『世界からこれがなくなったら困ると思うもの』──なんていうのはネット大喜利のド定番な気がします。
ただ、このお題はちょっと不十分でこれだと、空気、水、病院など「なくなったら、いきなり生死にかかわる」モノが上位を占めてしまいそう。

少しお題のハードルを緩めましょう。
『それがなくなっても死にはしないけど、世界からこれがなくなったら困ると思うもの』
というのでどうでしょうか。
これだと、スマホ、コンビニ、友達なんかが挙がってきそうですね。
ド・ストレートに「お金!」なんていう人もいるかもしれません。

いずれにせよ、こういうのは妄想の中で遊んでいるから良いのです。
現実に起きてしまったら……大事件になってしまいます。
ところが2024年の秋にホントにその大事件が起きちゃったんですよね。
町じゅうの小売店から米が消えた──まだまだ、記憶に新しいできごと。
日本中の家庭の夕ご飯を直撃する大事件でした。

政策の是非や陰謀論、犯人探しなどで毎日SNSは賑やかでしたが、僕はわりと冷めていて「米がなければオートミールを食べれば良いのです」なんてマリーアントワネットみたいなことを考えながら、日々、オートミール料理を試作していましたっけ。
そして、不謹慎ですけどなんだか笑い出したい気分になっておりました。

「(それは)当たり前じゃないからな」──加藤浩次さんはかつて、そんな名言を言い放ったそうですが、なんて真理を突いた言葉だったでしょう。
お米が切れたら近所のスーパーまで自転車を飛ばして買って来れば良い。
それが当たり前と思っていたことがたった数日を境に見事に瓦解したんですから。
もう笑うしかないじゃないですか。

そして、妄想をたくましくして「米で起きたことは他のことでも起きるのでは?」なんて考えてしまいましたね。
「次は牛乳やバターかもしれない。お肉がお店から消えたらどんな騒ぎになるかしら? あるいは調味料──スーパーから醤油が消えてしまったら……」
って、悪趣味な想像をするなぁ(笑)

はなから自炊をしない人にとってはどうということはないでしょうけど、食材と同等かそれ以上に調味料がどこに行っても売っていないというのは自炊界隈の人にとっては一大事件です。
もしも、醤油が町じゅうから消えたら和食はほとんど作れなくなってしまいます。
もちろん、家庭だけでなく遠からずお店でも醤油が枯渇してどこに行っても和食が食べられなくなるでしょう。
海外に長期赴任した人は日本食が恋しくなる──なんて話はよく聞きますが、まさか日本に住んでいるのに、日本食が恋しくなる日が来るなんて……、あ、妄想が止まらなくなっちゃった。

けど、現実に起きないとは誰にも言いきれないんじゃないかな。
2024年の米騒動を振り返ってそう思ってしまいます。
アローシュ・デ・ポルヴォは僕ら日本人には耳馴染みのない料理です。
けれど、実際に完成品の皿を見たら異口同音にこう言うんじゃないでしょうか。
「これってタコ飯じゃん」
そう、アローシュ・デ・ポルヴォはポルトガルのタコを使ったリゾットです。

ただ、日本人なら迷わず味付けに醤油を使うところでしょうが、醤油の文化がそもそもないポルトガルの人たちは迷わず塩を使っているところ。
いつかお店から醤油が消えてしまう日に備えて──醤油がなくても美味しい料理のレパートリーを増やしておくのも意義があることかもしれませんね。
【材料】(2人分)
-調理時間:40分-
- 米:170g(カップ1)
- ゆでだこ(特に足の部分がおすすめ):100g
- 玉ねぎ:1/4個
- にんにく:ひとかけ
- オリーブオイル(炒め用):24g(大さじ2)
- オリーブオイル(仕上げ用):12g(大さじ2)
- カットトマト缶:200g(1/2缶)
- 白ワイン:15g(大さじ1)
- 干し貝柱スープの素(顆粒):小さじ1 なければ同量の鶏がらスープの素
- 水(煮込み用):400g(カップ2)
- 水(仕上げ用):200g(カップ1)
- 塩:3g(小さじ1/2)
- ブラックペッパー:少々
- イタリアンパセリ(生):適宜
【作り方】
- たこは食べやすい大きさに切ります。玉ねぎ、にんにく、イタリアンパセリはみじん切りにします。
- 鍋にオリーブオイル(炒め用)と玉ねぎ、にんにくを入れて弱火にかけ、香りが立つまで炒めます。これに米を洗わずに加えて中火で1分炒めます。 ※洋食のピラフ、リゾットでは原則として米は洗わずに炒めます。
- 2.にたこを加えて白ワインを振り入れ1分炒めます。さらにトマトと干し貝柱スープの素を加えてよく混ぜながら1分煮込みます。
- 3.に水(煮込み用)を加えてひと煮立ちさせます。蓋をして中火で10分煮込みます。
- 4.に水(仕上げ用)を加えて再度ひと煮立ちさせ、蓋をして弱火で5分煮込みます。火を止めて10分そのまま置き、蒸らします。
- 5.の味を見ながら塩、ブラックペッパーで味を調えます。器に盛りイタリアンパセリを散らせばできあがり。 ※材料表の「塩:3g(小さじ1/2)」は目安です。実際には味を見ながら心持ち薄いかなと思えるあたりで止めましょう。器に盛っていただく頃には水分が蒸発して、丁度良い塩梅になっていると思います。あと、塩を加えたらよく味が偏らないようにかき混ぜてから味見しましょう。
【一口メモ】
- ポルトガルのタコを使ったリゾットです。ポルトガルは海洋王国で魚介料理が豊富ですが、タコもごく普通に食べられています。ダシが利いていてなかなか美味。
- この材料を和食で作ればきっと醤油を基軸にした炊き込みご飯になりそう。けど、こういった洋風の味付けも覚えておけば、レパートリーが増えて献立のマンネリ化が防げるのでおすすめですよ。
- オリーブオイルをかなりたっぷり使ったレシピですのでカロリーを控えたい方は加減してください。特に仕上げのオリーブオイルは風味付けが主目的ですので外すのもありだと思います。

