とある噺家がこんなことを言ったとか。
「古典てのは古いってぇことじゃねぇ。古びねぇってことだ」
明治の頃に生まれた噺が未だに多くの人に愛されているのはその古びない鮮烈さに秘密があるのかもしれません。
♪風はのれんをばたばたなかせてラジオは知ったかぶりの大相撲中継
中島みゆきの「蕎麦屋」の一節です。
リリースは1980年。
僕が高校に入学した年の楽曲。
にも関わらず40年以上経った今でも古びることなく僕の心を支えてくれる名曲です。
この歌で描かれる蕎麦屋はバリバリの昭和の街角に立つ古びた佇まい。
ラジオから大相撲中継が流れる夕まぐれ2人の男が蕎麦をすする光景は哀切を感じます。
壁に貼られた店の品書きはせいぜい、かけ、きつね、たぬき、月見、ざるといったところかな。
♪お前は丼に顔つっこんで
という一節がありますから男たちがすすっている蕎麦はざるや盛りではなくかけの類の温かい蕎麦なのでしょう──音楽は古びていないけれど、その中で描かれる蕎麦屋はすっかり様変わりしました。
蕎麦屋がおじさん達の聖地だったのも今は昔。
小洒落た佇まいはうら若い女子が1人で暖簾をくぐるのも躊躇わせません。
蕎麦の上のトッピングも昭和の頃には考えられなかったものもあり、中にはサラダ感覚で食べる蕎麦まであるらしい。
食べるスタイルもかけ、ざるの二択だったのがその折衷ともいうべき温かいつゆに浸けて食べるつけ蕎麦なんてのも当たり前のように店の品書きに並んでいます。
僕はわりとミーハーなので古き良き時代を思い出して嘆くより流行り物に乗っかってしまう派。
懐かしい中島みゆきの楽曲を鼻歌交じりに歌いながらこんな蕎麦を作ってみました。
【材料】(1人分)
-調理時間:30分-
- 蕎麦(乾麺):1束
- 豚こま:50g
- しめじ:1/4株
- ごま油:8g(小匙2)
[つゆパート]
- だし汁(昆布出汁):200g(カップ1)
- 濃口醤油:27g(大匙1.5)
- 酒:22.5g(大匙1.5)
- 味醂:18g(大匙1)
- 豆板醤:3g(小匙1/2)
【作り方】
- 蕎麦を規定時間茹でて冷水で〆ます。
- 1.をやっている間に豚肉は食べ易い大きさに切ります。しめじは小房に分けます。
- 小鍋にごま油と豚肉、しめじを入れて中火にかけ肉にしっかりめの焼き色が付くまで炒めます。これに[つゆパート]を加えてひと煮立ちさせ蓋をせずに中火で3分煮込みます。
- 蕎麦をざるに盛り、3.を椀か蕎麦猪口に注げばできあがり。
【一口メモ】
- ざる蕎麦のキリッと冷えた喉越しとはまた違った味わい。ラーメン感覚でもりもり食べられます。
- [つゆパート]の定番は豚肉に白ネギですがしめじなどの茸も美味しいですよ。あとは旬の野菜を取り合わせてみてください。
- お好みで[つゆパート]にいりごまや大根おろしを入れるのもありです。辛いのが苦手な方は豆板醤を抜いてください。