2013年2月、Google社から「GoogleGlass」と呼ばれる眼鏡型デバイスが発売されました。
もちろん、ただの眼鏡ではなく、スマホに代わる携帯デバイスとして、写真や動画を撮影できたり、ネットを通じてさまざまな情報を空中に表示させたりする機能が備わっていました。
しかもハンズフリー。
音声入力によって操作できるため、スマホとは違って両手が空く──というのが最大の魅力……
だったはずなのですが、結果的に2015年1月には一般消費者向け販売が中止。
大失敗に終わります。
何が良くなかったのか、あるいはどうすれば売れたのかについて、さまざまな人が考察していますが、僕的には岡田斗司夫さん(通称オタキング。王立宇宙軍オネアミスの翼のプロデューサーであり、YouTuberとしても活動中)の語っていた説がいちばん説得力があって共感できました。
曰く:「新しいデバイスの使い道を模索するなら、いちばんくだらなくてエロいアイデアが一番当たる」
GoogleGlassをかけると、道行く女性の服が透けて見える──そんな機能を実装していれば爆売れしたはずと、氏は力説していました(笑)。
倫理的にどうこうという話は脇に置くとしても、この説は歴史に裏打ちされた説得力があります。
ゲーム機にしろ、ビデオデッキやDVDデッキにしろ、普及の原動力となったのは間違いなくアダルトコンテンツの存在。
世の中の人々(主に男性)は、それに抗うことなどできないのです。
人間の生存に関わる重要な3つの欲求は、いわゆる三大欲求と呼ばれます。
一般的には「食欲・性欲・睡眠欲」。
これらは本能に根ざしたものなので、逆手に取れば容易にバズるコンテンツが作れるわけです。
もっとも、睡眠欲に訴求しても対象者は寝てしまうので、あまり活用されません。
確かに「1ページ読むと眠くなる小説」はありますが、それが爆売れしたという話はあまり聞きません。
そのため、主に活用されるのは食欲か性欲。
アダルトコンテンツは性欲に訴える分かりやすい例ですが、他にも:YouTubeで「女性ゲストが出演した回だけ再生回数が跳ね上がった」ミリタリー系映画に屈強でむさくるしいおじさんではなく不自然に美人女優が重要ポジションで起用されている──など、「狙ってるなぁ」と思わせる事例は枚挙にいとまがありません。
他方、食欲に関しては効果がさらに絶大です。
古くは『食いしん坊!万歳』から、最近では『孤独のグルメ』まで──ただ「おじさんが料理を食べているだけ」の番組が多くの人を惹きつけているのを見るにつけ、その影響力は明らかです。
そのため、料理が主題でない映画やドラマ、アニメでも、随所に“美味しそうな食事シーン”が挿入されているのは、間違いなく観客の本能的欲求を刺激しているからだと思います。
過日、主人公がひき逃げされるところから始まるミステリー小説を読みました。
主人公は病院のベッドで、自分をはねた犯人を推理するという構成だったのですが……
なぜかやたらと病院食を食べるシーンが丁寧に描写されるのです。
「これは食欲を刺激して、読者を飽きさせない作戦だな」と、すぐに気づきました。
にもかかわらず……
その中の一品──**「鱈のみぞれ煮」**がどうにも美味しそうで、つい作ってしまいました。
本能には勝てやしない。
改めて、僕も「人間という生き物」なんだなと再認識した次第です。
【材料】(1人分)
-調理時間:16分-
- 鱈(切り身):1切れ
- 大根:150g
- 刻み葱:適宜
- 塩、ブラックペッパー:少々
- 片栗粉:9g(大さじ1)
- サラダ油:6g(大さじ1/2)
- 出し汁(鰹出汁):140ml
[調味料パート]
- 濃口醤油:9g(大さじ1/2)
- 酒:7.5g(大さじ1/2)
- 味醂:18g(大さじ1)
- 片栗粉:4.5g(大さじ1/2)
【作り方】
- 大根はすりおろして水けを切ります。鱈に塩、ブラックペッパーをまぶします。更に片栗粉をまんべんなくまぶします。[調味料パート]を合わせてよく混ぜておきます。
- フライパンにサラダ油を入れて中火にかけます。これに鱈を入れて1分半焼きます。ひっくり返して更に1分半焼きます。
- 2.のフライパンに出し汁と大根おろしを加えてひと煮立ちさせます。[調味料パート]を再度よく混ぜてこれに加えさっと混ぜます。 ※[調味料パート]の片栗粉は沈殿しやすいので、直前によく混ぜてから加えましょう。
- 3.を弱火で5分煮ます。これを器に盛って刻み葱を散らせばできあがり。
【一口メモ】
- はんなりと優しい味のお惣菜です。濃い味の料理が続いた日や、外食続きの翌日などに特におすすめです。
- 元ネタは、最近読んだ小説に出てきた病院食。鱈だけでなく大根を加えることで、カロリーを抑えつつ栄養も確保する工夫がされているなと感心しました。
- [調味料パート]の濃口醤油をポン酢醤油に置き換えるアレンジもおすすめ。仕上げに七味唐辛子や粉山椒を振ると、風味に変化がついて楽しいですよ。