料理の中には風物詩とも言うべき季節限定のものがあります。
お正月に食べるお節料理やひな祭りの菱餅みたいに期間が狭すぎるものはさておいても、これが出回るとああ春が来たなとか冬だなぁと感じる料理はあるものです。
たとえば江戸時代、甘酒といえば夏の風物詩でした。
ひんやりと冷えた甘酒を振り売りが運んでくると夏だねぇという気分になったとか。
あま酒の地獄も近し箱根山
蕪村の句にこんなのがありますが、夏に箱根山に足を伸ばしたらしい。
俳句の世界では甘酒は夏の季語。
一名、「飲む点滴」とも言われる甘酒は夏バテしがちな江戸庶民にとって貴重なサプリメントだったようです。
逆に冬の季語になっている料理に「納豆汁」があります。
朝霜や室の揚屋の納豆汁
同じく蕪村の句にこんなのがありますが朝霜の寒々とした語感と熱々の納豆汁の対比が面白い。
冬になると叩き納豆(叩いた納豆、青菜、豆腐のセット。味噌を溶いただし汁をかけると納豆汁が作れるインスタント味噌汁の素みたいなもの)を売り歩く納豆売の姿が見かけられたとか。
けれど、季節の風物詩は時代とともに変わるらしい。
というかしばしば人為的に変えられることがあるらしい。
旬が冬の鰻を夏の土用の日に食べるように仕向けたのは平賀源内だというのは有名な話で、夏場に鰻が売れなくて困っていた鰻屋の相談に乗った末のことです。
同じように納豆汁も江戸の末の頃には平気で夏場にも売り歩かれるようになったとか。
クリスマスやバレンタイン、恵方巻と同じく商魂たくましい限りですね。
【材料】(1人分)
-調理時間:5分-
- 納豆:1パック
- 薄揚げ:1/4丁
- 刻みネギ:少々
- だし汁:250g(250ml)
- 味噌:25g
【作り方】
- 納豆はまな板に広げて包丁で細かく叩きます。これをお椀に移して添付のタレと辛子を加えてよく練ります。薄揚げは3mmの小口切りにします。
- 1.をやっている間に小鍋にだし汁、味噌、薄揚げを合わせて中火にかけ煮立つ寸前で止めてよく溶きます。
- 沸騰させてしまうと味噌の風味を損なうので煮立つ寸前で火を停めるのがコツです。
- 1.のお椀に2.を注いで刻みネギを散らせばできあがり。
【一口メモ】
- 要は納豆入りのお味噌汁です。味噌汁に納豆の独特の風味が加わって納豆好きにはたまらない一杯。冬の朝に頂くと体の芯がぽかぽか温まって1日がんばろうという元気がもらえますよ。
- 納豆はそのままでも良いのですがスタンダートな食べ方は細かく叩いてから味噌汁で伸ばすスタイル。まな板が汚れるのが気になる方は直接お椀に入れて大ぶりのスプーンなどで押しつぶすのもありです。
- 段取り良く作るコツは納豆を叩く作業と味噌汁を温める作業を並行で行うこと。どちらかをやってからもう一方をやると時間が倍かかってしまいます。
- 具材は他にも豆腐、青菜、きのこ類などがオススメです。