映画「私をスキーに連れてって」で一世を風靡したホイチョイ・プロダクションズがその20年後の2007年に快作を世に送り出しました。
映画のタイトルは──『バブルへGO!!タイムマシンはドラム式』広末涼子主演の和製バックトゥザフューチャー的な映画でした。
就職氷河期真っ最中の時代。
彼氏が残した借金に押しつぶされそうになっていたヒロインが失踪した母を追って母が発明したタイムマシンでバブル景気に沸く日本にタイムトラベルするという話。
細かいことにツッコむのがバカバカしくなるカラっとした明るい映画でした。
作中、ヒロインが知り合ったバブル期の青年に「俺、長銀に就職が決まっているんだ」と自慢されるシーンがあります。
「え、その銀行潰れるよ」こともなげに言う彼女に青年は笑い飛ばします。
「銀行が潰れるわけないじゃん」と。
ところがどっこい長銀は1998年に経営破綻するんですね。
世の中には絶対なくならない、つぶれないと思われている商売があります。
けどこの世に「絶対」なんてないんですよね。
かつてエネルギー産業の根幹と考えられていた炭鉱業だって石油の登場であっという間に衰退しました。
時は明治。
「散切り頭を叩いてみれば文明開化の音がする」なんて言われた頃。
街にも洋食屋さんが現れ始めました。
味に馴染みがなくて当初は庶民から敬遠されがちでしたが次第次第にその料理が受け入れられていきます。
それを見ていた昔ながらの蕎麦屋さんの想いや如何に?
「このままではいずれ洋食に蕎麦は席巻されるのではないか」そんなことを考えた店主さんがいたのではないでしょうか。
明治末期から昭和にかけて蕎麦屋さんに洋食を取り入れる機運が起こります。
注目されたのはトンカツやカレー。
けど、ただ洋食屋の真似をしただけでは洋食屋に勝てない。
蕎麦屋でなければできない洋食を作らねば──そんな思いが結実して今では当たり前に蕎麦屋の品書きに並んでいる料理が誕生しました。
かつ丼、カレー南蛮、カレー丼……
新しい物好きの店主が始めたなんて言われますがその心中はさほど穏やかではなかったかも。
「蕎麦屋が潰れるわけないじゃん」
なんて慢心して暖簾に胡坐をかいていたらいずれ洋食屋に客を取られる──
そんな先見の明が働く店主が生み出したのが蕎麦屋の洋食なのかもしれません。
【材料】(1人分)
-調理時間:20分-
- 鰹出汁:350g(350ml)
- 蕎麦の本返しまたはめんつゆ:大匙1
- 豚肉(バラまたはロース)スライス:100g
- ごぼう:6cm
- 白ネギ:3cm
- ごま油:4g(小匙1)
- (市販の)カレールウ:1/4箱
- ご飯:適宜
【作り方】
- 豚肉は食べやすい大きさに切ります。白ネギは5mmの斜め切りにします。ゴボウはささがきにして5分間水(分量外)に晒してアクを抜きます。
- 鍋にごま油を入れて中火にかけます。これに豚肉、白ネギ、ごぼうを加えて肉にしっかり焼き色が付くまで2分ほど炒めます。
- 2.に鰹出汁を注いでひと煮立ちさせます。アクを取って蕎麦の本返しを加えてさっと混ぜます。更にカレールウを加えて時々かき混ぜながら10分煮込めばできあがり。ご飯にかけて戴きます。
【一口メモ】
- 鰹の風味が良く利いているのが如何にも蕎麦屋風。微かに本返しの醤油風味も利いていて正調和風カレーって感じです。
- 出汁と返しの風味を活かすために敢えてスパイスは加えないのがポイントです。
- 本式の蕎麦屋のカレーは水溶き片栗粉で更にとろみを付けます。市販のルウを使うと自動的にとろみが付いてしまうので省いていますがカレー粉やスパイスを調合してトライする場合やもっととろっとした方が良いという方は水溶き片栗粉を加えてください。
- 蕎麦屋のカレーは丼のスタイルで供されるのが一般的。メニュー名はカレー丼になっています。雰囲気を味わいたい場合は丼にご飯をよそってとろみの強いカレーを上からかけてください。