2人の人間が入れ替わって大きく異なる環境の中で生活をする──というプロットはよほど魅力的なのか古今東西の物語で頻繁に扱われます。
外国の有名どころではマーク・トゥエイン作「王子と乞食」かな。
顔立ちがそっくりな王子と乞食が入れ替わるお話で王族の目線から見た乞食たちの暮らし、乞食の目線で見た王族の生活の空虚さが際立つ佳作です。
けどこれはまだお互いの衣装を取り換えっこしただけという常識の範疇にある物語。
このジャンルの真骨頂はやはり「体」が入れ替わってしまったというぶっ飛んだプロットにあるんじゃないでしょうか。
ことに入れ替わる2人が若い男女であれば話は俄然盛り上がります。
思春期の男女の体が入れ替わるという物語はいまやステロタイプ(典型)と呼んでも過言ではない1ジャンルを築いていますがその歴史は案外古いのです。
僕が知る限りその走りは昭和7年、サトウハチロー作「あべこべ物語」だと思います。
セクシャルな設定、表現がセンシティブだった時代背景を受けてか兄と妹が入れ替わるという設定でした。
時代が下って1982年。
このジャンルの金字塔ともいえる名作「転校生」(大林信彦監督)が登場。
こちらは血の繋がらない中学生男女の入れ替わり。
思春期の入り口に立ったふたりの初々しさが印象的でした。
そして記憶に新しいところでは新海誠監督の「君の名は。」を挙げねばなりますまい。
夢──を通して入れ替わる男女は高校生。
お互いの体の変化に戸惑うだけでなくやがて恋愛感情を抱く過程まで見事に描き切りました。
ただ同作があれだけのメガヒットを飛ばした理由はプロットの妙。
手あかの付いた男女の入れ替わりものとミスリードしておいて中盤以降に姿を現す怒涛のSF的展開にあったと思います。
で、ふと思ったのです。
美味しいラーメンになる日を夢見ていた中華麺が投入されたのが蕎麦つゆだったとか。
美味しい日本蕎麦になるんだろうと思っていた蕎麦が浸されたのが思いっきり中華系のスープだったら……
麺たちの困惑や如何に──なんて。
もしも麺たちが喋れることができるのならばやはりこんなことを叫んじゃうのでしょうか。
「これってもしかして」
「俺たち」
「私たち」
「入れ替わってる~~~~?」
なんてやくたいもないことを考えながらランチを作っておりました。
我ながらホンマしょうもないことを考えるやっちゃな(笑)
【材料】(1人分)
-調理時間:8分-
- 和蕎麦(乾麺):1束
- 好みのトッピング:叉焼、ハム、卵、焼き海苔、若芽、天かす、紅ショウガ、葱など
[タレパート]
- 濃口醤油:9g(大匙1)
- オイスターソース:9g(大匙1)
- 味醂:9g(大匙1)
- 豆板醤:6g(小匙1)
- ごま油:4g(小匙1)
- おろし生姜:ひとかけ分
- おろしにんにく:ひとかけ分
【作り方】
- 蕎麦を茹でる湯(分量外)を沸かして蕎麦を規定時間茹でます。
- 1.をやっている間に丼に[タレパート]を合わせてよく混ぜます。
- 蕎麦が茹で上がったらざるに揚げて湯を切り2.の丼に加えて[タレパート]をよく和えます。トッピングを載せればできあがり。
【一口メモ】
- 油そばは汁なしラーメンの一種でごま油などを利かせた醤油ダレを丼の底に張って中華麺を絡める料理です。その中華麺を和蕎麦に入れ替えたのがこの料理。呼び名は区別が付くように「油蕎麦」と漢字表記にしてみました。
- 蕎麦好きの人からは「冒涜だ」とお叱りを受けそうですがそれでもはっきり言わせてもらいます。これ、けっこう旨いっすよ。
- このレシピでは豆板醤を利かせてピリ辛にしてみました。辛いのが苦手な方は豆板醤を抜いてください。
- トッピングは自由自在。今回は豚肉を焼き豚的に焼いたやつと卵黄、若芽を載せてみました。