2011年のゴールデンウィークに公開された映画「阪急電車」は僕にとって思い出深い作品です。

同作は阪急今津線、西宮北口?宝塚間を舞台にした物語。
この路線を走る電車は各駅停車のみなのですがその電車が停まる8つの駅をモチーフに複数のエピソードが少しずつ少しずつ交錯し重なり合って物語が大きく膨らんでいくという構造になっています。
当時僕はその8つの駅のひとつである逆瀬川駅(宝塚から数えて3番目の駅)の近くに住んでいて大阪の事務所に通勤していたのでスクリーンに大写しになる街の光景がどれもこれも卑近で見慣れ過ぎた景色だったのです。
しかもその前に住んでいたマンションの最寄り駅は仁川駅(宝塚駅から数えて5番目の駅)、その前に住んでいたアパートの最寄り駅は甲東園(宝塚駅から数えて6番目の駅)と長らくその沿線を生活圏にしてきたので物語が進んでストーリーの軸になる駅が移り変わってもずっと見知った街並みが続く稀有な映画でした。

ちなみに原作者の有川浩は当時、小林(おばやし)駅(宝塚駅から数えて4番目の駅)の近くに住んでいたそうです。
物語のテーマはどこにでもいそうな人の誰もが遭遇しそうな悩み──
そんな屈託を抱えた人がたまたま乗った阪急電車で乗り合わせた見知らぬ他人(=他のエピソードの主人公)に助けられて希望の光が灯るといったもの。

そんな都合よく事態が好転したりしないだろと思いながら「でもそうだったら良いな」と思わせるそんなおとぎ話めいたストーリー──
それにリアリティを与えてくれているのが現実に存在する地方の私鉄路線の街並みでした。
この物語は誰もが抱くファンタジーかもしれないけれどこの街は現実に存在するんだよという演出手法は新鮮だったなぁ。
映画を観終わった後、西宮北口駅からいつもの阪急電車に乗って意味もなく終点の宝塚駅まで行っちゃいましたっけ。

見飽きたはずの景色が巨大な映画セットのように感じられてさっき観た映画の世界に迷い込んでしまったような不思議な感覚を覚えました。
そんな阪急電車、今津線の僕にとっての始まりの駅は甲東園駅です。
結婚をして嫁と暮らし始めたアパートはこの駅から徒歩5分ほどのところにありました。
徒歩5分──にも拘わらず途中に寄り道する行きつけの飲み屋を作っちゃうあたり僕らしい。

新婚の嫁をほったらかして何をやっているんだという誹りは甘んじて受けますがまあそれが酒飲みの業というやつなのです(と言っておこう)。
その店は僕にとって学校のような場所でした。
医者、企業の管理職、教授、准教授、関西学院大学の学生たち──職種も立場もバラバラな客たち。
一面識もなかった彼らと時にアカデミックな議論を交わし、時に馬鹿噺に花を咲かせ、時にはいま抱えている問題に光を当てるヒントをもらったりしました。

もしこの店に僕が立ち寄っていなかったらその後の僕の人生は大きく変わっていたと断言できます。
映画「阪急電車」のサブタイトルは《片道15分の奇跡》。
その店でたまたま居合わせた人たちとともに僕が過ごした時間をそのタイトルになぞらえるとすれば──
《寄り道2時間の奇跡》といったところでしょうか。

その店は経営が思わしくなくなって随分昔に閉店してしまいましたがもしも今でも営業していたとしたらたぶん僕は時々顔を出していると思います。
その店の名物料理にトマトやナスをバターで焼いてチーズを載せた洋風の皿がありました。
今日の料理は「なすとトマトのガーリックマリネ」。

こんな料理を作っているとついあの店とご主人と客たちのにぎやかな会話がふっと脳裏に蘇ってきます。
【材料】(1人分)
-調理時間:7分(粗熱を取って冷蔵庫で冷やす時間は含めていません)-
- 茄子:中サイズ1本
- トマト:1/2個
- にんにく:ひとかけ分
- オリーブオイル:12g(大匙1)
[調味料パート]
- オリーブオイル:6g(大匙1/2)
- 酢(できればワインビネガー):15g(大匙1)
- 塩:1g(小匙1/6)
- 粗挽きブラックペッパー:適宜
【作り方】
- 茄子はがくを取って5mm厚のいちょう切りにします。トマトは1.5cm角の賽の目切りにします。にんにくはみじん切りにします。ボウルに[調味料パート]を合わせてよく混ぜておきます。
- フライパンにオリーブオイルとにんにくを入れて中火にかけます。香りが立ってきたら茄子を加えて油を吸わせながら1分半炒めます。これにトマトを加えて蓋をし30秒蒸し焼きにします。
- 2.を[調味料パート]の入ったボウルに移してよく和えればできあがり。粗熱が取れたら冷蔵庫でキンキンに冷やして戴きましょう。
【一口メモ】
- 焼き野菜を使ったサラダといったところでしょうか。火を通すことで野菜の甘味が増していて香ばしく焼けたガーリックやブラックペッパーの刺激的な香りが織り成すハーモニーが楽しい1品です。
- 工程2.でトマトにも火を通すのがポイント。風味が濃くなって甘みもグンと増します。
- お好みで工程2.で使うオリーブオイルをバターに変えると風味が変わって楽しいですよ。感覚的にはピッツァのトッピングに近い風味に変身しましたみたいなイメージかな。

