞いて何を思い浮かべますか?こんなアンケートがあったら、「お寿司!それも回ってない店のやつ」なんて答える人も多い気がします。
けど、「お寿司が贅沢な料理」とされる理由を訊くと、大半は「(値段が)高いから」と返ってくるのではないでしょうか。
確かにお寿司は高価ですが、本当の意味で贅沢な料理である理由はそこではないと思うのです。
お寿司屋さんが仕入れた魚のうち、実際にお客に出すのは5割程度。
刺身にできる身の部分(魚体の約50%)だけを使い、皮も骨も内臓も商品にはしません。
骨は出汁を取ったり賄いに回したりすることもあるでしょうが、使い切れない分は廃棄されます。
そう考えると、お寿司は「素材の半分以上を捨てる」贅沢な料理なのです。
一方、そんなお寿司とは真逆で、「本来は捨てられていた部位」を工夫で商品化した商売も数多く存在します。
たとえば「ホルモン焼き」。
語源は「放るもん(=捨てるもの)」とされ、精肉の副産物である内臓肉を美味しく仕上げたものです。
九州や沖縄でおなじみの「豚足」、広島の珍味「せんじがら」なども同様。
いずれもかつては価値の低かった部位を見事に“お酒のアテ”へと昇華させた例ですね。
海外にも似た文化があり、イタリアの「トリッパ」、フランスの「アンドゥイエット」、スペインやフィリピンの「チチャロン」、スコットランドの「ハギス」など、どれも副産物部位を活用した名物料理です。
そして──僕の地元、関西の「かしわ料理」も、忘れてはならないジャンル。
焼き鳥屋では首皮、背肝(腎臓)、せせり(首肉)など、かつては見向きもされなかった部位が堂々と主役を張っています。
特にせせり焼きは絶品です。
関東ではなかなか見かけなかった鶏の希少部位も、関西の鶏肉専門店では日常的に並んでいます。
これを見ると「ああ、関西に帰ってきたなぁ」と実感するものです。
しかも値段も安め。
ありがたい限りです。
さて──過日、いつもの精肉店で砂肝(鶏の砂嚢/人間で言えば胃にあたる部位)を購入。
普段は塩焼きや唐揚げにしているのですが、「カレーにしたら臭みも気にならず美味しくなるのでは?」と閃き、こんな一皿に仕上げてみました。
【材料】(2人分)
-調理時間:25分-
- ご飯:2膳分
- 砂肝:100g
- じゃがいも:中1個(小なら2個)
- 玉ねぎ:1/2個
- 人参:半本
- セロリの茎:50g
- サラダ油:12g(大さじ1)
- おろし生姜:ひとかけ分
- 水:400ml
- カレールウ:1/4箱
[仕上げパート]
- トマトケチャップ:5g(小さじ1)
- 中濃ソースまたはトンカツソース:6g(小さじ1)
【作り方】
- じゃがいもは皮を剥いて食べやすい大きさに切り5分間水(分量外)に晒してざるに上げ水気を切ります。
- 1.をやっている間に砂肝は3mm厚にスライスします。玉ねぎは細切りにします。人参は食べやすい大きさに乱切りにします。セロリは3mm厚の小口切りにします。
- 鍋にサラダ油とおろし生姜を入れて弱火にかけます。香りが立ってきたら砂肝を加えて中火にし、色が変わるまで炒めます。更にじゃがいも、玉ねぎ、人参、セロリを加えて1分炒めます。
- 3.に水を加えて蓋をし、ひと煮立ちさせます。アクを取ってカレールウを加え5分煮込みます。 ※カレールウを加えて煮こむ際に完全に蓋をすると煮立って鍋の内壁にカレーが飛びますので少し蓋をずらして煮込みましょう。
- 4.に[仕上げパート]を加えてよく混ぜ更に5分煮ます。深皿にご飯をよそいカレーをかければできあがり。
【一口メモ】
- コリコリとした食感がクセになる一皿。内臓特有の臭みも感じられず、「さすがカレー料理!」と唸ります。
- チキンカレーといえば、もも肉・胸肉・ささみなどクセのない部位が定番ですが、カレーの本領は“臭み消し”。クセのある部位こそ、カレーと相性が良いのかも。
- 砂肝はスライスすることで食感が強くなり過ぎず、しかも「どこをすくっても肉がいる!」という満足感も演出できます。薄切り、大正解でした。