お料理バトル漫画「食戟のソーマ」からはいろいろなことを学びました。
そのひとつが料理を再構築するという手法です。
新作料理のコンペに挑んだ主人公が新しいフランス料理を考案するというエピソードがあったのですがそれがまさに料理の再構築でした。
彼が提供した料理はうずらの丸焼き。
カットすると中から半熟卵とリゾットが出て来るという仕掛けです。
その料理を指して彼はこう説明します。
「これ、親子丼なんっす」
そのシーンを見た時はどういうこと? って、僕も思いました。
で、説明は続きます。
「親子丼の構成要素は5つ。ご飯、鶏肉、卵、玉ねぎ、割り下。この親子丼という概念をフランス料理の技術で再構築したんすよ」
なるほど米にスュエした鶏ミンチと玉ねぎを加えて作ったリゾット。
うずら肉のロースト。
半熟卵。
マデラソースに醤油を加えたソースを割り下代わりに添える。
確かに親子丼が必要とする要素が全て一つの皿の上にそろっている料理です。
この「料理を構成要素に分解する」というテクニックは僕にとって目からうろこが落ちる思いでした。
どんなに複雑そうに見えている料理だって所詮は食材と調味料と調理法の組み合わせ。
その料理を構成する要素に分解してやればその料理の成り立ちがめっちゃシンプルに見えて来る──なんとも理系心をくすぐる発想でした。
で、今でもちょくちょく「この料理はどんな要素で構成されているんだろう」なんて考えます。
例えばかつ丼ならトンカツ、ご飯、卵、つゆ、三つ葉などの香味野菜といった感じですかね。
その上で、じゃあこの要素の中でこの要素に手を加えればこんな料理が作れるんじゃないか──なんて、アレンジを模索するのです。
その要領で居酒屋の定番料理「とん平焼き」のアレンジに挑戦してみました。
とん平焼きの構成要素は豚肉、キャベツ、卵、お好み焼き系のソースにマヨネーズです。
卵で作るオムレツをそのまま据えて中身にトマトやチーズなどのイタリアンっぽい具材を加える。
更にかけるソースもトマトベースにしてこれに本家のお好み焼きソースを合わせる──こうしてイタリアン風にアレンジしたとん平焼きが誕生しました。
【材料】(1人分)
-調理時間:18分-
- 豚こま:50~70g
- キャベツ:4~5枚
- バター:10g
- 卵:1個
- トマト缶:1/4缶(約100g果肉と果汁の両方を使います)
- シュレッドチーズ:3つまみまたはスライスチーズ1枚
- ドライオレガノ:少々
- 塩:2g(小匙1/3)
- オリーブオイル:適宜
- お好み焼きソース:大匙1/2
- マヨネーズ:適宜
- 生パセリ:少々(なければドライパセリ少々)
【作り方】
- 豚肉は食べやすい大きさに切ります。キャベツは千切りにします。トマトはざるで濾して果肉と果汁に分けます。スライスチーズを使う場合は細切りにしておきます。
- フライパンにバターを入れ中火にかけます。豚肉を加えて色が変わるまで炒めます。これにキャベツを加えて更に1分炒めます。更に塩、オレガノ、トマトの果肉を加えて蓋をし、3分蒸し焼きにします。時間が来たらフライパンの中身をチーズを入れたボウルに移してよく混ぜ余熱でチーズを融かします。
- フライパンにオリーブオイル少々を入れて弱めの中火にかけます。並行して卵を卵黄と卵白に分けて卵白を30秒泡立てメレンゲ状にします。これに卵黄を加えてさっと混ぜます。卵液をフライパンに流し込んで丸く広げ蓋をして弱火で1分蒸し焼きにします。
- 3.のフライパンの蓋を取り2.を均等に載せて二つ折りにし、皿に移します。
- 4.のフライパンを洗わずにそのままトマトの果汁、お好み焼きソースを加えて中火にかけます。ふつふつと煮立ち始めたら火を止めて3.のオムレツにかけます(写真参照)。上からマヨネーズを絞り刻んだパセリを散らせばできあがり。
【一口メモ】
- めっちゃトマトとチーズの存在感が強くてもはや居酒屋で食べるとん平焼きとは別物の料理です。そのくせお好み焼きソースの主張も強いのでなんだか「夜店の屋台でイタリアンを立ち食いしている」みたいな妙な気分に浸れます。
- このレシピではあくまでも根っこは「とん平焼き」であると主張したかったのでお好み焼きソースを使っていますが拘りがなければパスタに使うミートソースやサラダ用のドレッシングをかけても美味しいですよ。
- よりイタリアンらしく寄せるのであれば工程2.の豚肉を焼く前にみじん切りにしたにんにくを先に炒めてください。パンチの利いた風味が楽しめます。