近藤史恵さんの短編集に「パ・マル(=悪くない(仏))」という風変わりな名前のビストロを舞台にした日常ミステリーのシリーズがあります。
謎を解くのは店のシェフ。
客が持ち込む謎は料理にちなむものが多く僕のお気に入りの作品集です。
その中の一編に「錆びないスキレット」というのがありました。
店を訪れたご夫婦の奥様がご主人の愚痴をこぼします。
近頃、料理に凝り始めたのだけど形から入ろうとするから困っている。
めったに使わない食材や調理器具を買ってきては結局持て余してしまう。
融通を利かせて家にある食材や調理器具で代用してくれれば良いのにと。
それに対してご主人も反論します。
いや、最初はレシピに書いてある通りのものを揃えて書かれているとおりに作るべきだ。
アレンジは基本をきちんとさらってからするべきだろうと。
ま、どちらの言い分もわかりますし、どっちも正しい気がします。
話が噛み合わないのは奥様が料理のベテランでご主人が初心者だから。
僕も料理を始めたばかりの頃はこのご主人と似たようなことを考えていたので読みながら心の中で「わかるわかる」とか頷いていました。
結婚をして家を出てから暮れにはおせちを自作するようになりました。
今振り返っても最初の数年は要領も段取りも悪いし、無駄な食材を買い込むしでさんざんだったなぁ。
けどね、その経験はちゃんと活きていてだんだんに要領は良くなりましたし、わざわざ食材を買ってこなくても家にあるもので作れるようになりました。
ということで2021年も押し迫ったおせちの季節。
鮭が一切れ冷蔵庫に残っているのを発見。
これからおせちを大量に作るのにこれはどうしようかとしばし悩み。
結局、おせち料理の一皿に加えることにしたのです。
【材料】(2人分)
-調理時間:12分-
- 鮭:1切れ
- 塩、ブラックペッパー:少々
- 薄力粉:適宜
- 揚げ油:52g(大匙4)
- 大根:2cmの輪切り
- 人参:1/4本
[漬けダレパート]
- 酢:25g(25ml)
- だし汁:15g(大匙1)
- 砂糖:6g(小匙2)
- 鷹の爪:半本
[なますパート]
- 白味噌:18g(大匙1)
- 酢:15g(大匙1)
- 味醂:9g(大匙1/2)
- 砂糖:3g(小匙1)
【作り方】
- 揚げ油をフライパンに入れ170度に熱します。待っている間に鮭は大きな骨を取り一口大に切ります。軽く、塩、ブラックペッパーを振って薄く薄力粉をまぶします。油が温まったら鮭を3分揚げ焼きにします(途中でひっくり返します)。
- 1.をやっている間に[漬けダレパート]を器に入れて電子レンジの500ワットで1分チンします。鮭が揚がったら油を切って熱いうちに[漬けダレパート]に漬け込みます。
- 大根、人参を千切りにして[なますパート]とよく和えます。
- 3.に2.を加えてざっくり混ぜればできあがり。
【一口メモ】
- なますだけだとちょっと野暮ったい風味の昔ながらのおせちって感じですが酸味の効いた南蛮漬けが加わることで目先が変わって楽しいです。
- 鮭以外にさわらなど皮の厚めの魚ならなんでもあり。メインはなますなので量は一切れもあれば十分です。
- 手持ちがあれば柚子を少し絞ってください。全体の風味が爽やかになります。